空をかける
「・・・・なんだあのゾイドは!?」 ホエールキング級タスマニアの背中に張りついたクライジェンシーを見て驚愕 するレドラーのパイロット。 タスマニアの背中を艦首の方へと走るクライジェンシー。 『背中の敵ゾイドの排除を願う。』 レドラーのコックピット内にタスマニアのオルメットからの通信が入る。 「了解。」 応答すると同時に機首を傾け急降下するレドラー。 切断欲を展開してクライジェンシーを狙う。 ピー 警告音と共に上空から接近するレドラーが映し出される。 「くっ!!」 空中を移動するタスマニアの背中を移動するのには大変な神経を使う。 少しでも気を抜けば足を取られてタスマニアの背中から放り出されるからだ。 アダールが思ったより風がきつく、前進もやっとの状態だった。 そんな状態のクライジェンシーが攻撃など出来るはずもなく、よけることもま まならない。ほとんどまな板の上の魚状態だ。 クライジェンシーに狙いをつけたレドラーが銃撃を受ける。 火を噴くレドラーが煙を引いて墜落していく。 『自分で立てた作戦の割にはお粗末だな。』 モニターに映し出される1人の男。ジャルクだ。 「・・・・まったくだな、礼を言う。この後も上空の警戒をしてくれるとあり がたいのだが。」 「自分のケツは・・・・といいたい所だがわかったよ。」 そう言うと通信をきって更らに向かってくるレドラー2機と対峙する。 その隙にアダールは、クライジェンシーを艦首へと前進させる。 目指すは艦首にある主砲。 これを潰さなければ、クルーザー艦隊は安心して包囲網を形成できない。 艦首の方で光が収束し始めているのが見える。 次の砲撃が始まろうとしていた。 なかなか前に出ない足を急かすが、思うようにいかない。 ゴウン!! 砲撃と共に船体を激しい揺れが襲う。 その揺れに体勢を崩さない様にしがみつくクライジェンシー。 閃光の先で火を噴き、悲鳴を上げるホエール・クルーザーの姿が見える。 「次は撃たせん!!」 そう言って足早に近づける。 「背中の敵ゾイドが艦首近くまで接近!!」 「まずい、主砲を一度しまえ!!急いでだ!!」 オルメットの指示で主砲がゆっくりと船体内に入っていく。 「させるか!!」 砲身が見える所まできたアダールは、照準をつけると主砲にビーム方を叩き込む。 放たれたビームは主砲の砲身へと吸い込まれていき、爆発を起こす。 その爆発で機体が吹き飛ばされるクライジェンシー。 船体から放り出されて機体が宙を舞う。 急激なGを受けて意識が飛びそうになりながらも、イオンブースターを全開に して機体をタスマニアに戻す。 爪を立ててタスマニアの側面にへばりつく。 「・・・・これでは何も出来んな。」 そう言ってつぶやくとあたりを見回す。 そこにレドラーがやってくる。 それに気付いたアダールは、タスマニアの側面をけってレドラーに飛び掛かる。 「うわぁぁぁぁ!!」 動けないと思っていたクライジェンシーが、突然、襲ってきたことに思わず叫 ぶパイロット。 クライジェンシーはレドラーの背中を踏み台に、再びタスマニアの背側面に戻る。 今度はイオンブースターを使って側壁を上っていく。 「なんてやつだ。機体を左に10度ほど傾けて奴を落とせ!!」 オルメットの指示で機体が傾いていく。 側壁を駆け上がっていたクライジェンシーは、かけることも出来ずに再び側壁 にしがみつく。 すぐ側にあった対空砲が、クライジェンシーに照準を合わせると、砲撃をかけ てきた。 「・・・・ぐっ!!」 たまらず手を放して落下するクライジェンシー。 イオンブースターを使うが全く意味がなく、機体が落下していく。
ガシッ!! 落下中だったクライジェンシーを、何かが機体をつかんだ音がした。 ふと上を見ると、大きな翼を広げた1機の飛行ゾイドが見える。 『危機一髪でしたね。アダールさん。』 通信機からベイターの声が聞こえる。 「恩に着る。」 「いまだ、一斉射撃・・・・テッ!!」 ジュテポルデの号令と共にタスマニアにむけてホエールクルーザー艦隊の主砲 が放たれる。 数発がタスマニアの側面と前面の格納庫ハッチを破壊し、穴をあける。 「・・・・。」 その様子を見て少し考え込むアダール。 「すまないがこのまま機体をタスマニアに近づけてくれないか。」 通信モニターに向かうとそう言うアダール。 「今度はあの穴から入る気ですか?とことん無茶をする人ですね。 ・・・・こうなればとことん付き合いますよ。」 そう言って機首を反転させてタスマニアに向ける。 「無茶を言ってすまない、戦闘終了後に酒でもおごらせてもらうよ。」 「いいねーそれは。楽しみにしてますよ、アダールさん。」 少し笑うとすぐに真剣な眼差しを目の前のタスマニアに向ける。 機体をタスマニアの前方に回り込ませるとそのまま突撃するように向かって行く。 「少し広げておくか。」 そう言って背中に装備されたミサイルを穴の空いた格納庫ハッチ向けて発射する。 ミサイルは穴の両脇を直撃して、大型ゾイドが悠々と入れる大きさとなっていた。 予想通りに事が運び、笑みをこぼすベイター。 「よし、これで楽になる。こちらのタイミングで放り投げさせてもらうがよろ しいか?」 『いつでも。』 即答で帰ってくるアダールの返答。 そこに2機のレドラーと数機のザバットが飛来する。 「ちっ、邪魔をする気か!?」 敵機を確認すると、スピードを上げて目の前の格納庫ハッチを目指す。 だが、クライジェンシーを抱えたサラマンダーではそうスピードは上がらない。 徐々に後方から追いつきながら隊空砲を撃ってくる。 『後ろの奴等は任せな。』 不意に入った通信と共に後方のザバット数機に火線が走ったかと思うと、ザバ ットが火の手を揚げて墜落していく。 少し遅れてファルゲン数機が下から上へ過ぎ去る。 「ジャルク司令!!」 『ベイター、おまえは目の前のことに集中してな。』 そう言うと一方的に通信を切って残ったレドラーと空中戦を始める。 「ここまでおぜん立てを作ってもらって失敗するわけにはいかないな。」 そう言って気合いを入れ直すと、再度、前の真の格納庫ハッチに集中する。 「・・・・いまだ!!」 そう叫ぶとクライジェンシーを切り離す。 と同時に大きく旋回して離れるサラマンダー。 クライジェンシーは、イオンブースターを全開にして格納庫の中へと入っていく。 中に入ったクライジェンシーは爪を立てると格納庫の床に着地する。 勢い余ってなかなかとまらずに格納庫内を横に回転しながら停止する。 ピーーーッ!! 機体が停止したと同時に警告音がコックピット内に鳴り響く。 ほっとするまもなく目を前に向けると巨大なテイルがクライジェンシーを襲った。 まともに受けて吹き飛ぶクライジェンシー。 そのまま格納庫の壁に叩き付けられそうになるが、反射的にクライジェンシー が足を出して壁に着地する。 そのまま何事もなかったかのように床におるりと、巨大テイルが襲って来た方を見る。 「あれは・・・・。」 そう言って言葉に詰まるアダール。 そこには今まで見たことない恐竜型ゾイドが立っていた。 巨大な頭、そして三本の爪を持った腕と長い尾。 それらを支えるために発達したであろう巨大な足。 そのシルエットはどこかで見覚えのあるものだった。 『陸戦型ゾイドで空中を駆け回るとはたいしたやつだ。そこまでの腕を持った やつは早々いない。』 敵機から自分を褒め称える通信。 だがその事より目の前のみたことない恐竜型ゾイドに全神経を集中させる。 『さて、次はこのアルバンが乗るゴジュラスギガが相手だ。 今までとは一筋縄ではいかんぞ?』 そう言うとゴジュラスギガが尾を引きずってこちらに向かってくる。 「新型のゴジュラスとは・・・・どこから手に入れたのだ。」
そう言って近づくギガとゴジュラスの発展型なだけにパワーは桁違いなのだろ うと予想して捕まらない様に距離をとる。 「逃げていてもこいつは倒せんぞ。」 「・・・・たしかに。」 そう一言つぶやくと一気に駆けて距離を詰める。 近づくクライジェンシーにギガは右往左往する。 「・・・・やはり遅いな。」 今のギガの動きで動きの遅い事を確認すると、一気に間合いを詰めて飛びかかる。 格闘戦スピードの違いを利用して撹乱する戦法をとったのだ。 「ふん、無難すぎる戦法だな。」 そう言ってアルバンは、機体を前のめりに変形させる。 「・・・・!!」 ギガが前のめりの姿勢に変形したために、その背中をむなしく飛び越えるクラ イジェンシー。 着地と共に振り向くと、いつのまにか巨体が間近に迫っていた。 そして大きく蹴り上げられる。 「くっ!!」 蹴飛ばされると同時にブースターで勢いを弱めて着地するアダール。そこへ更 にギガが迫ってくる。 考えるよりも先にその場を離れる。 「・・・・予想以上のスピードだ。その上、パワーもゴジュラスと比較にならない。 さすがに発展型を名乗るだけのことはあるな。」 そうつぶやきながら後方のギガを見る。 だが、狭い格納庫内をそう逃げ回れるものでもない。 あっという間に追いつめられる。 「さっきまでの威勢のいい虎がただの猫に成り下がって縮こまってるじゃないか。」 余裕の表情を見せて近づくアルバン。 その隙を突いて懐に飛び掛かるクライジェンシー。 そのまま右腕に噛み付く。 「窮鼠なんとか・・・・ってか!!」 そう言って右腕に噛み付いたクライジェンシーを振り回して強引に引き剥がす。 引き剥がされたクライジェンシーは、ギガの脇に立つと再び襲い掛かる。 「ふざけるな!!」 アルバンが叫ぶと共に巨大なテイルが飛び掛かるクライジェンシーを吹き飛ばす。 壁に叩き付けられてその場にうずくまるクライジェンシー。 ピクリとも動く気配を見せない。 「ゆっくりと血祭りに上げさせてもらうぞ・・・・。」 そう言って不敵な笑みを見せるアルバン。
ゆっくりとした歩みでクライジェンシーに近づく・・・・・。
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