それぞれの思惑2
議事堂の窓越しに町の炎と煙が立ち上っているのが見える。 それを見つめる男がいる。 「貴様がここに来たのはあれの為か?」 ヘリック共和国軍外務官、マックナンは背後にいる男に向けて言い放つ。 「その通りだよ、マックナン。」 マックナンの後ろにいた男が銃を向けたまま話す。 「・・・・ガフェスト、お前という奴はそこまで腐ったか!!」 「怒るな、お前はちょっとした事ですぐに頭に血が昇るから周囲の人間が疎遠にされるんだ。」 「・・・・!!」 ガフェストの言葉を聞いて怒りがさらに増すマックナンだが、反論せずにじっと耐えている。 「そんなお前でも我々の役に立つんだと今日は感激したよ。」 笑みをこぼすガフェスト。 「・・・・私に航路を聞き出させて何をする気だ。」 そう言うとガフェストを睨みつける。 「そこまで言う義理はないな。」 銃を改めて構えるガフェスト。 「!!貴様こんな所で発砲してみろ、警備兵が・・・・。」 銃を向けられてうろたえるマックナン。 「あの窓の騒ぎがある以上、ここで何かあっても誰も気づきはしないよ・・・・。」 コンコン・・・・ ドアをノックする音が響く。 その音に振りかえるガフェスト。 すぐにマックナンのほうを見てあごで出ろと合図を送る。 素直に従うマックナン。その後ろには従を突き付けたガフェストがドアに隠れるように立つ。 ギィ・・・・ ドアがきしみを上げて開く。 「なにかな?」 ドアの向こうにはジャルクがいた。 「いえ、すでにお気づきかと思いますが、町で騒動が起きています。早めの非難をと思いまして・・・・。」 「あ、ああそのようだな・・・・。」 ぎこちない追う体のしかたに疑問を感じるジャルク。 以上と思えるような汗をかきながらしきりに脇を見ている。 「すぐにでるから少し猶予を・・・・。」 ドカっ・・・・!! 急に振り上げられた右足がドアを蹴上げる。 その行動に思わず頭を抱えてしゃがみこむマックナン。 パンパン!! 立て続けに銃を放つ音が響く。 その音とともにドアから離れるジャルク。 「うがぁ!?」 悲鳴を上げるマックナン。 「外務官!!」 拳銃を構えて部屋の入り口からへ屋の様子を伺う。 すると窓辺に立つ男が1人。 彼の持つ拳銃がマックナンを狙っていた。 「やらせん!!」 そう言うと銃を乱射しながら部屋に入る。 「うっ!!」 思わぬ突撃に左腕を撃たれるガフェスト。 負傷した左腕を気にする事もなく反撃する。 だが痛みのせいか正確さに欠ける。 それを見てチャンスとばかりに、一気に間合いを詰めてガフェストの右手を拳銃ごと蹴り上げる。 「・・・・!!」 「観念しろ!!貴様は一体・・・・。」 ジャルクが言い終える前に、蹴り上げ様と足を上げるガフェスト。 しかしとっさに避けたジャルクが間合いをとって牽制の銃を放つ。 それを見て窓まで一気に走ると大きくジャンプして窓を破る。 「うぁぁぁぁぁぁ・・・・!!」 飛び降りたガフェストは断末魔とともに姿を消した。 「・・・・。」 死体を確認せずそのままマックナンのところに向かう。 「外務官殿!!」 そう言って体を起こす。 「や、やつらは定期便の航路を・・・・。」 そこでこと切れるマックナン。 「定期便航路??何事だ・・・・。」 不思議に思いながらも通信機を取り出して兵士を呼び出す。 「ジャルク様!!」 数人の兵士たちが駈けつける。 「間に合うとはマックナン外務次官を医務室へ。」 「はっ!!」 命令を受けてマックナンを短かで運び出そうとする数人の兵士。 「小隊長、外務次官に関して何か不審な行動がなかったか調べろ。特に定期航路に関する情報をすべてだ。」 「了解しました。」 そう返答すると近くにいた部下に命令して移動を始める。 「これで何か掴めるといいが・・・・。」 考えながらつぶやくジャルク。 その頃炎と煙が立ち込めるフィルバンドル基地では消化作業や動ける機体の避難に追われていた。 幸い町のはずれにあったためにここからの延焼はなかったが、今でも町の中心部では炎がくすぶっている。 「いそげ!!何としてでも首謀者を抑えろ!!」 上官が部下に指示をくりだす。 だが彼の言葉とは裏腹に動ける機体は少なく、まばらに動く機体が見えた。 その様子をフェンスの向こう側から見つめる少女と男がいた。 「がんばるねー、ここの兵士さん達も。」 感心するように言う黒服の男、トッド。 「アルスフィ、時間だ。数は多いがやれるね?」 アルスフィは黙ってうなずくと、手に持った水晶に念をこめはじめる。 光を帯びる水晶。 格納庫付近で使える機体がないか調べる整備兵。 目の前にはG・リーフが横たわっている。 「この機体はもう駄目だ、石化現象を起こしている。数時間後にはただの石っコロだぜ。」 そう言って別の仲間と別の場所に以降とした時、背後で物音がして振りかえる。 「なっ・・・・!?」 振り向いた先には、先ほど石化現象をはじめていたゾイドが、立ちあがっていたのだ。 そしてこちらに視線を下ろすとゆっくりと進みながら機銃を撃ってきた。 「ば、ばかな!!」 そう言いながらもその場を急いで離れる整備兵。
石化した足を引きずるようにして歩くG・リーフ。 「お、おい!!あれ!!」 仲間の整備兵に呼ばれて視線を仲間が指す方を見る。 「!!」 その先にはさっきのG・リーフと同じように石化し始めているゾイド達が、生き残ったゾイドに襲いかかっていた。 「一体なんなんだよ、これは!?」 その状況を見て整備兵は、叫ばずに入られなかった。 「うーん中々面白い光景だ。まるでホラー映画のようだね。」 やられてもまた起き上がるゾイドを見てつぶやくトッド。 「完全石化には個々の差があるとはいえ、そう長くはもたないだろうに。 まったくこんな事にアルスフィを使わせたくないねぇ。」 そう言ってアルスフィを見る。 「これが終わればクレセアを見つけ出すだけだが・・・・どうも要人扱いされてそうな雰囲気だったから見つけて連れ出すのは難しそうだし・・・・リーマンはつらいね。」 そう言いながらクレセアとあった時に議事堂の方に運ばれているのを思い出す。 ズゥゥゥン・・・・ 彼らの場所からさほど遠くない所で鳴り響く音。 ふと見てみると2機のゾイドがゾンビゾイドを一蹴していた。 1機は共和国のヘイトグラウラー、そしてもう一機は見なれない緑色の機体だ。 「一体何だよこれは・・・・。」 「ブライツ、余計な事を言っているひまがあるならあっちの集団を叩く準備をしとけ。カルベルツァの言い実戦テストになるだろ。」 「了解大尉。」 「こんなゾンビもどきがいい相手になるわけないだろ・・・・。」 愚痴をこぼしながらその集団に突撃するブライツのカルベルツァ。 「愚痴るなら小声で愚痴れ。丸聞こえだ。」 「い、いやなんでもないですよ、ワジョ大尉どの?」 ワジョの言葉に慌てるブライツ。 目の前に迫ってきたゾイドを頭突きではじき飛ばすと、背中の近距離ビームでとどめを指す。 「・・・・この変な感じは噂の研究所関連か?となるとやはりこれはアルバンの・・・・。」 考え込むワジョ。 「ほぉ、あれはひょっとしてフランカーの完成体の方ですかね。面白い、あれに何機かけしかけてみよう。アルスフィ。」 トッドはアルスフィにその2機を襲わせるように指示を出す。 ピー、ピー ヘイトグラウラーのコクピット内に警告音が鳴り響く。 「!?こっちにも集団でご到着か。」 そう言うと自分に向かって群がるゾンビゾイドに向けて背中の機関砲を放つ。 前衛にいるゾイド達は倒れるが再び起きがろうとする。 その隙を狙ってEシールドを全開にしたヘイトグラウラーが、シールドアタックを敢行し、後ろにいたゾイド達もろとも弾き飛ばして再起不能にする。 「やはりコアをやらないと何度でも生き返ってくるのか・・・・。嫌な戦いだ。」 そう言うとブライツのカルベルツァの援護に回る。 「こうたくさん来られても対処しきれな。」 ストライクレーザークローで、襲いかかってきたS・ディールを返り討ちにする。 「俺のヘイトもお前のカルベルツァも基本は近接戦闘用だから1機にまとめて倒せないのが痛いな。」 「そこは大尉どの後からを見せる所でしょう。」 そう言いながらティルスラッシュで目の前にいたゴドスを吹き飛ばす。
「おだてた所で状況はかわらん。そんな事を言うひまがあるならいい手を考えろ。」 そんな言い合いをしながら目の前の敵を黙々と倒して行く二人。 「うむ、ここにもなかなか楽しめそうなゾイド乗りがいるようで・・・・。」 そう言って笑みをこぼすと、さらにアルスフィに命じて攻撃を仕掛けるのだった。
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