宣 言
フォルナ基地の各ゲートでは激戦が繰り広げられていた。 「各個に敵を迎撃してなんとしてでも守り抜け!」 そう叫びつつ敵イグアンを撃破するアルフレッド。 アルフレッドの激と戦いを見て、帝国軍の各部隊は士気を高めていく。 必死に応戦する帝国軍守備隊に徐々に押され始める敵部隊。 しかし耐えるかのように必死に食い下がる敵部隊。 『コルツェン(古代エウロペ語で報告の意味)、コルツェン。 エウロペに春が来た。繰り返すエウロペに春が来た。』 敵部隊内ではこのような暗号と思わしき怪電波が流れる。 それと同時に徐々にではあるが後退をはじめる敵部隊。 数分後、せきをきったかのように敵ゾイド部隊が各ゲートを放棄して逃げ始めた。 各ゲートから分散して逃げる敵部隊。 「やったぞ!!追撃だ!!」 敵の退却を見ていきりたつ各部隊の隊長達。 そして何部隊かが、そのまま敵部隊の追撃に回ろうとする。 「よせ!これ以上追撃などしてもこちらが痛い目にあうだけだぞ!」 いきりたつ彼らを抑えようととめるアルフレッド。 「絶好のチャンスに何いっておられるのですか司令は!!」 「これが追わずにいられるかって!!」 気のはやる者達は口々にそう言うと、アルフレッドの命令を無視して何部隊かが追撃に移る。 それと同時に、遠くから無数の光が現れては消える。 そしてその光は彼らに向かって吸い込まれていった。 「うわっ!!!!」 「くそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」 追撃しようとした部隊が敵の砲撃を食らい、ちりと化す。 それでも生き残った部隊が部隊を再編成し、再度追撃を開始する。 今回は敵の砲撃も無く、敵部隊に追いつくとそのまま交戦に入る。 敵支援部隊の攻撃がなかったのは、先ほどの砲撃の後、帝国軍に ふところに入られないようにと後方へと移動をしていたためである。 帝国軍と交戦に入ると1機のガイサックから赤い光を放つ証明弾が発射される。 光々とあたりを赤く照らしゆっくり夜の帳(とばり)に消えていく照明弾。
「敵追撃部隊と接触の合図です。」 支援部隊隊長が通信機で青いサーベルのパイロットに知らせる。 『了解……確認しました。ミラルダ機でます。』 その言葉と同時に男の横を青いサーベルタイガーが通り抜けていく。 『警告!!敵部隊ヨリ接近スルモノアリ。』 追撃部隊のイグアンのレーダーに、敵機の反応を示す赤い光と警告アナウンスがなる。 「いまさら敵が出てくるとは……うわっ!?」 次の瞬間、機体が大きくゆれたと思うとモニターに地面が向かってくる。 吹き飛ばされたイグアンは、そのまま地面に激突し炎上する。
赤く燃え盛るイグアンのすぐ脇に、炎と闇夜の月に照らされた青いサーベルタイガーが 姿があった。 「なんだ!?ありゃセイバータイガーじゃないか!?」 「かまわん!一斉射だ!!撃ってうちまくれ!!」 部隊長の命令に従い追撃部隊は、青いサーベルタイガーに向けてビームを乱射する。 しかしそれらをあっさりとかわすと、余裕の表情を見せてサーベルが2機の ブラキオスをたたきふせる。 その尋常とは思えない運動性に恐れおののく追撃部隊のパイロット達。 味方をかばうように立つサーベルに畏怖し、後ずさりする追撃部隊。 自分の勇み足で己を殺してしまう事を今、感じとっているのだ。 敵の混乱に乗じて遅れてきたサーベル2機が追撃部隊に対して攻撃を仕掛けてくる。
徐々に壊滅に追い込まれる追撃部隊。 「何だあれは………。」 そういうとアルフレッドは、誘われるように機体を追撃部隊のほうに向ける。 「敵?あの黒い機体は……皆さん早く逃げてください!」 レーダでこちらに向かってくる敵ゾイドを確認後、肉眼にて機体の確認をした ミラルダは、黒いサーベルを見て驚いて、味方にこの場を離れるように指示する。 『ありがとうございます。ミラルダさん。』 部隊長は、そう通信を送ると部隊を率いて足早に味方のいる方向へと逃げ始める。 そして2機のサーベルは敵追撃部隊に対して牽制をかける。 それを確認したミラルダは、機体をグレートセイバーに向ける。 「くるか。」 操縦桿の発射スイッチを押す。 それと同時に背中に装備されている16連ミサイルが発射される。 しかし青いサーベルタイガーはそれを難なくよけると、こちらに向かってくる。 そして背中のブースターに火を入れて、更に加速して向かってくる。 「飛び道具は無理そうだな。」 そういうとミサイル発射ボタンから手を放し、格闘戦を仕掛ける準備をする。 まずミラルダの乗るサーベルがセイバーに襲いかかる。 レーザーサーベルでセイバーの足をねらう。 しかしあっさりとそれをかわされる。 アルフレッドはチャンスとばかりに引いた前足でサーベルの頭部を はたこうとする。 「くっ!」 攻撃をかわす為、うめきをあげながらうしろへと機体を下げるミラルダ。 何とか鼻先をかする程度すむ。
そしていったん引いた機体をそのまま突進させて体当たりする。 足場が悪い為へたをすれば転んで敵に襲われる危険性があるが、 そんな悪条件をものともせずセイバーに向かっていく。 ガッ!! 金属の衝突させる音を立てセイバー吹き飛ばされる。 「うぐっ!なかなかやるな!」 まともに体当たりをくらい、衝撃の中で楽しそうにつぶやくアルフレッド。 吹き飛ばされたセイバーは空中で一回転すると体勢を立て直しながらビームを放つ。 体制を整えている間に攻撃を受けない為の牽制である。 着地したセイバーとサーベルの2機は、そのままにらみ合いを続ける。 『ミラルダさん全機後退が完了しました。戻ってきてください。』 「………了解しました。勝負はお預けになりましたね。失礼。」 そういうとセイバーに背を向けて、来た方向へと走り出す。 サーベルが去るのを見て、あたり一帯を見ると敵部隊の姿が遠くのほうにいるのが 見える。 「なるほど……。」 ようやく訪れた安堵感に浸るアルフレッド。 サーベルが遠のいていくのと同時に後退していた敵支援部隊からの砲撃が アルフレッドの前を爆炎で包み込む。 砲撃が止むとあたり一帯は、しばらくして爆炎が晴れると味方や敵の残骸が ちらほら見え、それを二つの月が怪しく照らす。 「一体奴等の目的は………。」 そうつぶやいた後、ようやくレーダーに目をむけると基地防衛圏内から敵の姿は 反応はなかった。 数週間後、アルフレッドの手元には、各基地で行われた戦闘報告書があった。 各基地への同時進行後、10機近くのホエールカイザーを奪取し、西エウロペ大陸へ と去って行ったとの報告がなされた。 フォルナ基地は、被害は甚大であったが敵の目標と思われるホエールカイザーを 守りきった事は幸いだった。 だが、2機とも敵の砲撃を受けた為、負傷兵の輸送と修理をかねて本国へ帰還した。 彼らの輸送が完了するまでは、グスタフによる輸送方法がとられる事となっている。 「しかしここ意外にこの周辺にある10近くある基地を一斉攻撃できるほどの軍事力を 持っているとは・・・・・。ただの反政府運動ではなさそうだな・・・・・。」 その言葉はひとつの答えを導き出そうとしていた。 「少佐!!」 ノックもせず、新しく着任した副司令が慌てて扉を開く。 「どうした騒々しい。」 「大変です。通信モニターを開いてください!!」 ものすごい剣幕の副司令に押されて通信モニターを開く。 そこにはシビーリのロード(城主)を中心に演説シーンが流されていた。
『………今このエウロペでは、ヘリックとガイロスによる戦争が行われている。 彼らは自分達の土地ではなく、この平和で豊かなエウロペにて行っているのだ。 このエウロペは誰のものだ。ヘリックか?ガイロスか?いや・・・・我々エウロペに 住む原住民のものである!! 我々は今まで争うこともなく、統一国家という枠組みにもとらわれない独自の 生活を形成し、生活を営んできた。 しかし!この二国家間の争いにより、それはもろくも崩されてしまったのである!! 彼らはそれだけでは空き足らず、北の大陸では我々の同朋を戦争に借り出し、 原住民同士を争わせるにいたったのである。(中略) ・・・・・・・・・我々は我々の生活を取り戻すべく、この西エウロペに我々の 我々のためだけの国家ディーベルト連邦を建国することをここに宣言するものである。 明日と未来への希望のために!!』 演説が終了したと同時に通信が切れる。 「・・・・・・・・・こういうことだったのか・・・・・。」 深くため息をつくとモニターの電源を消すアルフレッド。 「警戒を厳重にするように。」 そういうと司令室を去るアルフレッドだった。
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