プロローグ
ZAC2001年冬、西エウロペ大陸で起きた戦争は終結した。 その後設立されたヘリック共和国軍西エウロペ政府は、コクン准将のもと次々に 法令などを定めた。 その中には、市民の軍政府軍への徴兵や今後抵抗の恐れのある財界人などの財産 没収などが含まれている。 これらは、旧ディーベルト連邦の一部の政治家や、消息を絶っている連邦軍残党に 対する備えである事を強調しているが、西エウロペ大陸の各都市に不信感を抱かせ る結果となった。 そんな中、コクン准将は共和国軍北エウロペ政府責高官の一人、フィリップ・ベニオス に呼び出されるのだった。 「なにか不服でも有りそうですな。ベニオス殿」 あからさまに不信感を募らせるベニオスに向けて言う。 「こちらはおおありですよ、コクン准将」 「何故あなたは大統領や私の命令を無視した政策を行うのですか?」 「この大陸のように不穏分子の少ない所にいるからそういう事が言えるのだよ。 私の統括する西エウロペは不穏分子が多すぎてね。」 「・・・・・それとあなたの部隊は、西エウロペ大陸での作戦からある程度の間 があったにもかかわらず、今回のニクス大陸進行作戦の参加も拒否なされた。そ のわけも聞かせてもらい・・・・・」 ピーピー 「なんだ?今大事な話しをしているところだぞ・・・・・何!?それで・・・・ なっ!?全滅とはどう事だ!?・・・・分かったすぐにそっちに行く」 「!」 その言葉にコクンは目の色を変える。 回線を切るとコクンを睨むように見つめるベニオス。 「ニクス出何かあったようですな・・・・」 分かっているのにわざとそうたずねるコクン。 「後であなた方の部隊に緊急徴集の特命が出ます。今回は必ず出してもらいます よ・・・・・!!」 そう言うと足早にその場を後にする。 「ふん!若造がえらそうに」 そう言うとコクンもその場を後にして帰途についた。 後で知った事だが、あの時の連絡はプロイツェンの反乱、それに伴うガイロス 帝国との休戦協定、そして主力部隊の壊滅と重大な出来事が矢継ぎ早に報告されたらしい。 数日後、コクンがシビーリに到着した頃にあわせてニクシー基地から部隊の中央 大陸派遣の督促状が届く。 しかし、コクンはそれを跳ね除けて部隊を動かすことはなかった。 治安維持の為。それがコクンからの解答だった。 北エウロペ軍政府はこれを明確な命令違反ととるが、ガイロス帝国本国でほぼ全 滅した主力部隊の再集結や、本国のある中央大陸への救援部隊の編成などで忙殺 されてしまい、表立った処罰が出来なかった。 コクン准将は、それを逆手にとって西エウロペ大陸で生産したゾイドのさらなる 増産を図る。 この動きに北エウロペ大陸軍政府内部でも、コクンの目に余る行為が問題視され たが、表立って軍隊を出すほどの余裕もなく調査団を派遣することをする。 これらの行動は、西エウロペ大陸に住む人達にとって良い出来事の様に思えたが、 調査団はたいした調査もできずに引き返していった。 共和国の中央での弱腰に濠を煮やした軍政府の影響の少ない北部や東部海岸地域 の各都市国家が、ひそかに旧連邦軍と連絡をとって新たにエウロペ同盟を結成。 以後ゲリラ戦を続けていく事となる。 新たな火種ができ、西エウロペでの政局はますます混乱の度合いを深めていく。 「前方に反乱軍のゾイドが2機こっちに向かってきます」 双眼鏡をのぞきながら報告をする監視兵。 ここ数日の雨で地面は泥だらけになり、塹壕内の兵士は皆泥まみれだった。 「機種は?」 機種をたずねられて再び双眼鏡を覗き込む。 背中に大型ビームランチャをつみ、青色をしたレッドホーンが確認できる。 「機種・・・・・特徴からレッドホーン強化型と思われます」 「127mmAZM砲の用意!!」 部隊長の命令で大型の砲身が塹壕内から4基現れる。 「うて!!」 命令にあわせて一斉射される。 弾はレッドホーンの近くで次々に爆発する。 「次弾装填急げ!!通信兵、空軍はまだか!?」 「後5分はもたせてくれとの事です!!」 「聞いたか!?後5分後には味方があのデカ物を片付けてくれるそうだ。 なんとしてでも持ちこたえろ」 檄を飛ばす隊長。 次の瞬間レッドホーンのビームが、塹壕内に飛び込こんで兵士とともに辺り一帯 の土を削る。 砲台からも攻撃が始まるが、逆にビームを食らって煙を上げる。 「実弾とビームじゃあどう対峙してもこっちが不利に決まってるじゃないか・・・ ・!!」 砲手が狙いをレッドホーンに定めながら愚痴る。 そこに2機のガンスナイパーが現れてレッドホーンと対峙する。
「味方ゾイドが到着した、全員まき沿いを食う前に塹壕から撤収するぞ」 部隊長の命令が塹壕内にこだまする。 「ガンスナの野郎ちゃんと抑えてくれねえと俺達がおっちんじまうからな。 頼むぞぉ。あとこれで空軍が来れば文句ないんだがな・・・・・」 生き残った兵士が塹壕から退避しながら愚痴をこぼす。 バルカンやミサイルを駆使して撃破を試みる。 だが、何も無かったようにクラッシャーホーンの一撃が、1機のガンスナイパー を突き刺す。 「くそ、このレッドホーンは化け物か!?」 ガンスナイパーのパイロットが愚痴りながら攻撃を仕掛ける。 クラッシャーホーンを浴びながらもかろうじて生き残っていたガンスナも なんとか砲撃を行ない援護するが、、なかなか倒すことができない。 あたりに苛立ちが立ち込める中、そこにかん高い音が上空からなりはじめた。 「ようやくご登場かよ」 パイロットの言葉に合わせるように、3機のプテラスボマーが上空に現れる。 しばらく周辺を旋回すると、レッドホーンに攻撃を開始する。 それにあわせてガンスナイパーも支援に回る。 「よっしゃっ!!そのままやっちまえ!!」 退却中の兵士達はそれを見て歓声を上げる。 数発のミサイルが命中したレッドホーンは、動かなくなってその場に倒れこむ。 「レッドホーン1機にえらい被害だな・・・・・」 辺りの被害を見てガンスナイパーのパイロットはそうつぶやいた。 この戦いを境にして、西エウロペ各地に配備されている共和国軍基地が襲われる ようになった。 しかし、どれもが小規模な攻撃でたいした被害が出るほどではなかった。 逆に攻撃を仕掛けるゲリラ側にとって苦しい日々が続いた。 「レイゼント大佐が?分かったすぐ行く」 ニクシー基地の自室でくつろいでいたラーマは、急な呼び出しに苛立ちを憶えな がらも、呼び出した相手の名前を聞いて首をかしげながら部屋を出た。 レイゼント・スチュワート、特殊部隊幹部の一人でラーマのいる部隊の指揮をお もにしている。 「ラーマ大尉入ります」 レイゼントの執務室の扉をノックして中にはいる。 ドアを空け目の前にいるであろうレイゼントの顔を拝む前にラーマの目が丸くな る。 目の前にはさらに上の幹部クラスの将校が数人いたのだ。 「早く中に入りたまえ。」 一人の将校がラーマに座るように薦める。 (一体何ごとだ?中央大陸での1件か?) 心の中のどうようを隠せぬまま進められた席に座る。 「動揺が隠せない様だが・・・・・このメンバーでは仕方ないな」 そういうとレイゼントは一つの地図を出す。 「?」 出された地図は、西エウロペ大陸のものであった。 「現在、この大陸はある人物よって私利私欲の為の大陸となりつつある」 (コクンのことか・・・・・。) 内心そうつぶやく。 「先日、彼らは我々の再三の要求に対し、何も答えを出す事はなかった。これは立 派な反逆行為である。そこで軍を動かす事を決定したわけだが、現在中央大陸に ほとんどの部隊を派遣している為、そこまで余裕がない。そこでコクンらに抵抗 している旧ディーベルト連邦の連中を援助して、これを叩こうと思っている」 「そんな身勝手な話し、向こうがのると思いますか?」 「私なら絶対乗らないだろうな」 苦笑しながらいう。 「乗るだけの条件は出すのでしょう?」 「そのつもりだ。その辺は上の方で話がついているから気にする事はない」 「で、私に何をしろと?」 「今の我々は彼らの力になるだけの余力はない。だが示しとなるものが必要なの も事実だ。」 「ようは、私の部隊に援護しにいけと?それはかまいませんが、人数的につらい ですな。」 「その辺は用意している。新人を君の部隊に配属予定だ」 「我々特殊部隊に新人パイロットですか?いよいよ人で不足ですかい」 わざと笑っておどけて見せる。 「たしかにそう言われても言い返せないのが現状でな」 レイゼントの厳しい表情を見て、おどけていたラーマも真剣な顔つきに戻る。 「明後日、この新人を連れて西エウロペ大陸クレスフォルスターに向かってもら う。そこで、エウロペ同盟の部隊と会合予定だ」 そう言うと手元にあった命令書をラーマに手渡す。 「了解しました。」 命令書を受け取り敬礼すると、その足で部屋を出る。 「彼には中央大陸で活躍してもらいたかったが」 一人の将校がボソッと言う。 「今向こうの現状がわからない今、優秀な人材を無駄に消費するのは得策ではな いよ。」 「西エウロペも条件は同じだとおもうが」 「西エウロペはまだ地続きだ。安心できるよ」 そういうとにっと笑って見せるレイゼントだった。
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