帰還
町を徘徊する数機のゾイドがいる。 白と黒を基調とした恐竜型ゾイドで尾には特徴のあるスナイパーライフルが装 備されている。スナイプマスターだ。 彼らが通った後には破壊と炎、そして絶望が渦巻く。 その足元では逃げ遅れた人々が必死にその場から離れようとしているが、それ をあざけ笑うかのように破壊を繰り返す。 そこに一筋のビームが放たれた。 スナイプマスターの足元に着弾し、動きを止める。 それを見て発射された方向を見るスナイプマスター達。 背中には2機のブースターを背負ったカーキを基調とした虎型ゾイドがたたず んでいた。 「ベセルトサーベルとはまたろくでもなしがでてきたもんだ。」 開いての正体を確認して少し安堵するパイロット。 『ベセルトだからって油断してんじゃない。慎重に行け。』 彼の言葉に反応して仲間からパイロットを叱責する通信が入る。 「言われなくても分かってるよ!!」 そう言うと少し苛立った面持ちで前にでて対峙する。 『そこの4機のスナイプマスターに告ぐ。降伏か撤退かどちらか好きな方を選 べ・・・・。』 ベセルトサーベルから拡声器による降伏勧告がされる。 だがスナイプマスターは一向に撤退をする様子を見せない。 こうしている間にも町全体へと火の手が回ろうとする。一刻の猶予もならない。 「町のそとに追い出すのが先決か・・・・。」 ベセルトサーベルのパイロットはそう口にすると、改めて操縦桿を握りなおす。 意を決意し、前足を出すと同時にブースターを使って急加速する。 「くっ・・・!」 大きな衝撃が機体を襲い、うめきが漏れる。 スナイプマスターのパイロットは旧式とあざけ笑ったが250km以上のスピ ードを発揮する。 「攻撃勧告もなしかよ!!」 急激にスピードを上げてこちらに向かってくるベセルトを見て動揺する。 動揺が次の行動への判断を鈍らせてしまい、近づくベセルトサーベルの牙の餌 食となる。 ベセルトサーベルはスナイプマスターをくわえこんだままもう1機のスナイプ マスターへ突出する。 それを見て鬼気迫る物を感じたのか他の2機ともども町の外へと逃げ出す。 それを見たベセルトは歩みを止める。
町を脱出したスナイプマスターに第二の矢が襲う。 近くの基地からスクランブル発進したプテラスボマーが、急降下爆撃を開始する。 突如として振ってくる爆弾に右往左往しながら逃げ惑う。 『うわぁ!?』 不意に通信きから聞こえてくる仲間の叫び声。 通信を送って来たパイロットのスナイプマスターの見ると直撃を受けた様で、 機体が大破していた。 「クソ、貯蔵庫からたいした物を奪えずトンズラとは・・・・。」 しばらく逃げ回っていると次第に爆撃がやむ。 どうやら爆弾を使いきってしまったらしく、1機を残して去って行くプテラス。 「今のうちに・・・・。」 敵の数が少ない今がチャンスとばかりに生き残った2機はその場を離れようとする。 だがさらに張り巡らされていた罠があった。 ヒュンッ 何かを発射した音と同時に何かの直撃を受けて、足に攻撃を受けた為か急激に 動かなくなる2機のスナイプマスター。 足の周りにはいくつもの弾痕が見えた。 「なんでこんな所にシャドーフォックスがいるんだよ・・・・!!」 『そうなってはもう逃げ様がないだろ、諦めて降伏するんだな。』 シャドーフォックスのパイロットが言う。 その言葉に苦虫をつぶしたような顔をするスナイプマスターのパイロット。 数分後、スナイプマスターのパイロット達は降伏勧告を受け入れるのだった。
「アダールさん、あなたの作戦の御かげでようやくアルバンの残党を捕らえる ことができました、感謝いたします。 これで彼らから情報を聞き出すことができるでしょう。」 ロードとおぼしき年老いた女性が椅子に腰掛けたままそう話す。 「いえ、雇われの身としては当然のことをしたまでです。」 そう言うとサングラスのブリッジをクッと押し上げる。 「あなたのような方にはこの町にずっと居て頂きたい物です。」 「お言葉いたみいりますロードアリシア。ですが私は・・・・。」 「自分探しの旅ですか。」 アダールが応える前にアリシアが先に言う。 「・・・・はい。」 「ですがいつ分かるかもしれない自分の事の為に、あのような子を連れて旅を するというのは・・・・。」 心配そうに語るアリシア。 「私のような一傭兵の為にそのようなご心配を頂くことは有りません。」 拒絶するように答えるアダール。 「そうですか、あなたにはこの町の為に大変お世話になりました。 どうしても旅に出るというのであれば、私どもであの子のお世話をさせていた だいてもかまいませんのよ?その方があなたの旅も・・・・。」 アリシアは短い間ではあるものの、町の為に大きく貢献してくれたアダールの 為に何かしたいと思い、色々と提案する。 「申し訳ありません、あの子が私のもとから離れようとしないのです。それに 私も唯一の肉親と別離する気はありません。」 「・・・・わかりました。あなたがそう考えているのであれば仕方ないでしょ う。この申し出はなかった事にして下さい。」 がんとして動かないアダールを見て諦めるアリシア。 「ありがとうございます。」 そう言うと深く頭を下げる。 「そう言えば次はどこへ行くつもりなのですか?」 「特に決めてはおりません。一度大陸の北側の方へ行っても良いかとは思って います。」 「そうですか、それはちょうどいい。」 そう言うとアリシアは机の引出しを開けて何かを取り出すと、アダールに手渡す。 「このようなお話しがきているの。どうかしら?」 紙面にはこうかかれていた。 “近々エウロペ同盟会議がフィルバンドルにて開催されます。昨今活発化して きた反政府組織への備えとして各都市国家の部隊、または雇っている傭兵をお 貸し頂きたく・・・・・・・・フィルバンドル議長サラ・ミラン” 「フィル・・・・サラ・・・・。」 なぜか言葉に詰まるアダール。 「お嫌ですか?」 「いえ、旅をする為にも資金は必要です。ありがたくお受けいたします。」 アリシアの問いに慌てて答えるアダール。 「よかった、これであなたやサラちゃんの役にたって一石二鳥だわ。」 そう言うとにこにこしながら手を小さく叩くアリシア。 アダールの役に立てたとよほど嬉しい様だ。 「それではわたしはこれで・・・・。」 そう言うと一礼し部屋を出る。 「何故・・・・・・・・・・戸惑ったのだ・・・・。」 先ほど言葉に詰まったことに違和感を覚えるアダール。 そこにそでを引っ張られる感じが締めを向けると、クレセアが心配そうに自分 の顔を見つめている。 「すまない、心配をかけた。」 そう言うと彼女の頭をなでる。 なでられてうれしそうな表情を見せるクレセア。 「行こうか。」 そう言うとクレセアとともにその場を後にするのだった。 朗報は遠距離通信からやってきた。 緊急回線を使ったクリスの連絡に明るい表情を見せるミラルダ。 横でサラはよかったねとささやいてくれている。 『まだ本人を確認したわけじゃないけども、一旦そっちに戻るわ。フューラー はボロボロだし、あいつのクライジェンシー、一度詳しく調べなきゃらならな いだろうから・・・・。』 ちょっと困った表情を見せるクリス。 あの森林での戦闘以来、クライジェンシーティガーはクリスのバーサークにず っと付き添うようについてきていた。 「わかったわ、機体の修理と調査の準備を早急に手配するわ。」 「さんきゅー、じゃ。」 そう言うと手を振って通信を切るクリス。 ゴロゴロ・・・・ 「あーはいはいわかったわかった。さっさと行きますか。」 クライジェンシーの声にせかされるとクリスは機体を発進させた。 そのあとをクライジェンシーが続く。 フィルバンドルの都はもうすぐだった。
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