外伝2 ニクス5
「うく・・・・・。」 うめくルキャナ。 「敵の女兵士に助けてもらうようではまだまだですね、ルーン大尉。 鬼の爪の助言は正しかったようだ・・・・・。」 「ジョン、貴様・・・・・。」 「私はこのチャンスを待っていたんですよ。あなたのような優秀な科学者が、ガイロ スにいては困るのです。我々ネオゼネバスとしては・・・・・!!」 「な゛・・・・・なんだと!?まさか真の敵とは・・・・・。」 その言葉に驚愕するルーン。 「察しの通りですよ。ですがあなたのような方をみすみす殺すもの惜しい、上司と しても最高でしたからね。そこで・・・・・我々のもとにきませんか?」 「!!」 突然の誘いに困惑するルーン。 「どうです?いやならばこの場でこいつと共にこの場で死んでもらうだけですが ね。」 そういってルキャナを絞める力を強めるジョン。 「くっ・・・・・。」 ルーンが睨みつける先に一人の共和国兵士が目に入る。 何か身振り手振りで訴えかけていた。 その事を察したルーンは、再びジョンに目線をあわす。 そして偶然隠れていた銃を持った手をゆっくりと分からない様に懐へと運ぶ。 「さぁ、どうしますか?」 「・・・・・わたしはガイロス帝国に忠誠を誓った身だ、貴様の誘い荷など受ける いわれなど・・・・・ない!!」 そういうと同時に足元に向けて発砲。 「き、きさまぁ・・・・・!!」 ひるんだ後、叫びを上げながら銃をルーンに向けて発砲しようとするジョン。 「うあぁぁぁぁぁぁぁ!!!」 おっかなびっくりに叫びを上げながら飛び掛かるジェン。 手には大き目のスパナを持っている。 飛び掛かるジェンに気づいたジョンは、振り下ろされたスパナを拳銃で受け止める。 だが、受けとめきれずに銃を落とすとそのままバランスを崩して外に放り出されそ うになる。 「隊長!!」 「くそっ!!」 悪態を吐いてルキャナを離して動力パイプにつかまる。 落下し仕掛けるルキャナの腕をルーンが身を乗り出して掴まえる。 あわててジェンがルーンの助けにはいる。 それを見てジョンはパイプから手を放して地面に着地すると、その場から逃走する。 何とかルキャナを引き上げた時にはジョンの姿は見えなかった。 「あ、ありがとう・・・・・。」 「さっきの手当てのお返しだ、気にするな。」 ピーーーー!! デッド・ボーターのコックピット内に響き渡る警告音。 何事かと画面を見ると、接近するアンノン機が映し出されている。 機影は恐竜型ゾイドのようだ。 見た事はないが、うわさで聞いた幻の機体なのかもしれないと思えた。 「くっ、君はその女性は機体からおろして身を隠してろ・・・・・。」 「えっ?で、でも・・・・・。」 「いいから従え、振り落とされたいのか!!」 物凄い剣幕で命令するルーン。 「はっはひ!!」 その様子に驚いて慌ててルキャナを抱えて降りる。 降りたのを確認すると、機体チェックを終えて起動させるルーン。 あれだけの戦闘でまだデッド・ボーターは動く。 「このG−カノンよりもこの強靭な機体に興味がそそられるな。」 そういって笑みを見せると向かってくる機体へと目をやる。 背中に抱えられた大きなブースターパックとクロー。 本体事態はジェノより一回り小さい様に思えた。 「あれが極秘で開発されていたといううわさのやつか・・・・・。」 ゾイドの開発チームの主任をしているルーンが、ヴァルハラで一度だけ聞いたプロ イツェンを主体に極秘裏に開発されているゾイドがあるといううわさ。 この機体がそうなのだろうと見た瞬間に感じる。 『さっきの借りを返させていただく!!』 ガイロス帝国で使われている通信周波数から聞こえるジョンの声。 「・・・・・いつでも相手になってやるよ。」 そういって傷の痛みをこらえて操縦幹を握り締める。 「誇り高きガイロスの戦士として、命を賭けて倒す・・・・・!!」 ルーンの決意を嘲笑うかのように近づくバーサークフューラー。 一方、デッド・ボーターは、ダメージが回復していないために動きが鈍い。 「ガイロスの象徴とも言えるデッド・ボーターを、我々の象徴となるべきバーサー クフューラーで倒す・・・・・実にすばらしい。」 そういって自らの言葉に酔う。 振り上げられたバスタークローがデッド・ボーターに振り下ろされると、何とかよけ るデッド。 「まだそんな動きが出来るとはしぶとい・・・・!!」 2基のバスタークローが交互にデッドを襲い続ける。 「こんな状態でなければ、こんな物・・・・!!」 愛機の状態を恨めしく思いながら、現在の状況でやれる事を必死に考える。 「・・・・あの人、やばいじゃないの・・・・。」 気がついたルキャナが2機の戦闘を見てつぶやく。 「隊長、大丈夫ですか!?」 「それよりあの黒いゾイドを助けてやって・・・・!!あの人とあのゾイドの状態 だとそんなに持たないわ。」 「何いってるんですか、あれは敵ですよ!?」 「いいから、ガンスナで助けなさい!!命令よ!!」 「は、はい!!」 怒鳴るように命令されて訳も分からず自機に向かう。 左のバスタークローを何とかかわしたルーンは、一瞬の隙を突いて体当たりをかける。 「くっ!!頑丈だけが取り柄というのも厄介な物だ・・・・!!」 愚痴るジョン。 今まで上や横からの攻撃していたのを地面から突き上げる攻撃も加える。 突然のバスタークローのアッパーに、よけきる事が出来ず、左胸部の装甲をえぐられる。 攻撃を受けた勢いで後ずさるデッド・ボーター。 体勢の崩れている隙を狙って再びバスタークローが襲い掛かり、左足をそう交互と 突き刺す。 バランスを崩して倒れ込むデッド・ボーター。 「とどめだ!!」 バスタークローがコックピットの狙いを定めて振り上げられた。 「もっと・・・・もっと近づいてこい・・・・。」 そう言いつつ、撃てないと分かっている背中のG-カノンの照準をフューラーに合せる。 残りのチャージエネルギーは少ないが、フューラーに損害を与えるだけの破壊力は 残っていた。 コックピットを貫かれるのが先か、相手のゾイドコアを撃ち抜くのが先か。 運命を天に預ける。 『わぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!』 突然の叫びにその場にいたもの全てが何事かとあたりを見渡す。 次の瞬間、ガンスナイパーがバーサークフューラーに体当たりをかけていた。 突然の事に機体を横転させるジョン。 「が、ガンスナだと!?」 「ガンスナあたるなよ!!」 そう叫びつつ、機体を起こして横転しているフューラーに向けてG-カノンを発射する。 「ば、ばかなっ・・・・!!」 起き上がろうとしていたフューラーの頭部をコックピット後と撃ち抜く。 「共和国に借りが出来たな・・・・。」 そういうと意識を失うルーン。 ルーンの気絶に合せるようにデッド・ボーターもその場に倒れ伏せた。 彼が目を覚ましたのはそれから数週間後だった。 「目が覚めたようですね。」 傍らで聞こえる女性の声。 なんとなく聞き覚えがある気がした。 「き、君は・・・・。」 「何週間も寝ている間にお忘れになられましたか?」 やさしく微笑むような笑顔を見せる女性。 不鮮明な記憶が、霧が晴れるように鮮明になり、あの時の戦闘であった女性だと分かった。 「いや・・・・。」 あの時のお礼やなぜ女性がここにいるのか等、言いたい事や聞きたい事はたくさん あるが、それ以上言葉が浮かばなかった。 ただ、その笑顔に心を癒される自分がいた。
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