記憶3
町に煙が立ちこめる数時間前にさかのぼる。 地下道を歩く影が二つ。 「まったくクレセアのおかげで警官に追いまわされてひどい目にあいました よ・・・・。」 携帯用モニターに映し出される男と話す黒服の男。 『ルシェフ・サンドラはその場にいなかったのだな。』 「ええ、どうも単独行動のようでしたが、彼女の事に触れると同時に力の発動 を確認して今すからひょっとすると・・・・。」 『トッド、ルシェフの生死などにこだわってはいない、こちらとしてはクレセ アだけ生きていればいい。この作戦中に貴様の責任で連れてかえれ、以上だ。』 そういうと一方的に通信が切れる。 「まったくお役所仕事のような命令にはうんざりだね。」 そう言うと通信機を胸ポケットにしまう。 「そっちの仕事も大変そうだな。」 不意に聞こえた声に驚いて振り向くトッド。 「!?・・・・・これはアルバンさん、盗み聞きとはいけないですなぁ。」 見知った顔に安堵の表情をうかべる。 「俺らを利用して色々と実験をするのはいいが、こっちの依頼どおりの動きは してもらうぜ?」 「それはもう、その為の実験を用意をしてきましたから。」 にこやかに言うトッド。 「ち、くえんやつだ。今から3時間後に町で爆発を起す。その後はこの紙に書 いてある通りに動いてくれればいい。その為の実験体なんだろ?」 そう言ってトッドの脇にたたずむアルスフィを見る。 「ちゃんと言われている通りの事はこなせますよ?先日も見ていたでしょう?」 先日の事とはコング暴走事件の事だ。 「まぁな。おまえ達研究所には色々と世話になっているから信頼はしている が・・・・な。」 語尾を濁すアルバン。 「その信頼に応えて見せますよ。では〜。」 そう言うとアルバンの脇をすり抜けて地下道を歩くトッドとアルスフィ。 アルバンはその姿を黙って見届けるのだった。 時系列をもとに戻す。 先日コングが暴走した周辺を中心に爆発が相次ぐ。 「ゾイドを出せ!!」 基地内の格納庫ではあわただしく兵士達が動きまわる。 ゴゥッ 唐突に起きた閃光とともに爆発するゾイド。 次第に爆発は大きくなり、格納庫全体を包む。
次の瞬間にはゾイドと格納庫の残骸から煙が昇る。 「なんだ・・・・??うわぁっ・・・・」 整備兵が自分のいる格納庫から爆発した格納庫を見ようと外を除きこんだ瞬間、 その後ろで爆発が起き、整備兵ごと吹き飛ばす。 それは他の格納庫でも同じように爆発がおきていく。 生き残った格納庫からはいでるゾイド。 その中に異様な形をした爪を装備したタンデロイガがいる。 すっと脇にいたツェルベルクに近づくとその爪を胴体に突き刺す。 コアを貫かれたツェルベルクはその場でぐったりとして倒れる。 「はは、わるいな。あんまり近くにいたものでついやっちまったよ。」 そう言って笑って見せるガデニー。 異変に気づいたクライジェンシーRのパイロットがタンデロイガに近づく。 「貴様何をしている!!」 そこにこちらに疾走してくる別のタンデロイガ。 「手伝ってくれ!こいつ妙な動きを・・・・!?」 近づくタンデロイガはガデニーきではなくクライジェンシーに襲いかかる。 「こいつも仲間か!!」 クライジェンシーのパイロットは、タンデロイガの攻撃を避けると間合いを とるために距離を置こうとする。 そうはさせまいとタンデロイガが詰め寄る。 覚悟を決めたのかクライジェンシーのパイロットが近づくタンデロイガに 向かった走り出す。 背中のイオンブースターに火がつくと同時に、急激な加重がパイロットにかかる。 「くっ!!」 一気に近づくと大きくジャンプし、体をそり上げる。 「くらえ!!」 叫ぶとともに振り下ろされるレーザークロー。 タンデロイガがかわそうと体を反らす。 その動きに合わせて振り下ろすが、僅かに装甲をかするのみ。 「くそっ!!」 後ろへとすぎていくタンデロイガを見ながら悪態をつく。 攻撃をかわしたタンデロイガは両脇に装備されたブレードに付属するビーム砲 をクライジェンシーに向けて放つ。 しかし、クライジェンシーもそれを何なくかわして行く。 ほぼ同型機と言える2機の戦いはなかなか決着がつかない。 そこに大きく振り上げられてシザーバイトがクライジェンシーの喉笛を掴む。 そしてそのまま地面にたたきつけて動きを封じる。 中々決着がつかない事に壕を煮やしたガデニーが、助けにはいったのだ。
「隊長!?」 「アズ、てこずりすぎだぞ。」 「一対一の戦いに・・・・。」 「今は戦争中何だ、そんな下らない戯言はあの世で言え!!」 そう叫ぶとシザーバイトに力を入れてクライジェンシーの首を跳ね飛ばす。 倒れるクライジェンシー。 「ここの人間は他人を信用しすぎる。」 あたりの様子を見ながらつぶやくガデニー。 そこに次々と集結する部隊。その多くは無人ゾイドだ。 「各機、アラウンドの連中の妙な実験まで持ちこたえてやれ。」 『了解。』 応答を聞くとアズの乗るタンデロイガとともに町に向かう。 サラに連れられてアダールは、邸宅内にある地下室へ案内される。 「この地下室はとなりの議事堂の地下室とつながっていて、自由に行ききが 出来る様になっているわ。それと・・・・。」 地下室にある地下道を歩いている途中に分厚い扉が見える。 「開けてくれる?わたしじゃ無理だから。」 サラに促がされて扉を開けるアダール。 扉の向こうにある物に驚く。 「これは・・・・。」 広い部屋の中に数機のゾイドが並べられている。 「ここはもしもの時の為に用意された防衛用ゾイドの格納庫。 で、あなたに乗ってもらいたいのは・・・・あれよ。」 スッと指を指す方向に1機の虎型ゾイドが鎮座している。 「クライジェンシーティガー。」 クライジェンシーを見たアダールがつぶやく。 「この間クリスが連れかえってきた子でね。あなたの機体よ。」 「・・・・。」 そう言われて黙るアダール。 「あなたに記憶がなくても私はあなたをアルフレッド・イオハルだと認識して います。だからこの機体は元の持ち主であるあなたにお返しします。」 そう言うと笑みを見せる。 「・・・・過去を否定するつもりはないが、記憶をなくす前の名前がそうだったとしても 今の私はアダールだ。それ以外の何者でもない。」 「・・・・あんた昔の記憶を取り戻すつもりある?」 「さぁ・・・・な、だがこの機体は借りうける。依頼を完遂する為にもな・・・・。」 「ちょっ・・・・。」 サラの言葉をさえぎって機体に向かうアダール。 「?」 機体の前で何かを見つけたアダールが歩みを止める。 「あら、レイナ。こんな所にいたの。」 アダールの背中ごしに声をかけるサラ。 「サラー。」 そう言うとサラ元に走ると抱きつくレイナ。 「・・・・。」 その少女を見て何かを感じるのか黙ってじっと見るアダール。 「あの人が来たらクライジェンシーがあるじのお帰りだっていって喜んでたよ。」 そう言ってアダールの方を指差す。 「そうなんだ・・・・って事らしいけど?」 「・・・・。」 その問いかけに応える事なくクライジェンシーに向かうアダール。 アダールが近づくとクライジェンシーは自然に頭を下ろしてコクピットハッチ を開き、アダールは開いたコクピットに飛び乗る。 クライジェンシーは格納庫を出ると地上へ出るために地下道を走る。 「まったく変な所が頑固なのよねぇ。」 そうつぶやくとレイナの手を引いて格納庫の外へと向かうサラだった。 地上に出ると町のいたる所で火の手が上がっていた。 その周辺には無人のブロックスゾイドがうろついている。 「・・・・あれがブロックスか。」 まず近くにいたブロックスゾイドに近づく。 向かってくるアダールのクライジェンシーに気づいたブロックスゾイドが威嚇 するようにほえると、背中のビーム砲を放つ。 しかしクライジェンシーはひるむことなく近づくと、レーザークローでブロッ クスの装甲を一気に引き裂いて行く。
断末魔を上げながら倒れるブロックスゾイド。 その断末魔とともに次々に現れるブロックスゾイド。 背中には巨大な大砲を装備した支援タイプも見える。 「なるほど、各機がそれぞれリンクしていて仲間の1機がロストすると集まる システムをとっているのか。だが・・・・。」 全機がクライジェンシーに向かって攻撃を開始する。 だがそんな事を気にする様子もなく、攻撃を次々にかわしてレーザーサーベル やレーザークローの餌食にしていく。 「ブロックスの遠隔システムは、いくら数がいるとはいえ私にとってはやりや すい相手だな。」 そう言って笑みを見せるのだった。
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