蒼き虎6
奇襲を受ける前のルーサリエント。 昼の陽気が気持ちよく、日向ぼっこにはもってこいの天気だった。 そんな陽気の中、人々は町を行き交う。 そして町のすぐ横にある基地には、数機のアイアンコングが配置されていた。 その脇ではクイエルディニー救援部隊の第2陣の準備が進んでいた。 「なんだかばたばたして後ろは忙しそうだなぁ。それに比べて俺達は・・・・」 自分たちを尻目に慌しくする人々を見てぼやくパイロット。 「ぼやかない、ぼやかない。私達は私達の任務があるんだから」 そうなだめるように射撃兼副操縦席に座る女性が言う。 アイアンコングは、操縦する者の他に兵器類を担当する砲撃手の二人が乗り こむ事になっている。 たわいのない話で盛り上がる二人。 ピーッ!! 突如鳴り響く警告音。 一瞬にしてコクピット内に緊張が走る。 「なんだ!?」 戦闘体制に入る為に操縦桿を握りなおすパイロット。 「上空にミサイルが・・・・」 その言葉をかき消す様に次々と基地内にミサイルが着弾していく。 基地周辺はいたる所で炎と煙が巻き起こり、警備に当たっていたコングも直撃 を受けて無残な姿をさらしていた。 数十分後、目が覚める女性。 意識がボーっとして何があったか覚えていない。 だが時間が経つとともによみがえる記憶。 ハッと何かに気付くと、すぐ横にいたパイロットの事を思い出して彼のいる方向を見る。 しかし、そこにはめくれ上がったコンソールと跡形もない操縦席の残骸があるのみだった。 爆発の際の破片が、彼の操縦席を襲ったらしい。 モニターのが大きく割れ、外のようすがじかにうかがえる。 姿の見えない男性パイロットを探して、慌てて辺りを見まわす女性。 後ろに吹き飛ばされ、全身血だらけでぐったりとした彼の姿が目に入る。 「オスティ!?」 涙目で思わす叫びそうになるのを必死に抑えて、駆け寄ろうとする。 何処かやられてしまったのか、体が思うようにうごかない。 必死にもがく女性。 はうようにしてようやくオスティのもとにたどり着く。 しかし、彼はすでに息を引き取った後だった。 彼の死を確認し、思わず目をそむける。その先に見える黄色い機体。 「許さない・・・・!!」 遠くに見える機体を見つめながら、憎悪に満ちた言葉が彼女から吐き出される。 そしてまたうごかない体を引きずり、自分が座っていたシートへと戻る。 コンソールをさわってみるものの全く反応がない。 しばらくしてコンソールパネルの蓋を開き、配電盤をいじりはじめる。 彼女の乗るアイアンコングの先では、一機のタンデロイガがゾイドの残骸に囲 まれるようにたたずんでいた。 周りにある残骸はガデニーが乗るタンデロイガが全て倒したものだった。 タンデロイガの背中に生える異様な物。先端は巨大な爪の様に見える。 「一通り倒してしまったか」 そういって、後ろから水を入れた容器を取りだし一息入れる。 「それにしても当初の予定より支援砲撃が少ない。ネベットの奴、また何かを たくらんでるな」 そう言うとしばらくは町の中をゆっくりと歩きはじめた。 「ん?」 しばらく歩いていると、遠くの方で何かがある事に気付いたガデニーは、足を 止めてカメラを望遠にい切り替えて様子をうかがう。 その先では2機のタンデロイガが死闘を繰り広げている。 一機は青く塗られている。 その周りに何機かの敵ゾイドが確認できるが、2機の行動にどうしていいものか と考えあぐねている様だった。 「あの二人は何をやっている・・・・」 飽きれた表情を見せるガデニー。 「敵にしろ味方にしろ、ろくな奴がいない」 そういうと時計で時間を確認する。 「・・・・そろそろ潮時だな」 そういうと通信機を手にする。 「G1よりG2へ。こちらは撤退する。後始末をした後、合流せよ」 『了解』 返答が帰ってきたのを確認すると、町の外へと向かう。 町の外へと移動を開始すると、そうはさせるかとばかりにG・リーフとSディ ールが現れる。 しかしその事にも動揺をせず、そのまま突っ込んで行く。 火を噴くG・リーフのバルカン。 「なんだあいつ!!突っ込んでくるぞ!?」 「とにかくコクピットを狙って撃てばいいんだよ!」 ひるまずに突っ込んでくるガデニーのタンデロイガを見て、逆に動揺するG・ リーフのパイロット達。 そして背中にあった2本の腕のような物が大きく展開される。 「なに!?」 「なんだあれは??」 困惑するパイロット。 次の瞬間、すれ違いざまに2機のSディールを背中の2本の爪で挟む。
「ク、クソッ!!放しやがれ!!」 捕まった事で焦るパイロット。 とっさに放つバルカンも、バルカンごと捕まれている為に、地面を削るだけだ。 「もう一度やつ勝負するまで、貴様らごとき相手で死ぬわけにはいかんのでな」 そう言うと、もがくSディールを一気に真っ二つにして放り投げる。 そしてそのままのスピードで町の外へとつき進む。 一方ネベットは、残弾数を確認しながら町への砲撃と移動を繰り返していた。 「ここで撃ち切って帰る時に襲われたらしゃれにならんからな」 そうつぶやくと、レーダーの反応を見る。 戦闘開始40分で、味方の反応が2つ消えている事に気付く。 「誰だ?ガデニーとケンデニッヒの反応か?ワジョとブライツの奴め、なかな かしぶとい。」 少し悔しそうにする。 ガデニー機の反応がないのは、自由気ままに動く為に彼の機体に設定されてい た識別コードを、ガデニー自身が変更している為だった。 しばらく走った後、足を止めてフルオープン状態の一斉射撃を行う。 発射された無数のミサイルと砲弾が、町のいたるところで爆発して光り輝く。 「そろそろ連中をしんがりにして、撤退するか」 そう言うとおもむろに通信機を取り出す。 「アズ、各機に我に続けと打電せよ。そろそろ撤退する」 『残念ながらの伝聞は打てません』 「なんだと!?」 彼の言葉に困惑するネベット。 『私は、ここであなたを倒さなければならなくなりましたので』 「貴様!裏切る気か!?」 そういうとアズのタンデロイガに銃口を向ける。 『いえ、元々違う部隊の所属ですので、そちらの命令を優先するだけの事です』 「クソッ!!」 悪態をつくとハイブリットキャノンを放つ。 近距離での砲撃だが、あらかじめ攻撃がくる事を予想していたアズは、簡単に避ける。 「チッ!!この距離ではミサイルが使えん。距離を置かねば・・・・!!」 そういうとメインコンソール脇にあるボタンを押す。 するとネベットのタンデロイガを中心に煙が立ち込める。 「煙幕・・・・」 そう言うと辺り一帯に神経を研ぎ澄ます。 煙で相手の動きが見えない以上、へたに動くのは危険だからだ。 『そんな所でとまっているとは、死にたいらしいなぁ!!』 その通信とともに煙の中から、無数のミサイルがアズのタンデロイガに向かってくる。 とっさの判断で着弾直前にミサイルをかわす。 それでも数発は機体に直撃し、装甲を吹き飛ばしていた。 その隙を突いて遠くの方に陣取っているネベットのタンデロイガが、間髪入 れずに放った、ハイブリットキャノンの砲弾が自分に向かってくるのを確認する。 すぐさまそれを避ける。 砲弾は機体をそれて後方で砂煙を巻き起こす。 次々に放たれる砲弾とミサイルに防戦一方のアズ。 しかし、冷静にそれらをかわしながらネベットの残弾が尽きるを待つ。 ネベットの機体は、パンツァーユニットを装備している為に備えられている弾 が無くなってしまうと、ただの鉄の塊と化す。 それをじっと待つアズ。 数分後、あれだけ自分に向かってきていたミサイルや砲弾の数が少なくなる。 そろそろかと心で反撃のチャンスをうかがう。 そこに今までとは違う2個の小さなミサイルが放たれる。 ヒュルヒュルと音を立ててゆっくりと上空を舞い、こちらへ向かってくる。 「!?しまった・・・・!!」 それをいぶかしげに見るアズと何かに気付いて叫ぶ。 と同時に辺りを強烈な光が襲う。閃光弾だ。 光から目を守る為に手をかざす。 モニターが焼け、回復するまで使い物にならない。 赤外線センサーなどに切りかえるアズ。 設定中に機体に振動が走る。 「なにっ!?」 そのまま逃げるだろうと思っていたネベットのタンデロイガが、自分の機体を 襲ってきていた。 センサーで見るとあの重いパンツアーユニットが見当たらない。 「素体でくるなんて・・・・!!」 ネベットは、残弾が尽きかけている事に気付くと、とっさに閃光弾を放って隙 をつくり、相手を襲う作戦を考えて即実行したのだ。 突き倒された際に、体と足をがっちりと抑えられて反撃どころか身動きさえとれない。 今まで冷静だったアズに焦りの表情が見える。 「このままでは・・・・」 焦るアズとは裏腹に余裕の笑みをこぼすネベット。 「誰の命令で動いていたかはしらんが、裏切り者には死を・・・・!!」 そう言うと牙を立てて腹部に噛み付く。 と同時に左脇に装備されていたブレードを脇から引きちぎる。 「次はコクピットを砕かせてもらうぞ」 そう叫ぶと牙を頭部へとむける。 バシィッと乾いた音が辺りに響く。 「な、なんだ!?」 突然機体が揺れた事に揺れる動揺が隠せないネベット。 アズのタンデロイガの尻尾がネベットのタンデロイガの頭部を襲ったのだ。 何回も繰り返される頭部への攻撃。 「クソッ!!」 たまらんとばかりに機体から離れるネベット。 そしてそのまま速度を上げる。 逃げる体制に入ったのだ。 ゆっくりと起き上がるアズのタンデロイガ。 右足で2回ほど地面をかくと跳躍する。 グングンと上がるスピード。 離れていたネベットのタンデロイガを至近距離に捕らえる。 そして、無事だった右側のブレードを展開すると同時に、機体を振動が襲う。 普通は両脇に装備されているブレードを展開する為に、高速で走っていてもバ ランスが崩れないが、左側のブレードが無い為にバランスが崩れてスピードが 落ちたのだ。 しかし、その事に動揺する事も無くすぐさまバランス補正を行い、再度スピー ドを上げる。 近づくネベットの機体。 「ブースターのあるなしの差がこれほどのものとは・・・・!!」 近づくアズの機体を見て恐怖するネベット。 素体ならではのフットワークを使って攻撃をかわそうと蛇行する。 そんな小細工も、次に放たれた衝撃砲で足を止められてしまう。 足が傷ついた事によってその場で身動きが取れなくなるネベット機。 そこへアズのタンデロイガが向かってきた。 「や、やめろぉーーー!!!」 そんな叫びを無視してブレードがコクピットを真っ二つにする。 それだけではなく、機体事態が頭部付近で二つに切り裂かれていた。
そのまま立ち止まる事なく、そこから離れて行くアズの機体。 少し間を置いてネベットの機体が爆発し、辺り一帯に砂煙と炎を巻き起こす。 そんな場面をモニターで確認するとさらにスピードを上げてガデニーとの合流 地点へと向かった。
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