森林の防人2
目の前に振りおろされようとしている光る4つの爪。 「くっ!!」 それを見たクリスは反射的に機体をそらす。 グシャァァ・・・・!! 金属がひしゃげる音とともに左のバスタークローが弾け飛ぶ。 スロー再正のように上空を通過するクライジェンシーが見える。 その時、フューラーの尾がちょうどクライジェンシーを狙える位置にあるのが 見えた。 考えるよりも先に体が動く。 機体を強引に回転させてテイルスラッシュをクライジェンシーの腹部に直撃させる。 この一瞬の出来事にクライジェンシーは避ける事なく一撃を食らい、はじき飛 ばされて巨木に激突する。 「これで・・・・どう?」 息を切らしながらいうとクリスは、クライジェンシーの方に目をやる。 だがクライジェンシーは倒れてはいなかった。必死に立ち上がろうとしている。 攻撃を受けた腹部からは所々スパークを起こしているが気にもとめない。 「もうやめなさい!!」 そう言って制止しようとする。 ガササ・・・・ 不意になる草を掻き分ける音。 それと同時にフューラーに放たれるビーム。 「なに?」 そう言ってビームの放たれた砲を見ると、黒と紫を基調としたゾイド背中には 大型のバルカンが装備されている。 そしてそれにつき従う数機のスピノサパー。 「ジェノザウラーにスピノ?まさか・・・・。」 何か嫌な予感がするクリス。
『まさかこんな所であんたと出くわすとは思わなかったぜ、おとなしくそのク ライジェンシーを渡してくれれば引くが・・・・・・そんな気はないようだな。 今回はこの間のようにはいかないからなぁ!!』 彼女の嫌な予感は一方的に入ってきた通信とともに当たる。 そんな事を考えているひまもなく2機のスピノサパーが飛び掛ってくる。 襲いかかってくるスピノを軽くかわそうとするが、先ほどのクライジェンシー との戦闘で思うように機体が動かない。 1機はかわしたがもう1機は、バスタクローで飛び掛ってきたスピノのチェー ンソーを受け止めるとそのまま投げ飛ばす。 「どうやら機体に相当ダメージをおっているようだな。遅れて来て正解ってわけか。」 そう言って笑みをこぼすジェノのパイロット。 「せっかくアルのことが分かるかもしれない子を見つけたかもしれないって言 うのに・・・・!!」 愚痴をこぼしつつ、クライジェンシーに近づこうとするスピノをビームで牽制する。 メキメキメキ・・・・ あまり聞きなれない音が聞こえたかと思うと、クリスの機体に向けて1本の木 が倒れ掛かってくる。 「なっ!?」 その事に驚きながらも木をかわす。 そこにジェノザウラーのテイルスラッシュがフューラーを直撃する。 「こんなやつに・・・・!!」 さらにチェーンそうで切りかかるスピノが3機。 まず1機がフューラーの目の前までくると急に方向を変える。 それに気を削がれている間に2機目がジャンプして襲い掛かって来る。 その事を予測していたクリスはバスタークローで串刺しにする。 だがさらにもう1機がフューラーの足をチェーンソーで切り裂いていく。 咆哮を上げて痛がるフューラー。 そこに4連インパクトガンを背負ってスピノサパーが離れた所から攻撃を仕掛ける。 野盗とは思えないほど息の合った連携プレーだ。 防御するまもなく何発か食らうフューラーだが、その強靭な生命力を止めるま でにはいたらなかった。
そこに追い討ちをかけるようにジェノがバルカンを放ちながらクライジ ェンシーの方へ機体を向ける。 「さ、させないよ!!」 背中のブースターを前回でクライジェンシーの元へとむかう。 目をやるとまだクライジェンシーは動けないでいるようだった。 牽制のバルカンをかわす余裕もない為に数発の直撃弾を受ける。 そのうちの一発がブースターをかすった為にスピードが一気に落ちる。 『はっはっはっ、あれだけ強かったあんたがえらく惨めな姿をしているな。』 あざけ笑うジェノのパイロット。 ビー、ビー ブースターの異常と危険を知らせるブザーとメッセージがモニターにはしる。 仕方なく自走するがダメージを追った機体で森の中を素早く掛けるというのは 無理な相談だ。 フューラーは次第に動きが鈍くなり、足を止めてしまう。 彼女の目の前でジェノと何機かのスピノがクライジェンシーを運び出そうとしていた。 が、近づいて来たスピノを突然起き上がったクライジェンシーがなぎ払う。 レザークローをまともに受けて二分、三分にされるスピノサパー。 「こいつまだこんな力があったのか!?」 そう言って間合いを置くジェノのパイロット。 その場にいたスピノは、クライジェンシーの牙と爪で全滅させられてしまった。 スッと立ち上がったクライジェンシーは、ジェノに向けて一気に距離を詰めていく。 「く、くそぉ!!」 背中のバルカンで牽制するが、スピードが落ちる気配はない。 慌てて身を隠せる巨木に身を隠し、そこから牽制のバルカンを放つ。 クライジェンシーはそれらをかわすとジェノが隠れた巨木に向けてストライクレザークローを放つ。 キャシャァァァァ 辺りに響くジェノの悲鳴。 レザークローは巨木ととともにジェノの腕を切り落としていた。 「あ、あぶない!!」 クリスの叫びとともにいつの間にか機体全体に光りを帯びていたジェノの口か ら収束荷電粒子砲が放たれた。
その叫びに反応したのか着地したクライジェンシーはその場を離れる。 かろうじて荷電粒子砲を避けるクライジェンシー。 しかし直撃せずとも周辺にあった木や粒子砲に1番近かったクライジェンシー の装甲を一瞬にして蒸発させる。その場にうずくまるクライジェンシー。 そして次の瞬間にはあたりの木々に火がくすぶる。 「手間を取らせやがって・・・・。」 そう言いながら近づくジェノパイロット。 そこにジェノを貫く一筋の矢。胸部を直撃し、コクピットとコアを貫いた光り は空へとかける。 パイロットは一瞬にして蒸発し、コア撃ち抜かれたジェノザウラーは断末魔と ともにその場に倒れこむ。 光りの放たれた先には、ボロボロになりながらも何とか体制を保つフューラー の姿があった。 「油断大敵ね・・・・・。」 そう言うとクリスは安堵表情を浮かべる。 周辺の火を一通り消して安全を確認すると機体を降りる。 ゆっくりとクライジェンシーに近づくとコクピットへと向かう。 「たく、本人かどうか分からないけど、結構無茶な動きよね・・・・。」 そう言ってコクピットハッチを外部から開けるスイッチを押す。 静かに開くコクピットハッチ。中を除くが誰もいない。 「単に野生化したゾイドだったのね・・・・。」 そう言うと落胆の色を隠せない。 とりあえずなかには言ってみると操縦桿に何かがかけられているのを発見する。 チェーンに板状の金属がつけられていて番号がかかれている。 「この番号は・・・・。」 そう言うとコクピットの中を隅々まで調べる。 足元付近には見なれたガイロス帝国の赤いパイロットスーツが見つかる。 左肩には黒い短剣の部隊マークが縫い付けられていた。 スーツに飛び散った血の後を見つけるが、致死量になるほどの量ではなかった。 「あのばかは・・・・。」 そう言うとことばに詰まる。いつの間にか溢れる涙。 それだけの痕跡でアルフレッドの生死を判断することはできないが、生きてい ると信じたかったのだった。 フューラーやクライジェンシーの応急処置で数時間ほどその場にいたクリスは、 自分の機体に乗りこむと移動を始める。 その後ろをゆっくりと付いてくるクライジェンシー。 「・・・・。」 その姿を黙って見過ごすと、クライジェンシーの足に合わせてゆっくりと歩く。 「・・・・久しぶりのフィルバンドルになるなぁ。」 そういうと笑みをこぼす。 2機はゆっくりと北へと進路をとるのだった。
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