崩壊
砲弾を必死に避けている3機のゾイドを見つめる者がいた。 大きな塹壕にガンスナイパーが一機。 上からカモフラージュ用の天幕を張り、その上に土砂を撒いて発見をより困難 にしている。 そこから監視用のカメラと砲身が覗いている。 「敵はこちらの姿が見えない為に焦っている。一気に叩き潰せ」 その通信とともに各塹壕に配置されいるゾイドから砲撃が加えられる。 「シビーリにむけて特殊部隊の連中がくる事は先刻承知だ。シビーリまで何の 罠もないと思ったか」 そう言って笑みをこぼすパイロット。 と同時に照準に入って来たライガーを狙う。シールド張って他の機体をかばって いるのが見える。 「シールドライガーとシャドーフォックスか。攻撃をエネルギーシールドで防 ぐ気のようだが、張っているシールドもそろそろ限界だろう」 ヘイトグラウラーをシールドライガーと誤認したまま、シールドのなくなる瞬 間を狙う。 『隊長、本隊への報告は?』 「そんなものは後だ。今はこの狩りを楽しめ」 そう言いながらその時を待つ。 「??なんだシールドは・・・・スペック上の限界時間を超えているぞ」 なにかが違う事に気づくと、通信機を取る。 「3、4号機、仕掛けてやつの動きを探れ。あれはただのシールドじゃない!!」 『了解。』 3機の間時下に配置されていた軍政府仕様のG・リーフが突如と現れて攻撃を 仕掛ける。 「じ、地面から!?」 ヤコーニが驚きの声を上げてひるむ。 「ちぃ!!」 ひるんだヤコーニの機体を踏み台にして飛び上がるワジョのフォックス。 G・リーフのパイロットの死角にいた為、突然現れたフォックスに慌てふためく。 体制を崩したG・リーフをストライクレーザークローが襲う。 あっという間に沈黙する2機。
「な、何だあの素早い動きは!?フォックスと言えどもあんなに機敏に動ける はずが・・・・。一体なんだんだこの部隊は!?」 思わぬ強敵に焦りの色を隠せない隊長。 「そろそろ向こうの砲身もだいぶ熱くなってるだろう」 そういうと熱センサーのスイッチを入れる。すると地面のあちらこちらから反応が 現われた。 「見えない所から一気に叩き潰すつもりだったんだろうが・・・・生憎そうはいか なくてな」 そういうとワジョとヤコーニに敵の位置を知らせて反撃に転じる。 「クソ、位置がばれた!!各機臨機応変に戦え!!」 その言葉に合わせて塹壕から数機のガンスナイパーやG・リーフが現れ攻撃を しかける。 それを見てフォックスの後方からヘイトグラウラーが猛追する。 そして一気に彼らを追い抜くと、シールドをはって攻撃を防ぐ。 ヘイトグラウラーの後ろに隠れたフォックスが、その背後から飛び出す。 「同じ手に引っかかって・・・・うわぁ!?」 脇からの攻撃に抵抗する間もなく撃破されるガンスナイパー。 彼らが前方に気をとられている隙に、もう一機のフォックスが周りこんで側面 から攻撃を仕掛けてきたのだ。 「くそっ!!なんてやつらだ!!」 そう言ってまだ隠れていた隊長機が姿を現すと、突撃しつつ攻撃をかける。 「まだいたのか!?」 一瞬、隊長機に気を取られたラーマに気づいたG・リーフが、大きくジャンプして 襲いかかる。 「くっ!!」 襲いかかる敵に気づくも機体の反応が間に合わない。 ダダダダダダッ 発砲音とともに金属をはじく音が木霊し、空中で蜂の巣となるG・リーフ。 「ワジョ、すまない。借りができた」 『いえ、今までの借りを返したまでですよ』 そう言うとすぐさま目の前の敵に向かって行くワジョ。 戦闘が終結した事を確認すると、すぐさまキシェルドの機体の元へと向かう。 『隊長、部下を見捨てて楽しんでくるとはひどいぜ・・・・』 「そんなくそ生意気な事がまだ言えるようなら安心だ」 苦笑しながら言うと機体を降りて助けに向かう。 機体を失い怪我をしたキシェルドは、ヤコーニの機体に乗る事となった。 「チッ、狭過ぎだぜ・・・・」 不満を漏らすキシェルド。 「文句はこちらが言いたいのだが・・・・」 迷惑そうな顔をして反論するヤコーニ。 「それにしてもあの裏切り野郎め、元味方も容赦無しかい。あんなのを連れて 後ろから撃たれてもしらねえぞ」 「・・・・彼が部隊に入るのが不満なのは分かるが、それと個人的感情を一色他に するとろくな事にならない。さっきの戦闘で分かったはずでは無かったのか?」 「けっ、そんな事いちいち考えてられるか。とにかくあの隊長は俺の嫌がる事 しかしやがらねぇ!!いつか締めてやる!!」 「・・・・その言葉は聞かなかった事にしておこう」 そうつぶやくと、なに後とも無かったように運転を続ける。 「・・・・」 キシェルドも黙るほかなかった。 補給部隊と合流すると、昼夜関係無しに翔け抜ける3機のゾイド。 しかし、その姿が他の者に見える事はない。 今や常識となった光学迷彩を使ってシビーリへと向かう。 先程の戦闘は、補給部隊との合流する時間に近かった為に光学迷彩を解除した所に 敵の攻撃を許してしまった。 便利な光学迷彩も使いつづけるには、エネルギー省費量が高いという難題がある。 使用せずに夜陰にまぎれて少しずつ動きたい所だが、上層部は作戦の早期終了を 言ってくる。 無駄な時間に時間を費やすわけにはいかなかった。 敵部隊が入ると思われる拠点を避けつつ、三日後にシビーリ周辺に到着。 機体を隠して町中へと潜入するのだった。 「本国の連中もこれだけあからさまに私を狙ってくるとはな。よほど本国での 戦闘が深刻だと見える」 各地での戦闘報告書を見てつぶやくコクン。 本来これらの戦闘が行われた場合は、各前線の都市を消滅させると宣言してい るが、実行する気はない。 前回の消滅事件も実際はコクンの命令ではなく、アルバンの命令で行われたも のだった。 彼がどういった経緯で一都市を消滅させる兵器を手に入れたのかは分かってい ないが、前回使用した兵器も一つしか無かったらしく、アルバンも次の行動を 起こしたくても起こせない状態だった。 「全く持って不愉快な話が多い・・・・」 チャキ・・・・ 「不愉快ついでにもう一つ不愉快な事をしてやろうか?」 いつの間にか立っていた男がコクンに銃を向ける。 入り口付近にいた兵士が慌てて銃を構えるが、その顔を見て驚く。 「で、私を撃ったところでこの国や我々の結末は変わらんぞ、アルバン」 「心配しなくても、うまく逃げおおせて見せるさ。俺はあんたと違って思想や 政治なんかには興味がないんでな」 「そういう奴だと走っていたが、そこまで落ちていようとは・・・・私の考え が甘かった様だ」 そう言うとうつむき首を振る。 「自分の理想を追うのはいいが、あの世へ行ってやってくれ!」 ダァン!! 部屋一帯に響く銃声。 「お前ら、悪いがこいつのお供をしてくれや。俺なりのせめてもの手向けさ」 そういうとドアにいた兵士をあっという間に撃ち殺す。 「さて、トンズラする用意だな」 そうつぶやくと、コクンの座っていた椅子の裏側にまわり、隠し通路へと姿を消す。 先程もここから現れたのだ。 数時間後、邸内では大きな騒ぎとなる。そこに堂々とアルバンが姿を現す。 そして各戦線の兵士達への影響を考慮して、コクンの死を隠す事をアルバンや 他の将校達で決定する。 だが、どんなにひた隠しにしても情報は外に漏れる。 噂が噂を呼び、シビーリに潜入したラーマや他の特殊工作部隊は混乱をきたした。 「さて、準備は整った。後はここから出るだけだな」 そういうとアルバンは部下を率いて町を出るため下士官の運転するジープに乗っていた。 「この町ともこれで見納めか。ここの地酒は結構気に入ってただけに少し惜しいな。」 「大佐も珍しい事を言われますな」 ジープを運転する下士官が、彼から聞きなれない言葉を聞いて思わずたずねる。 「この俺もたまにはセンチメンタルになる日もあるさ」 そういうと町並みから昇る朝日を見る。 まだ前回の戦闘の傷の癒えない町には、あちらこちら建築中の建物が見える。 「それは失礼しました。それはそうとあと暗殺の件ですが、そろそろここの上層部連中に ばれるかもしれません。昨日、部下の何人かが公安の事情聴取を受けた様です」 「事件発覚から4日も経ってようやく手が回ってきたか。ここの治安は大丈夫なのかね」 そういうと笑みを見せる。 「いやいや、そう捨てた物ではありませんよ。部下に聴取が及んだ理由が例の隠し 通路が見つかったからだそうです」 「なるほど、あそこの警備は俺達の部隊だったからな。何とも単純明快な捜査をしやがる。 となると後ろについてくる連中はそれがらみか」 そう言って後方に目をやる。 数台の車が追尾しているようだった。 「その様ですね。おっと、もうすぐ基地です。この話は町を出てからという事で」 「分かった」 そう言うとアルバンは、正面を向いて腕組をし、基地へと向かった。 同時刻、臨時最高指揮官となっていたコクンの副官を努めていたカルベルマン大佐を 中心に会議が開かれていた。 「先日発見された隠し通路より、准将のちとおもわき血痕がいくつか見つかった。 どうもアルバンを中心とした連中の仕業のようだ」 この報告に会議室にいる者全てがざわめく。 「か、彼らは一体何を目的にこんな事を・・・・!!」 中年将校が怒りを抑えながら叫ぶ。 「さすがにそこまではわからんだろ。それに公安の方でも確証を得ているわけ ではないはずだ。いまは見張りをつけているだけだろう。」 「そんな事を言っている間に逃げられては厄介だ。今すぐ拘束した方がいい」 「だが奴は、准将と親しい間柄で有名な男だ。そんな男によって准将が暗殺され るとは・・・・とても信じれん」 「信じられない。その言葉を理由に現実を見ようとしない。人間という奴は厄 介なものだ・・・・」 飽きれた表情を見る若い将校。 「皆が言いたい事は分かるが、まず彼の拘束。それが先決だ。それでいいか?」 カルベルマンは、話しがそれ様としているのを察して話しをまとめるように促がす。 異論はないとばかりに会議室に静寂が戻る。 だが数分後、彼らは自分達の浅はかさを痛感する事になる。 『アルバン大佐!!どうされたのですか!!』 アルバンは割り込んでくる通信を気にもせず、機体を格納庫から強引に出す。 「各部隊は戦利品の確保と同時に、ホーエルカイザーに乗りこめ!!空戦隊は、 スクランブルできないように滑走路を爆撃だ」 そう通信を送るとカイザーへと向かう。 その脇から慌てて飛び出してきたと思われる、共和国仕様のツェルベルクが身 構えていた。 アルバンの乗るゴジュラスの後方では、グスタフが戦利品を満載して移動していた。 それを脇目で見ると目の前のツェルベルクと対峙する。 「共和国仕様って奴はキャノピーの露出が微妙に嫌なんだよな」 そういいながら接近してくるツェルベルクに向けてビームを放つ。 「簡単に避けられるか。ならば・・・・!!」 そう叫ぶと、機体を滑らせるように前進する。 その動きはとてもゴジュラスとは思えないものだった。 その事に一番驚愕したのはツェルベルクのパイロットで、一瞬動きが止まる。 彼の乗る機体は、ロケットエンジンなどを全てイオンブースターに変更した特別機で、 見た目は他のゴジュラスと同じでも、性能差は歴然としている。 だがいかに特別機であっても、巨体のゴジュラスと小柄なツェルベルクでは格闘スピ ードの差が埋まるはずもなく、格闘戦に持ちこむものの思ったように動けない。 逆に落ち着きを取り戻したパイロットに翻弄される。 「やるなぁ。さすがにもうゴジュラスの天下じゃないよなぁ」 そう言いつつ笑みを見せるアルバン。 そこに何発かのビームがツェルベルクの装甲を撃ちぬく。 「!?」
パイロットは突然の事に辺りを見まわす。 すると同じスピノサウルス型のBLOXゾイドクレイがいた。 「あれは敵機か!?」 動揺するパイロット。 「心配しなくともあいつらにいいとこどりはさせないぜ!!」 そう叫んだかと思うと、一気にツェルベルクとの距離を縮めて巨大な手がツェ ルベルクの首をつかむ。 つかんだツェルベルクをそのまま持ち上げると、もう片方の手でツェルベルクの胴体を持つ。 こうなるとどうもあがいてもツェルベルクは逃げ出せない。 「楽しい戦いをありがとよ!!」 そう言うと、楽しそうな笑みを浮かべてツェルベルクを上下に一気に引きちぎる。 「1、2号機はサポートモードから警戒モードへ」 音声入力でクレイのプログラムを変更すると、足早にカイザーへと向かうのだった。
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