ワルキューレ
現在、西エウロペ軍政府の実権はコクンとその友人であるアルバンが握っていた。 軍政府軍の大半は彼らの部隊で占められている。 が、ここ最近の本国に対して離反するような行動に、不安を抱いて北エウロペに 逃げ込む兵士が増えていた。 それらのもののほとんどは最近、部隊に配属された新規メンバーが多い。 そんな不安渦巻く西エウロペ大陸を、一機のシールドライガーが北へ向けて走る。 そしてあとをブレードライガーが追う。
「ブレードなんかに負けてられないね。」 そう強気な発言とは裏腹に内心では、いつ後ろから切りつけられるかと胆を冷や していた。 シールドライガーのパイロットであるラッド・アラードもコクンら上層部の考え に不安を抱いて北エウロペに逃げ込む一人であった。 『こちらドゥクード・エルアンドラ大尉、ラッド少尉、聞こえているなら返事を しろ!!今なら大目に見てやる。だから戻れ!!』 コクピット内に後方のブレードライガーのパイロットからの通信が入る。 「うわぁぁぁ・・・・・!」 ラッドはその声を聞いて青ざめると、慌てて背中のビーム方を起こしてブレード に向けて放つ。 突然自分に向けて乱射されるビームを無難に避けて行くドゥクード。 「新米の士官候補生が上官であるこの俺にさからおうってか・・・・・。」 そういうと両側に収納されていたブレードを展開する。 「!?このままだと確実にやられる・・・・・。」 何かを吹っ切るように顔をピシャッと叩くと、機体を反転させてブレードに向け て走り出す。 「ラッド、血迷ったか!?」 そう言いつつ、ブレードのエネルギーゲインを上げる。 「いちかばちかだ!!」 走りながらシールドを展開すると、そのまま一気に翔け抜ける。 ビシュッ!! シールドとブレードのエネルギーが弾けるおとが辺り一帯に木霊する。 同時に地面にたたきつけられる2機。 「向こうも捨て身だとこうなるか・・・・・。」 そう言いながら機体を起こすドゥクード。 「く・・・そぉ・・・・。」 衝撃で体中がしびれてまともに動けない。 「新米のわりにはいい腕だったんだが反逆罪として処罰させてもらう。」 ブレードのビーム砲の銃口が、シールドにねらいを定める。 ガサッ 草むらを書き分ける音とともに濃縁色のゾイドが姿をあらわす。 グォォォォォォォォォォォォン・・・・・ 大きくこだまする鳴き声を上げてブレードを牽制する。 「なに!?こ、こいつは・・・・・。」 ドゥクードは突然目の前に現れた機体に動揺する。 それを見逃すまいと一気に駆け寄る濃縁色のゾイド。 「こんな所にいるなんて聞いてねえぞ!!やつら軍政府領内にも秘密基地を持っ てるのか!?」 迫り来るゾイドに対抗するように、ブレードのエネルギーを高めて突撃する。 しかし必殺のブレードアタックがいとも簡単にかわされてしまう。 「本部、応答願います・・・・・こちらドゥクード。」 交戦をしながら通信を行う。 濃縁色のゾイドは、ピッタリとブレードに張りついて次の攻撃を仕掛けるチャン スをうかがっている。 「ちっ!!」 張りつく敵がうっとうしくて一気に加速して突き放す。 それを狙ったかのようにブレードに向けてビームが放たれ、背中のイオンブース ターが破壊される。
「くそぉ!!」 ブースターを破壊されて動きが鈍くなったブレードは、戦意を失って後ずさりする。 「もうちょっとふんばれよ・・・・・!!」 愛機にしったをしながら敵の攻撃をかわす。 「逃亡兵を追跡中、敵ゾイドと接触・・・・・うわぁぁぁぁぁ!!」 戦闘の片手間に行っていた通信に気を取られてせいか懐に入られて、巨大なバイ トファングがブレードの胴体を離さない。 ブレードをくわえたまま背中のビームがコクピットを狙う。 「や、やめろー!!」 ドゥクードの悲鳴とともにブレードライガーは息絶えた。 「なんであいつが・・・・・。」 そうつぶやくとそのまま気を失うラッド。 意識を失っていたラッドを日が差してきて彼の意識を無理やり呼び戻そうとしていた。 「う・・・・・。」 まぶしい光が目に飛び込んでくる。 意識がはっきりしだして辺りを見まわす。 (俺は死ななかったのか・・・・・。) ふと自分を見据える視線に気付く。 「起きられましたか?」 そこには一人の少女がしゃがんでこちらを見ていた。 ゆっくりと体を起こす。 良く見るとう出などに包帯がぐるぐる巻きにまかれている。 「あ、わたし救護の仕方とか全然知らないから適当に巻いちゃって・・・・・。」 そういうと照れ笑いする少女。 クォォォン 「なんだいまの!?」 唐突に聞こえる鳴き声に驚くラッド。 「あ、あれはルーイの鳴き声ですよ。」 「るーい?」 聞きなれない言葉に首をひねる。 「あの子の事ですよ。」 にこっと笑った後、そういって彼女の指す方向には一機のゾイドがいた。 「あれはディーベルトのツェルベルク・・・・・!!」 あまりの驚きに思わず声が出る。 「?あの子がどうかしましたか?」 あっけらかんとしたその言葉に何も言えなくなるラッド。 (あれは連邦の最新鋭機。何でこんな年端もいかない女の子が・・・・・。) よく見ると、彼女の着ている服はパイロットスーツのようだった。 腕には大きな槍と甲冑を着た少女が描かれている。 彼にとっては謎だらけだった。 ぴぴーぴぴー 甲高い音が辺りに響く。 「あわわ、通信機がなってる〜。また174番さんのこごとだぁ。」 (174番さん?) 彼女の不思議な言葉にまた首をひねる。 「・・・・・分かりました。すぐに戻りますねー。と言う事で戻らなきゃならな いみたいなので、この辺で失礼しますね。あなたのゾイドはルーイの後ろの茂み でお休みしてますから後で起こしてあげてくださいね。ルーイ。」 名前を呼ばれると寄り添う様に彼女のそばにやってくると、頭部をしたに下げて コクピットハッチを開く。 機体には彼女のスーツに縫い付けられた腕章と同じ紋章がペイントされていた。 そして彼女に言われ、ツェルベルクの後ろの茂みにシールドライガーが寝ているのを 発見する。 「じゃねー。」 そう言いながら手を振るとコクピット内に消える。 彼女を乗せたツェルベルクは、その場を去って行く。 「一体なんなんだいあいつ・・・・・。」 不思議な感覚にとらわれながら謎の少女が去った方向をしばらく見据えるラッド だった。 翌日、ライガーの自己修復を待ってその場を後にしたラッドは、一路北エウロペ 大陸へと向かっていた。 「本当だったら宿舎でゆっくりしてたはずだったんだけどなぁ・・・・・。」 そうつぶやきながら逃げ出す際、コクピット内に突っ込んだリュックの中なから 非常食取り出す。 「えーと・・・・・げっ、これお湯がないと駄目なのかよ。水しかないのに。」 彼が持つ非常食のラベルには、“蓋を空けたらお湯を注いでお召し上がりくださ い。”と書かれていた。 瀬に腹はかえられないので、仕方なく水を注いで飲む。 「ぶふっ。」 思わずはきそうになるくらいに飲み心地は最悪だった。 「やっぱあったかいうちに食べなきゃいけないものは、暖かいうちだね・・・・・。」 まずそうな顔をしながらも飲む。 「とにかく北エウロペ大陸に入ったらこっちの勝ちだ。」 そう言うと気合を入れなおす。だが、まだ数百キロある道のりはまだ遠い。 しばらく進んだ所で前方に大量にまきあがる砂煙を発見する。 「嵐か!?・・・・・いや戦闘のように見えるな。」 砂煙の中から金属のきしむ音がかすかに聞こえる。 「共和国軍と連邦の残党との争いか?」 戦闘とおぼしき場所から少し離れた所に機体を隠すと、望遠カメラで戦闘のよう すを伺う。
「こんな所まで来ていざこざに巻き込まれたら大変だよ。」 そういいながら望遠カメラのピント調整する。 シールドの望遠カメラでは、最大望遠にでしか見にくい為に少し画像が乱れる。 判断しずらかったが、かなりの数のゾイドが戦っている様だった。 そこには見知った機体が何機も見えた。 ライガーゼロ3機とシャドーフォックス6機、そしてガンスナイパーが数機見える。 「こんな所に連邦の残党基地でもあったのか?状況がわかないなーとりあえず通 信機で味方の通信を傍受すればなんかわかるかも。」 そういうと通信機のスイッチをオンにする。 『なんだこいつらは!?ディッセとエルミナを同時にやりやがった。』 『敵はT−REXタイプが4機で後は新型のティガーだ。動きに惑わされている とすぐあの世に行くぞ・・・・・』 『チッ!!足をやられた、後退するぞ。』 『敵は逃がしてくれそうにないぜ?全く飛んだ所に配属されたもんだ・・・・・。』 『誰かシビィーリの本部に状況を報告しろ・・・・・うわっ!?』 『ガナッド!!こいつらよってたかって・・・・・ぎゃッ!!』 「・・・・・・・・・・。」 次々交わされる通信に言葉を失うラッド。 望遠カメラでも次々に倒れて行く味方機を見て、助けたいが脱走している身であ る為に助ける事ができない。 なんともやりきれない思いだった。 しばらくして共和国軍の通信もなくなり、ツェルベルクの勝利の咆哮ともに辺り 一帯に立ちこめていた砂煙も収まっていく。 「それにしてもライガーゼロを含む15機もの部隊をこんなに簡単に・・・ ・・。」 しばらくすると1機のコクピットハッチが開いて、中から誰かが現れる。 乗っていたものが誰なのか興味があったので、望遠レンズのピンとを会わせる。 カメラの先には昨日、自分を助けた少女の姿があった。 「なんで!?どういうこりゃ一体事なんだよ・・・・・。」 目の前の状況にラッドはただただ驚くばかりだった。
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