それぞれの思惑
空をゆっくりとかける1機の巨大なゾイド。 その大きさから主に輸送用として使用されているホーエルキングだ。 真っ青に塗られたその機体にはエウロペ同盟の所属を示すベルがマーキングさ れている。 「ひとよんまるまる、定刻どおりにエゼルタを出発。予定どおりにザストーメ へと向かう、以上だ。」 艦長が通信モニターに向けてそう言うとモニターに移された女性オペレータよ ろしくお願いしますと言ってモニターから消える。 「今回も順調ですね。」 艦長の脇にいた男が言う。 「そう毎度毎度トラブルがあっても困るぞ副長。」 「ですね。」 にっと笑う副長。 「一段落が着いたところでお茶にでもしましょう。エゼルタ特産のルナティー を手に入れましたので。」 「ほほう、それはいいな。後もう少しで安定高度に達する。その時にでも・・・・・。」 ビー、ビーッ!! けたたましく鳴り響く警報音。 「なんだ!?」 なり叫ぶ警報音の中、前方にいるレーダー担当員に向かって叫ぶ。 「レーダーに感あり、接近する複数の機体が認められます。」 「なんだと!?」 驚愕する艦長。 「機種判明、レドラーです。」 「こんな所にレドラーとは野党か!?」 「・・・・・!?そのまま突っ込んできます!!」 ゴゴゴゴ・・・・・ 低い音とともに船が振動する。 ズゥゥン!! 大きな音の後、機体が傾く。 「エンジン被弾!!」 「消化班エンジンの消化を急げ!!各砲座は弾幕を張るんだ!!」 「この艦には厚い弾幕を張るほどの火器は・・・・・。」 副長が動揺した顔を見せながら進言する。 「張らないよりましだ。」 「前方にザバットの大群を捕捉。」 「3連装ビーム砲よーい・・・・・・・・・・テッ!!」 艦長の号令とともに背部に装備された3連装ビーム砲が火を吹く。 何機かを撃墜したものの、四方に飛び散ったザバットが思い思いにホエールキ ングに襲い掛る。 ザバットに気を取られている隙にレドラーが腹部の格納庫ハッチめがけて切断 翼できりつける。 そのきりつけた場所にザバットの小型爆弾が突撃し、爆発とともに大きな穴をあける。 そこに群がるように侵入するザバット。 「腹部格納庫ハッチ被弾!!敵機が侵入してきました!!」 「くそッ、乗っ取る気か!!全員格納庫へ急げ!!格納庫要員はゾイドを使っ てでも侵入を阻止!!私も行くぞ!!」 そう言うと副長がとめるのをも聞かずに格納庫へと向かった。 一方フィルバンドルの市街地では、クライジェンシーとフランカーの一騎討ち が行なわれていた。 そのまわりにはフランカーが操作していたであろうブロックスゾイドがあちら こちらに横たわっている。 つまり元々一騎討ちではなく、先に扱いやすく目障りなブロックスゾイドをク ライジェンシーが片付け、残るはフランカーのみという事だった。 「な、なんて野郎だ。あれだけのブロックスゾイドを僅かな時間で・・・・・!!」 パイロットがつぶやいている間に近づいてくるクライジェンシー。 「くそぉ!!」 背中のビーム砲出牽制するが、クライジェンシーは気にする事なく突撃してくる。 「うぁぁぁぁぁぁぁ!!」 泣き叫ぶような声を上げながら間近に迫ったクライジェンシーに向けてティル スラッシュを繰り出すフランカー。 しかし、それを予測していたかのように歩みを止めてかがむクライジェンシー。 足を止めても体は勢いで前に進むがかがんだ事によってティルスラッシュをかわす。 一回転したフランカーの姿を見て喉もとに噛み付くクライジェンシー。
キュゥゥゥゥィ・・・・・!! 断末魔を上げるフランカー。 動かなくなった事を確認してから首もとから牙を抜き、あたりを見まわす。 そこにゆっくりと近づく2機のゾイドが見えた。 カーキ色に塗られたタンデロイガ。 背中には不可思議な爪をつけている。 「なんだ、あの見慣れない機体は?」 「その機敏な動き、何者も寄せ付けぬ強さ、やっとあえたな・・・・・。」 コクピットないでつぶやくガデニー。 歓喜極まった顔でアダールのクライジェンシーに襲い掛かる。 スピードを上げつつ,両脇にバイトシーザスを展開する。 突っ込んでくるタンデロイガを上にジャンプして避けるアダール。 ギィィィィ・・・・・!! 金属の避ける音が辺りに響く。 「くっ!?」 上空に避けたクライジェンシーの装甲をタンデロイガのシーザスが器用に引き裂いたのだ。 「考えが甘いんだよ!!」 思わずそう叫ぶガデニー。 着地してガデニーの方に振り向いて身構えるクライジェンシー。 間髪入れずにアズのタンデロイガが体当たりを敢行する。 避けきれずに体当たりをまともに受けるクライジェンシー。 その場で2、3回転すると体制を立て直す。 その隙を狙ってガデニーのタンデロイガが襲い掛かって来る。 「!!」 それを察知したアダールはすぐさま脇に逃げてタンデロイガのストライクレー ザークローをかわす。 しかし、そこにタンデロイガの脇に装備された爪が再び襲いかかってくる。 だがそれを見きっていたアダールはそれすら避けると、逆に爪の突いた腕に噛みつく。 「ちっ!!」 噛みついたクライジェンシーを払いのける為に、後ろ足でクライジェンシーを 蹴りつける。 クライジェンシーは、その攻撃すら両足を上げてかわして腕を引きちぎる。 ブゥゥン・・・・・ 鈍い音がして上空を見上げると、アズのタンデロイガが両脇のブレードを展開 して襲いかかろうとしていた。 瞬時にその場を離れるアダールのクライジェンシー。 ガデニーはよろける機体を無視して強引にアズ機の背中をジャンプ台ガワリに してクライジェンシーに襲いかかる。 何とかかわそうと体をひねるが限界がある。 ガデニー機の攻撃を避けきれず、頬の部分の装甲が引き裂かれる。 アダールはよろける機体をそのまま回転させて後ろ足でガデニー機を蹴り上げ ようとするが、背中のイオンブースターを使って蹴りをかわす。 蹴りをかわしたガデニー機はそのままその場を離れる。 そこにまたアズのタンデロイガが、ブレードを展開してクライジェンシーに向 かってくる。 「・・・・・!!」 さすがにかわしきれないタイミングだった。 「もらった!!」
アズのタンデロイガが、クライジェンシーを切りつけようとする寸前に体を小 さく丸めたかと思うと、前足を軸に後ろ足でタンデロイガの頭部を蹴り上げる。 「なっ!?」 激しい振動がコクピットを襲う。 機体が縦に回転するアズのタンデロイガ。 大きな振動とともになんとか機体を着地させるアズ。 だがアズ自身は、その衝撃に耐えきれずにコンソールパネルに頭を打ち付ける。 クライジェンシーはその隙をついて体を反転させるると、イオンブースターを点火して 一気にタンデロイガに襲いかかる。 「くそッ!!アズはやらせん!!」 そう叫ぶと同時にクライジェンシーを追うガデニー。 だが中々追いつかない。 ようやく体を起こしたばかりのアズは、目の前に迫ってくるクライジェンシー を呆然と見る。 クライジェンシーとすれ違った瞬間、また振動が機体を走る。 ピーーーーッ!! 甲高い音とともにコンソールパネルにはシステムフリーズのメッセージが表示される。 「くっ!!このままでは・・・・!!」 そう言ってコクピット内のあちらこちらをさわり機器チェックをはじめる。 「よくもやってくれたな!!」 怒りをぶちまけながらクライジェンシーに襲いかかるガデニーのタンデロイガ。 「・・・・・!!」 後方から近づいてくるタンデロイガに気づいてそのままのスピードで体を回転させる。 激しい音とともにめくれ上がるアスファルト。 土ぼこりが辺りを舞いはじめ、視界を悪化させてく。 それを見ると熱センサーのスイッチを入れ、土ぼこりの中へ入るガデニー。 熱センサーに反応がある。正面だ。 「そこか!!」 獲物がいるとわかると足を速めるガデニー。 足を速めたのと間を置かずに機体が揺れる。 機体が何かに引っかかり、バランスを崩してその場で突っ伏する。 「くそッ!!何だ!?」 辺りを見まわすが土煙しか見えない。 『このような状況へ率先して入ってくる勇気は買うが、無謀すぎる・・・・・。』 クライジェンシーのパイロットの声。 その声に苛立ちを覚えるガデニー。 かと言って立ち上がって突き進んでも、また何かわ何はめられる可能性がある。 個々は耐え忍ぶ以外方法はなかった。 次第に視界が晴れてくる。それに合わせてゆっくりと機体を起こす。 「奴はどこだ・・・・・。」 そう言って辺りを見まわすがみつからない。 ふと視界を下に向ける。 「!!」 彼が何かに気づくと同時に揺れる機体。 「い、いつの間に・・・・・!?」 目の前に見えるクライジェンシーの頭部。 土煙に突っ込んだのを見て、とっさにダミーの熱を放出し、彼に気づかれない ように息を潜めて隠れていたのだった。 「思いどおりにはさせん。」 回転しそうになる機体を、イオンブースターを使って阻止して着地すると、 間を置かずにクライジェンシーに飛び掛る。 それを見て避けようとするクライジェンシー。 だがを右の爪を地面に突き刺して空中をゆく自分の機体を、強引にその場にとどめる。
「なっ!?」 これにはさすがのアダールも驚きを隠せずにいた。 着地すると地面から爪を引きぬいてそのまま目の前いにいるクライジェンシーの頭部を殴りつける。 吹き飛ぶクライジェンシー。 「なんて戦い方だ・・・・・。」 思わずつぶやくアダール。 「あの時のやられた仮を返すまでは、簡単に倒れるわけにはいかなくてな。」 「・・・・・。」 その言葉に無言で返すアダール。 「ここをお前の墓場にしてやる!!」 さらに飛び掛るタンデロイガが、クライジェンシーを襲うのだった。
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