死を招く少女3
まず先制攻撃を加えたのは、アルフレッドだった。 中短距離用の8連ミサイルポッドから連続してミサイルが発射される。 しかし青いサーベルシュミットは、それを難なくかわしていく。 「さすが。」 アルフレッドの口から感嘆の言葉が漏れる。 「悪いが俺一人で相手させてもらうぜ・・・!!」 そういってスピードを上げたのはロックだった。 「待て。どれだけの技量を持っているか知らんが、うかつに出るな。」 「へっ、知るか。」 悪態をつきながらアルフレッドの忠告を無視し、サーベルシュミットに 向けて突進する。 「田舎大陸の田舎国家が作り出した戦闘ゾイドなんかが、俺様に勝てると 思うなよ!!」 アルフレッドは制止するのをあきらめると、距離を置いて戦いを見届け始めた。 「はなから分かってはいたが、どうも・・・。」 頭に手をやり困った表情を見せるアルフレッド。 手のつけられない悪ガキを部下にしたような気分だった。 お互いの距離が近づくにつれて、激しく砲撃を加えるロック。 逆にミラルダは、応戦せずじっと耐えるように距離を縮めていく。 がきっ・・・・!! 鈍い音と共にサーベルご自慢のレーザーサーベルがジェノサイドの左手を 捕らえていた。
「くっ!!なんでぇこいつは!?」 焦りの混じった声がコクピット内に響く。 「やはり実力に差があるか。」 遠くから観察するように見るアルフレッド。 「くそ!!はなしやがれ!!」 必死に振りほどこうとするロック。 しかし深く食い込んだサーベルはなかなか抜けない。 「これならどうだ!!」 右手でサーベルの喉首を捕まえると背中のパルスレーザーの照準を合わせる。 「これでもくらいやがれ!!」 叫びと同時に背中のパルスレーザーがサーベルシュミットへと吸い込まれる。 が、発射と同時に牙を抜くとブースターを使って、強引にジェノサイドの右腕 から逃れると、一気にその場から離れてジェノサイドの一撃をかわす。 「くそったれ!!」 叫びと同時に近くのコンソールを思いっきりたたく。 そしてサーベルに向けて砲撃を加える。 しかしサーベルはその攻撃をかわしていく。 「ただの砲撃だと思うなよ・・・!!」 そう言うとロックは、足のアンカーロックのボタンを押す。 そして頭部が下がると尾のフィンが展開する。 その間も背中のビーム方は発射され続ける。 砲撃をかわすために跳ね回るサーベルは、徐々にジェノサイドとの距離を 縮めていく。 その間に胴体に取り付けられているフィンが赤白く光を増していく。 そんな事はお構いなしに砲撃は続く。 そしてジェノ自身も粒子を吸って光り始める。 「・・・・・・・・!」 それに気づいたミラルダは、慌ててその場から離れる。 「遅いぜ!!」 その言葉と同時にジェノサイドの口から拡散荷電粒子砲が発射される。 ジェノサイドを中心に前方160度は荷電粒子が飛び交う。 ミラルダは必死に荷電粒子を交わそうとするが、逃げ切れるものではない。 一発の荷電粒子が、右のフィンを貫通し、フィンが溶けるようにおちる。 「・・・!!」 荷電粒子の嵐が去ると動きを止めるサーベル。
「ひゃっはー!!」 ロックの叫びと共にジェノサイドがサーベルシュミットに襲いかかる。 ジェノサイドの強靭な牙がサーベルの背にあるブースターを1機もぎ取る。 その場に倒れこむサーベル。 その脇で勝ち誇った雄たけびを上げるジェノサイド。 「田舎ゾイドもここまでかい。・・・・なら消えろ!!」 背中のパルスレーザーに光が収束する。 「しね・・・うぉ!?」 トリガーを引こうとした瞬間、機体に衝撃が走った。 思わずその場に倒れこむジェノサイド。 「な、なんだ!?」 困惑の色を隠せないロック。 やっとの事で機体を起こすと目の前にはサーベルシュミットがこちらを 見据えている。 「!?まだ生きてやがったのか!」 先の衝撃は、サーベルの背に搭載されていたビームによるものだった。 止めをさす事に気がいってしまったロックは、サーベルのビーム砲が 自分を狙っている事に気づかなかったのだ。 そして間髪をいれずサーベルがジェノサイドに襲いかかる。 ふいをつかれたジェノサイドは、近距離ビームも使えずにただサーベルの 餌食になるしかなかった。 散々攻撃を喰らった後、サーベルシュミットのレーザーサーベルがジェノ サイドの首に食い込む。 「ここまでか。」 そう言い放つとアルフレッドは8連ミサイルをサーベルに向けて放つ。 それに気づいたミラルダは、ジェノサイドを投げ捨ててその場を離れる。 そしてそのままアルフレッドの乗るグレートセイバーへ向かう。 「相手が手傷を負っているのは残念だが、容赦するわけには行かない。」 そう言うと前進し始める。 徐々にスピードが増し、一気にサーベルシュミットと向かい合う距離となった。 お互い間合いを取ってにらみ合う。 そんな中ミラルダは、セイバーを見てどことなく懐かしそうな表情をみせる。 5分ほどにらみ合った後、最初に仕掛けたのは、ミラルダだった。 一気に間合いを詰めるとセイバーへ飛び掛る。 「・・・・・!!」 その俊敏な動きに反応が遅れるアルフレッド。 慌てて近距離ビームを放つが、当たらない。 サーベルのクローは、セイバーの背中のミサイルポッドを破壊する。 「・・・くっ!!」 ミサイルポッドを破壊されながらもその場を離れもう一度間合いを取るアル。 「・・・・・・・。」 間合いを取りながらあるフレッドは、何か違うものを感じ取っていた。 (何かいやなものを感じる。一体何なんだ・・・?) サーベルの背に何かとてつもないものを感じ取る。 しかしそれが何かはわからない。 そんな事を考えている間にサーベルシュミットが襲ってくる。 何とかかわすが、このままでは分が悪い。 (何とかして隙を突くしかないか・・・・。) しばらくするとサーベルの脇にあるフィンが赤白く光始めた。 「・・・・・・来るか。」 アルフレッドがそう思った刹那。 サーベルシュミットが、光の帯を引きながら猛スピードで、こちらに 向けて突進してくる。 「・・・くっ!!」 うめきをもらしながらもアルフレッドは、自分の機体をサーベルへと向ける。 止まっていてはだめだという動物的勘のようなものが働く。 ブースターが1基ないせいか、サーベルの突撃スピードが遅い。 「こちらの機体の運動性能はさほど落ちてはいない。・・・・・・やってみるか。」 サーベルの状態の見て何とかなると踏んだアルフレッドは、機体のスピードを 一気に上げる。 そして衝突寸前、サーベルシュミットめがけて水平ジャンプをする。 「・・・・・・・!!」 思わぬ行動にミラルダも避ける事もできず、鈍い音を立てて2機は衝突する。
ふいを疲れてしまい、ミラルダは気絶した。 アルフレッドは予期していたため気を失うことはなかったが、自機が思うよう に動かない。 「無理ばかりかけるな・・・・。」 そうつぶやくと笑って見せる。 ようやく機体を起こすとゆっくりとサーベルのほうへと歩み寄る。 よく見るとコクピットハッチが開いていた。 「衝撃で誤作動でもしたのか?」 確かめようと機体をコクピット付近に近づけようとした瞬間、 サーベルが急に起き上がり、セイバーの足へと噛み付く。 「パイロットは・・・・気絶している・・・・・!!暴走か!!」 必死に喰らいつくサーベルを何とか振りほどこうとする。 「あのままハッチが開いたままではパイロットに危険が・・・!!」 焦るアルフレッド。これだけの腕のパイロットを生かして捕らえたいと 考えていたのだ。 必死にサーベルを引き離そうとする最中、サーベルから表れる黒いもやの ようなものを見る。それは段々とある形のものへと変えていく。 「・・・・何だあれは・・・・・・し、死神か・・・・!!」 黒いもやは次第に巨大な鎌を持つ、どくろの姿へと変えていた。 「さっきから感じていたのはこれか・・・!!しかし一体・・・・。」 考えるまもなく機体に衝撃が走る。 「・・・・・今ごろ復活してきたのか!?」 ふと脇に目をやるとジェノサイドが、その姿を見せていた。 「さっきはよくもやってくれたな・・・・。」 とても低くどすの利いた声で言うロック。 今の一撃で、サーベルは完全に沈黙していた。パイロットも無事のようだ。 「しねや!!」 そう叫ぶと拡散荷電粒子砲の発射体制に入る。 「・・・・!!」 それを見てジェノサイドのほうへと向かう。 エネルギーチャージを経て光り始めるジェノサイド。 「跡形もなく消え去れ!!」 発射ボタンを押すのと同時に機体に衝撃が走った。 「な、なんだ!!何しやがる!!」 ジェノサイドに一撃を加えたのは、アルフレッドのセイバーだった。
頭部に体当たりしたため、発射方向がかなりずれてサーベルには当たらずに 地平をなめるように走っていく。 「戦闘能力がない敵に向かって何をしている!!」 怒りをあらわにするアルフレッド。 「捕虜と機体は改修する。お前はそこで寝ていろ。今応援を呼んで運んで もらってやるからな。」 そう告げるとサーベルシュミットのほうへと歩み寄る。 「・・・・・・くそったれ!!」 コンソールを思いっきりたたくロック。 さっきの一撃でコンバットシステムが、完全にフリーズしていた。 応援の手はずをしたアルフレッドは、機体を降りてサーベルシュミットの コクピットへと向かう。 「さっきの死神は一体なんだったんだ・・・・。」 不安がかすめながらもどんなパイロットなのか、胸躍る気持ちでいた。 そしてコクピットないで気絶しているパイロット見て目を奪われる。 「こ、この子がパイロット・・・前回の戦いもそうだったのか?」 あまりの事に衝撃が走り、動揺を隠せない。 眠るように座っている彼女を抱きかかえようとしたが、何か触るのがおこが ましく感じられた。 結局アルフレッドは、応援の部隊が来る1時間の間、彼女に触れる事ができず その場で立ち尽くしていた。 翌日基地に戻ってきたアルフレッドは、自室で待機していた。 ロックを止める際に攻撃したことに対してのおとがめは特になかった。 どうやらコーエル大佐がうまくもみ消したらしい。 あの戦いで捕虜となったミラルダは、現在基地内にある捕虜収容所に入れ られている。 基地に到着して数時間後に目を覚ましたが、何を言うでもなくただひっそり 部屋にあるベッドの上に座っていた。 基地内は美人の捕虜がつかまったという話で持ち上がり、収容所に人が押し 寄せた。 しかしあまりに人が押し寄せたために、コーエル大佐が立ち入り禁止令を 発布した。普通、めったにない現象である。 翌日の午後から尋問が始められたが、まったく話す気配がなく目もぼんやりと していて、何処を見ているか分からない。遅々として尋問は進まなかった。 そんな中、彼女の機体は修復が進められていた。 機体の脇で見守るようにたたずむのはアルフレッドだった。 「中佐、こいつは長い間人の手で修理した後がありませんよ。」 機体を見上げるアルフレッドに整備班の技師長が話し掛ける。 「それはつまり、全ての故障を自己修復で補っていたというのか。」 「そうなりますねぇ。装甲もあっちこっち自己修復でできたおうとつが見られ ますし。」 「という事はこれまでの行動は軍から離れた単独行動なのか・・・・。」 考え込むアルフレッド。 「しかし技術屋としては興味のわく機体です。」 うれしそうに言う技師長。 「ほう。どういうところが?」 不思議そうに問うアルフレッド。 「相手は最小限のエネルギーでいかに相手を倒すか考えたのがあの放熱フィン 兼ヒートブレードですよ。見ているだけで楽しいです。」 「なるほど。」 「そうそう中佐。コクピットにこんなものがありましたよ。」 そう言うとペンダントをアルフレッドの前にかざす。 「ペンダントだな。」 「ええ、どうもあのパイロットさんのもらしいので届けてもらえませんか?」 「ああ、承知した。」 そう言うとペンダントを受け取る。 「頼みましたよ。」 にこやかに言う技師長。 「アルフレッド!!」 二人の会話を打ち破るようにけたたましい叫び声が工場内に響き渡る。 「ようやく怪我が治ったみたいだな。」 にっとした顔で言う。 アルフレッドの視線の先には、頭部に包帯を巻いたロックの姿がある。 「ようやく怪我も治ったんでな!!この間の借りを返しに来たぞ!!」 アルフレッドを指差しつつ叫ぶ。 「この間の戦闘の事か。あれはどう考えてもお前の行動が間違っている。 だから修正みたいなもんだ。」 そう言い放つと再びサーベルシュミットのほうへと目をやる。 「PKの俺様にそんな口が利いて言いと思ってんのか!!」 そう叫びながらアルフレッドに殴りかかる。 アルフレッドはそれを見て何もしない。ただその場に立っているだけだ。 そしてロックの一撃がアルルレッドの頬を捉える。 「ざまあみやがれ!!」 一発が決まり浮かれるロック。 「で、それでお前の気は済んだのか?」 殴られたアルフレッドは何もなかったように涼しい顔をして言い放つ。 「!!て、てめぇー!!」 アルフレッドの態度に怒りが頂点に達したロックは、さらに殴りにかかる。 しかし今度はかわされ逆にみぞおちのあたりに一撃を喰らう。 「・・・・・が!!」 声にならない叫びが聞こえたかと思うとその場にうずくまる。 「て、てめぇ・・・・・・!!」 苦しみながらも這い上がり、なお襲い掛かろうとする。 パシ しかしロックの怒りのこぶしはアルフレッドには届かなかった。 なぜなら彼らの間に入ってきたセイロンがそのこぶしを手で受け止めたからだ。 「・・・・・やめろ。お前では無理だ・・・。」 そう言うと何事もなかったようにその場に去る。 「何でも自分がえらいと思うその態度、改めたほうがいいぞ。」 そう言い放つと技師長に整備の任せるといって、アルフレッドもその場を 去っていく。 「な、なめやがって・・・・・・!!」 その場で苦しみながらも憎しみにもにた言葉をはき捨てるロックだった。
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