ディーベルト
ディーベルト連邦の一都市となったフィルバンドルに向かう一団があった。 ゾイドに乗っているもの達の目の前に都市が見えてくる。 「もうすぐでフィルバンドルだ。」 部隊長が部下を励ます。 彼らはつい先日フォルナ基地を襲った部隊だった。 基地を襲い撤退後も、何度か帝国の追撃があったが何とか無事ここまで来れた。 フォルナ基地は連邦と帝国の国境付近にある基地である。 それより奥地にある敵基地からゾイド奪う為には、この基地を陽動する必要があった。 それを今回、フィルバンドルの都市軍が担当する事になったのだ。 国家宣言以降はフィルバンドルのある北部地帯の治安に当たる事になっている。 奇襲から3日が過ぎ、ようやくフィルバンドルに到着した。 彼らは連日の行軍と戦闘でかなり疲れていた。 その集団の中にあのミラルダ機があった。 彼女の機体は都市内に入るとそのまま領主のいる議事堂のすぐ近くにある基地にその機体を 休ませていた。 機体から降り立ったミラルダの前に十数人がずらりと並んでいた。 「ミラルダさんありがとうございました!!」 「え!?え!?」 その声を聞いて慌てふためくミラルダ。 それを見てその列から一人の士官が一歩前に出る。 「我々はガイサック724部隊のものです。撤収時の援護ありがとうございました。 おかけで我々は一人としてかけることなく無事帰還する事が出来ました。 本当にありがとうございました。それでは!」 一方的に話すと724部隊のもの達は、その場を去る。 目の前での出来事に唖然とするミラルダ。 「・・・あ、そうだフィリアはどこに。」 そういうとあたりを捜し始める。そして何かに気づいた様子で、議事堂のほうへと向かう。 彼女はそのまま議事堂を通り抜け、その後ろにある大きな湖へと向かう。 周りを砂漠で囲まれているこの町の大事な水源である。 その湖の傍らに巨大な機体と長い首をしたゾイド、ウルトラザウルスが各坐していた。 今は動く事はないがこの町の象徴として扱われている。 このウルトラは前大戦時の戦闘により漂流してきたものだ。 この町の一部の人々はその生き残りである。 そのため今回の戦争で共和国へ何人かが逃亡を図っている。 しかしここでの生活に意義を感じている人々のほうが多く、今回の連邦発起に関して大きく 関わっている。 ミラルダはその各坐したウルトラのほうへと向かっていく。
ウルトラのすぐ側まで来るとウルトラを見上げる。 湖底にからだの半分が沈んでいるとはいえ、改めてその巨体を実感させる。 見上げたままウルトラの背にある航空甲板へと向かう。 そこには一人の少女がウルトラに寄り添うように座っていた。 「フィリアー!」 「あ、おねーちゃん。」 ミラルダの声に気づき、ミラルダのほうへと走っていく。 「おかえりなさーい。」 「うぎゅっ!?」 ミラルダに走っていたフィリアは出っ張りにつまずいてこけてしまった。 「大丈夫!?」 こけたフィリアを見て大慌てで駆け寄るミラルダ。 「む〜……。」 顔お押えながら置きあがるフィリア。 「慌てて走るから。」 笑顔を見せて注意するミラルダ。 「おねえちゃんの顔が見えたから。」 「またお話をしてたの?」 「うん。今日はお姉ちゃんが無事に帰ってきますようにってウルちゃん達とでお祈りしてたの。」 ウルちゃんとは湖に各坐しているウルトラの事である。 彼女には不思議な力があり、彼らと話が出来るのだ。 ウルトラ達は各坐して動けなくなっているものの、ゾイドコア自身はまだ生きているのだ。 「……心配かけてごめんね。」 フィリアの言葉を聞いて胸が詰まる思いがするミラルダ。 「ウルちゃん達は大丈夫って言ってくれたから安心だったよ。」 そういって笑顔を見せるフィリア。 二人は話をしながら町へと向かいその場を後にする。 その頃アルフレッドは、フォルナ基地ではエウロペ本部に召還命令がかかりホエールカイザーに 乗り込むところだった。 前回の戦闘での功績を認められ、今度共和国に対して行われる大作戦で作戦会議に出席する事に なった為だ。 ディーベルトに対する上層部の扱いには少々不満が残るが、上に逆らう事が出来ないのが彼だ。 「カウル、ボーク、留守の間は任せたぞ。一応ヒィルもこっち来る事になっている気楽にしておけ。」 『はっ!!』 アルフレッドは、彼の二人の部下にフォルナ基地を任せて旅立っていった。 現在帝国は、ディーベルトより先に共和国をたたくつもりで行動を起こしていた。 確かに勢力分布図だけを見ていると、帝国はとても有利に思える。 しかし、補給路の安全確保や占領地での反攻勢力の鎮圧など課題がやまずとなっていた。 なにより一番の問題は、補給路の安全確保である。 共和国は新型ゾイド、ストームソーダを中心とした爆撃部隊を編成し、補給部隊を襲ってきたのだ。 爆弾を搭載したストームソーダやプテラスだけならまだレドラーで対抗でき何とかなるが、 現在個体数の少ない重爆用サラマンダーや対レドラー機として有名な空戦用レイノスが徐々に 戦線投入されつつあり、制空権は共和国のものとなっている状況だ。 帝国空軍は、制空権を奪回すべく改造レドラーを実践投入して対抗策を試みているが、返り討ちに 遭っているが現状だ。そのため東での戦況は悪化の一路をたどっている。 その上共和国は、本国の温存部隊の投入を決定したとの情報も入り、 帝国エウロペ軍はせっぱ詰まった状態に陥っている。 今回、それらを打開するべく大作戦を立案する事になったのだ。 そしてアルフレッドが離れたフォルナ基地より西に数百キロ先にある基地ベルンでは、大掛かりな 準備作業に入っていた。 「明日までには、何としてでも作業を終了させろ!!今後の作戦に影響が出る!!」 司令部にふんぞり返って座り、指揮をするこの男はベルン基地司令ロドリゲス・ワーグナー大尉である。 「この間の奇襲では旨くやられた上、ゼネバスの若造にいいかっこされてしまった……。 この作戦で上層部に私の力を認知させてみせる。」 ロドリゲスは、前回のディーベルト軍の奇襲作戦で3機ある内の2機ものホエールカイザーを奪われ、 階級の降格を食らってやっきになっていた。 彼は前大戦時16歳の少年兵として活躍、大戦終了後は暗黒大陸での共和国の生き残り部隊の掃討 作戦で名を挙げ、一躍有名になった人物である。 本来なら彼も今回の作戦会議に徴収されるはずだったが、ディーベルトの奇襲による防衛失態よる 降格や人物的にやや品性がかけるとして召還は見送られた。 彼の人物像を一番よく理解できるエピソードは、いまや狂気伝説となっている。 (小さいお子様の為に書く事は自粛。←こんなバトスト読んでないって。苦笑) 今回、ロドリゲス自ら立案し作戦を上層部へのアピールし、自らの地位確保を目的としていた。 今、共和国にしか目をむけていない帝国上層部は、彼の作戦の許可をしなかった。 だが彼は、必死に上層部に詰め寄って何とか承諾を得たのである。 「まぁ、今回は正攻法だ。一応正攻法以外の事も考えているが……。」 そう言うと無気味な笑みを見せるロドリゲス。 その周りにいた部下達は、それを不気味に感じて何も言わなかった。 今、彼の心の中には復讐という名の闇深いものしか存在しなかった。 彼はベルン基地より最も近い都市を割り出すために数日前からレドラーを大量に派遣した。 その結果、ターゲットに選ばれたのはフィルバンドルだった。 狙われた町の人々は、そんなことも露とも知らず、部隊が戻ってきた祝いの宴に酔いしれていた。 これはフィルバンドル議会主催の公的なもであるが、この町ではそういう垣根を取り払った 政治が行われているため、多くの一般市民がこの宴に参加している。 その日の夜は一晩中にぎやかな声が続いたという。 次の日、ミラルダは議事堂内にある議長室に呼ばれていた。 「何でしょうかピーリング議長。」 ソファーに腰掛けていたミラルダは、目の前にあるコーヒーを一口のむとそう切り出した。 「今日は議長として呼んだのではない、硬い物言いは無しだミラルダ。」 「わかりましたお父様。それでどんな用件ですか?」 「以前から言っていることだが、早く自衛団をやめてくれないか・・・・・。 おまえの活躍はうれしい。しかし親としてこのまま入団させておくわけにもいかんのだ。」 「・・・・いいたいことはわかります。でもこれは私自身で決めたことです。曲げるつもりは ありません。」 「もうおまえもいい年頃だ、私としては早く落ち着いてもらいたいのだよ。」 「そういわれても私自身まだそのつもりはありません。」 そう言うとソファーから立ちドアの方へと向かおうとする。 「待つんだミラルダ。話は終わっていないぞ。」 「ごめんなさい…あの子が独り立ちできる年までは…・。」 そう言うと早々と部屋を出る。 「………。」 その言葉を聞き、とがめることを止め黙り込むピーリング。 彼女の妹フィリアは人にはない特殊な能力を持って生まれた。 本人はそのことを気にしていないがやはりまわりの人間は、彼女を遠巻きにみている。 そのため姉のミラルダはいつも彼女のそばに居る。 7年前に母親が死んでしまっていることもあってよけいに彼女に対する責任感を感じているよう だった。 この日、ディーベルト連邦首都シビーリより、ホエールカイザーが基地に到着していた。 「今回の物資は以上です。また何かあれば本部に連絡をください。それでは。」 物資のチェックを終えたホエールカイザーの輸送担当官は、基地輸送担当官と握手すると ホエールカイザーへとむかう。 基地にはホエールカイザーからおろされた物資が所せましと並んでいた。 連邦に属した都市は、首都であるシビーリより定期的な補給が受けられるようになっている。 この西エウロペ大陸では、各都市間は距離があるために貿易にあまり力を入れることが出来ない 都市は、かなり貧困度が激しかった。 しかし連邦への参加により、この定期的な支援を受けることにより町の発展を可能にしつつある。 ただし、見返りとしてそれ相応のことをしなければならないが、安全に物資を輸送してもらえると いうだけでありがたいのだ。 「しかし、これだけのゾイドを補給してもらってどうするんですか?」 目の前に整然と並べられているゾイドたちを見て、下士官が上官にたずねる。 「これから戦火がこの町に飛び火するかもしれないための用心だな。」 「飛び火ですか?」 上官の言葉に不安な顔を見せる下士官。 「そりゃ戦争をおっぱじめてしまったんだ。この町がいつまでも安全とは限らんさ。 さーて、仕事仕事。おーい、S・ディールのパイロットマニュアル、何処にやった!?」 そう言うとその場を離れ仕事に専念する上官。 「この町に戦火が飛び火……。」 上官の言葉に下士官の脳裏に恐怖の映像が映し出される。 この町一帯が火の海になり、何もかもが破壊されてゆく映像が……。 しかしその間が得も数秒の後爆音にかき消される。 ゴォォォォォォ………
巨大な爆音を立てながらホエールカイザーは基地を後にしていく。 悪夢を消し去るかのように………。  
あとがきその4 バトストMENUに戻る
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