告げるもの6
戦況はディーベルト側にとって悪くなる一方だった。 元々戦力的に劣ってはいたが、内部的な混乱も重なった為に指揮系統の混乱など が追い討ちとなった。 共和国軍は、勢いに任せて内壁内部にまで攻めこんでいた。 基地司令部にて守備隊総括をする司令官は、次々に入ってくる戦況報告に、眉を ひそめる。 「敵機動部隊、最終防衛ラインに到達。戦闘が開始されました。なおイオハル氏 のティガーも後方より敵部隊へに接触するとの事です。敵主力部隊も、間もなく 視認できる地点に現れる予定です。」 「・・・・・そうか。」 (帝国野郎が・・・・・。) アルフレッドの戦況を聞くと、そう心の中でつぶやく。 「ころあいを見てロバート・マッケンジー中尉の部隊を撤退させろ。町の外に避 難している市民の護衛としんがりをやってもらう。我々もここを引き払うから各 自いつでも出られるようにしておけ。囮としての役目は充分だ。」 「しかし、議員や市民の完全避難の確認も取れていませんが・・・・・。」 オペレーターの一人がつぶやく。 「我々の戦いはここだけでは終わらんのだ。これからの戦いの為に生き残る事は、 恥ではない。それに議員や市民が彼らに捕まったとしてもすぐに殺されるともお もえん。まず、北エウロペ大陸を攻略中の主力部隊と合流せねばなるまい。」 彼は、この劣勢を一時的なものと信じていた。 だが、それは大きな誤りである事をのちに知る。 「撤退して俺達にしんがりをさせるとはどう事か!?」 緊急回線を使ってモニターいっぱいに映った男性が、われんばかりの声で叫ぶ。 「オペレーターが話したとおりだが。」 「理由としては納得いくが、この戦場をほおりだして何故あんた達の護衛のしん がりを勤めなきゃいかんのだ!?他の部隊の連中はどうする気だ!?」 「残念だが、彼らにはここで共和国軍を食い止めてもらう。心配しなくとも、こ へは準備が出来次第すぐに戻ってくることになるさ。主力部隊には、ホイス大尉 もいるだろう。久しぶりに奴と共同戦線をはればいい。」 「・・・・・ちっ、仕方ない。しんがりをしてやるからさっさとそこから出て来 い。」 「悪いな。」 ニッと笑みを見せて言うと司令部内に撤収の指示を与える。 「あの手の男は丸め込みやすくていい。」 そう言いながら司令室を離れる。 ロバートの部隊は基地司令部付近にいた為、最前線の部隊に気付かれる事なくそ の場を離れた。 同じ頃、アルフレッドは共和国軍があけた穴を使って生き残った部隊とともに敵 部隊の後方へとつく。 後方から不意をついて相手の指揮系統を混乱させて各個に叩くつもりなのだ。 気配を消してうまく背後につく。 「いくぞ!!」 部隊長の声で、一斉に共和国軍に襲いかかるディーベルト軍。
不意をつかれた共和国軍は、予想どおりに散開しはじめた。 だが、各部隊との交信が徐々に途絶えて行く。 「・・・・・よほどの兵(つわもの)がいるのか。それとも機体性能の差か?」 目の前にいたシールドライガーを仕留めながら、徐々に音信不通となる見方機を 気にしてつぶやくアルフレッド。 10分も立たないうちにまわりにいた味方機からの通信がほとんど無くなる。 「おい、こんな所にさっき報告のあった新型機だぜ。」 「用心してかかれよ。すでに何機もこいつに食われているからな。」 シールドやブレード、そしてゼロに乗るパイロット達が、軽口を叩く。 目に見えるだけで5機のライガー。 他にも敵がいるかもしれないが、レーダーは戦闘中に巻かれたチャフなどですで に役にたたない。 唯一使えるのが熱センサーだが、それだけでは敵味方の判断はつかない。 逃げようにもすでに囲まれているようだった。 こうなると戦うしか方法はない。すぐさまそう判断したアルフレッドは、まず脇 から威嚇するブレードライガーを、レザークローで沈黙させる。 一瞬の出来事でどのパイロットもその事を理解して次の行動に移るのに数秒かか った。 アルフレッドはそのまま包囲網から抜け出すと、敵の背後を突いてビームを放つ。 しかし、ライガー達はそれに反応してかわす。 「まずはあいつからだな。」 かわしたライガー達の動きを見て、まずシールドDCSに目標をしぼる。 ティガーよりスピード差や反応速度の差で劣るシールドDCSは、あっという間 に餌食となる。 「くそ!!」 仲間がやられて苛立ちを隠せないゼロシュナイダーのパイロットが、ティガーに しかける。 必殺のファイブブレードアタック。一気に突進して切り裂く必殺技。 この技で何機もの敵を切り刻んできた。 しかし、今回はそううまくはいかなかった。 間合いを読んで、紙一重でかわすアルフレッド。 「なに!?」 必殺の一撃をかわされ、そのままビルに追突するゼロシュナイダー。 衝突で、上から巨大なガレキが向かってくる。 「うわぁぁぁぁぁ!!」 パイロットの叫びとともにガレキがシュナイダーを襲い、完全に動きを封じた。 「次に来る奴は誰だ。」 笑みを見せつついうアルフレッド。 一方、ミラルダと訓練部隊を引き連れたクリスは、シビーリから数キロはなれた 所を北に向かっていた。 「・・・・で、そのフィルバンドルって何処にあるのさ。」 かわり映えしない景色に飽き飽きして不満そうに言うクリス。 「ここから北に7、8日のところにあります。」 護衛機のツェルベルクに乗るパイロットが答える。 「ちょ、ちょっとそんなにあるの!?」 「大陸の端から端ですからね・・・・・。東西の端から端を行くことを考えたら まだましですよ。」 そういわれて大陸地図を思い浮かべる。 「・・・・・・・・・・・なるほど、そりゃまだましだわ・・・・。」 冷や汗を流しながら言うクリス。 ピーッピーッ 「ん?何?」 警報がなり、機器のチェックに入る。 『前方に反応があります。』 ツェルベルクのパイロットから報告が入る。 「一体どういうこと?2人ほど付いてきて。」 『了解。』 いぶかしげに思いながら反応のある方向に進む。 そこには数人の人が立っていた。 「君たちはミラルダ・リヴィルご一行様かな?」 「!?・・・・だったらどうする?」 「そうであればすぐにでも引渡しを要求させてもらう。」 「あんた達一体あの子に何のようがあるのさ!?」 「彼女にはいろいろと価値がありましてね。どうしても渡す気がないと言うので あれば・・・・。」d そういうとすっと手を上げる。 それに呼応して、砂煙とともにライトニングサイクスとツェルベルク姿をあらわ す。 「反応はこいつらだったの?それにしてもこんな所にサイクスってまさか・・・・。」 「残念ですが、あなたの考えているとおりではなくただの一企業の一研究員です よ・・・・。」 そう言うと彼自身、ツェルベルクに乗りこむ。 2機のサイクスと2機のツェルベルク、計4機が一斉に襲いかかってくる。
「ここは私達が・・・・。」 護衛についていたツェルベルクのパイロットが、そう言って前に出ようとする。 「かまわないよ、これ位の相手ならうち一人で充分だから。それに同じ色の機体 同士で戦ったら敵味方もわかんないっしょ。」 そう言うと彼らを押しのけて先頭に出る。 『クリスさん・・・・。』 通信機からミラルダの声が聞こえる。 「心配しなくてもいいって。これでも帝国じゃあそれなりに名の知れたパイロッ トだったんだから。いい機会だからうちの腕を見せてあげるよ。むこうでアルと 会った時に活躍ぶりをちゃんと話してよ。」 そう言うと笑みを見せて彼女を安心させようとする。 ミラルダには、シビーリに残って戦っているとは話していない。 彼女の体や行動を考えての事だった。 先頭を走るサイクスは、ビームを放ちながら向かってくる。 クリスもそれにあわせるようにサクスに向けてビームで応戦する。 ビームでけん制しながら接近すると、バスタクローを使ってすれ違いざまに攻撃 する。 足を引きちぎられて地面を勢いよく転がるサイクス。 「どうも見方機どうしでやるのは・・・・ねぇ。」 そう言いながら動きのとれなくなったサイクスパルスレーザー砲を叩き潰す。 「さすがに元帝国のエースパイロットだけあって強いね。これは研究材料として はもってこいか・・・・。」 そうつぶやきながら、ツェルベルクをもう1機のサイクスの後方につける。 間を置かずにクリスは、残った3機に向けて仕掛ける。 サイクスも負けじとイオンブースターで一気に加速し、すれ違いざまにレザーク ローで攻撃を行う。 クリスの乗る機体に衝撃が走る。 「結構早いじゃないの。」 驚きつつも、後方に去っていこうするサイクスに向けて、バスタークローに内蔵 されているビーム砲を放つ。 見事にビームが命中してひしゃげた音ともにサイクスが爆発、炎上する。 「二機のサイクスを・・・・隊長、油断できません。」 「だから帝国のエースパイロットだといったろう。あそこに誘い込むぞ。」 「了解。」 2機は、フューラーに付かず離れずある場所へと誘い込む。 「何する気なの?こいつらは??」 二機のツェルベルクの動きがおかしい事を察知して機体を止める。 「!?気づいたのか?2番機、牽制しろ。誘い込めよ。」 「了解。」 「向こうに廃屋がある・・・・誘い込むつもりだったのね。」 地図を見ると巨大な建物が映し出されていた。 ゴゥ・・・ 機体の周りにビームが着弾し、機体がゆれる。 「くっ!どうしても誘い込む気ね・・・・。」 機体を急発進させて攻撃をかわす。 敵の牽制に廃屋に誘い込まれるクリス。 「結局連れてこられた・・・・・情けない。」 そういいつつ、敵の攻撃をかわすために廃屋の屋上に飛び乗る。 「いまだ!!」 そう叫ぶとビームを廃屋に攻撃を集中させる。 「なに!?」 ビームを受けた廃屋は、崩れはじめバーサークを巻き込んで崩壊する。 「きゃぁぁぁ!!」 クリスの叫びとともにバーサークがガレキに飲み込まれていく。 「よし、確認しろ。」 命令を受けて確認するもう一機のツェルベルク。 「完全に埋まったかな・・・・お、いました。敵は、上半身だけ姿をさらしてい ます。」 「よし、慎重に近づいて、パイロットを回収しろ。」 『了解。』 ゆっくりと近づくツェルベルク。 コクピット付近にまで近づいた時、急にバーサークが動き出してあたり一帯のガ レキが不安定になってツェルベルクの動きを鈍らす。 そして、一気にブースターを全開にしたバーサークは、ガレキの中から抜け出す。 抜け出した瞬間にガレキに埋もれつつあるツェルベルクに対してバスタークロー を突き刺す。 「くそぉ!!」 突き刺したツェルベルクを軸に、体勢を整えて空中に飛び出す。 「あと一機は・・・。」 辺りを探すクリス。 そこに死角をついてスマッシュテイルの一撃を放つ、もう一機のツェルベルク。 バーサークの機体に衝撃が走ると同時に、勢いよく地面に叩きつけられる。 「あたまいたーい・・・・。」 「名パイロットもここまでですな!!」 崩れた廃屋から飛び降りる研究員の乗るツェルベルク。 「あまいのよ!!」 一気に起き上がると、ツェルベルクに向かったジャンプする。 「空中で接近戦をする気か!?」 慌てて身構える。 しかしよく見ると、バーサークの機体が青白く光っている。 「しまった荷電粒子砲か・・・・・!!」 彼が気づくのと同時に、バーサークから放たれた荷電粒子はツェルベルクを包み 込むと、機体を消滅させた。
「さて、また旅路に出ますか。」 そう言うとミラルダのいる方へと合流するのだった。 2機のライガーゼロが、ティガーの前に立ちはだかっていた。 2機は連携しながらティガーに攻撃を仕掛けてくる。 「ルーア、タイミングを間違えるなよ。」 「ディニー、そっちこそ間違えないでよ。」 並走してティガーに近づく2機。 なにかしら作戦があると読んでその場を離れるアルフレッド。 それを追いかける2機。 次第にディニーの乗るゼロがスピードを上げてティガーに追いつくとレザークロ ーで仕掛ける。 それをあっさりと避けるが、間髪を入れず今度はルーアのゼロが攻撃を仕掛けて きた。 とっさに避けるが右肩の装甲が引き裂かれる。 そしてまた間を入れずにディニー機の攻撃。連続で行われる2機の攻撃が、徐々 にティガーの動きを封じて行く。 「厄介な戦法だが、それでは止めはさせないぞ。」 ちょうどルーアのゼロが攻撃を仕掛けてきた瞬間に機体を回転させて、ルーアの ゼロを後ろ蹴りして突き飛ばす。 「きゃぁぁぁぁ!!」 吹き飛ぶルーア機を何とかかわしながら再度攻撃を仕掛けるディニー。 しかし、今度はその攻撃を待っていたティガーのストライククローがディニー機 を襲う。 「うわぁぁぁ!!」 ダメージを受けて地面を転がる。 「くそぉ!!・・・・!?システムフリーズだと!!これぐらいでへこたれんな よ!!」 くやしそうに叫ぶディニー。 2機のライガーは、ダメージとシステムフリーズで動けなくなっていた。 「そろそろこの場を離れてもいいだろう。これ以上いると合流がきつくなる・・ ・・。」 2機のようすを見て逃げ道を探り始めるアルフレッド。 そこに何処からともなく耳鳴りが聞こえる。 ヒュゥゥゥゥ・・・・・・・・ ズゥゥゥ・・・・・・・・ン 「!?砲撃・・・・外からか!?」 町のあちらこちらに砲弾が舞い降りて、爆発と煙を発生させる。 ようやく近くまで来た主力部隊が、シビーリに向けて砲撃を開始したのだ。 この状況を利用して撤退しようと機体を反転させたその時、ビルの隙間に人影を 発見する。 大きなぬいぐるみを抱いた女の子だ。 なくわけでもなくただこちらをじっと見ている。 よく見ると彼女の足もとに人が倒れていた。 全く動かないようするを見るとどうやら死んでいるようだった。 「・・・・・・・・。」 アルフレッドは機体を彼女に近づける。 ヒュゥゥゥゥ・・・・・・・・ズゥゥゥゥン・・・・ 「・・・・ちっ!!」 上空から聞き覚えのある音を聞いて、ティガーの機体でこれから起こるであろう 爆風から彼女をかばう。 辺り一帯を砂煙と熱風が襲う。 爆風がおさまると、機体を降りて女の子に近づく。 「・・・・危ないからここを離れるんだ。」 「・・・・・・・・。」 女の子はなにも反応を示さなかった。目もうつろだ。 おそらく目の前で起きた出来事が、彼女をそうさせているのだろうと思った。 よく見れば所々怪我をして血が流れていた。 そんな彼女を見て応急処置をした。 見た目よりそれほど対した怪我ではなかった。 彼女の衣服についた血のほとんどは、他人の血のようだった。 ひょっとしたら目の前に倒れている母親の血なのかもしれない。 そう思うと、あまりにも悲惨な光景を少女は見てしまったのではないかと思った。 アルフレッドは、なにも言わずにそっと彼女の手をとる。 「・・・・・・・・いくか?」 長い間の後にコクリとうなずく少女。 「それじゃあお母さんとはここでお別れしなければならい。それでもいいなら最 後にお母さんと別れの挨拶をするんだ。いいな?」 すると女の子は、物言わぬははをじっと見詰めて無言のまま母親に手を振る。 「・・・・時間がありませんので、丁重に葬る事は出来ませんが、必ずあなたの お子さんを守ります。」 そういうと、少女の手を引いてティガーに向かう。 アルフレッドの手を強く握りしめた。 それに気づいたアルフレッドは、女の子を抱きかかえると、そのまま機体に乗り こむ。 なんとなしにそうしてやりたかったのだ。 女の子も嫌がらなかった。 女の子を補助シートに座らせると、機体を起動させて町の外へとむかう。 「さて、名前を聞きたい所だがそんな場合ではないな。」 機体を走らせながらそう言う。 すると、聞きなれない駆動音ときしみがティガーから聞こえる。 先ほどの爆風でダメージを負ったようだった。 だがそんな事にかまっているほどの余裕はなかった。 まず、この場から離れて助け出した女の子を、安全な所へと運び出してやりたか った。 しかし、そうはさせまいと共和国軍が立ちはだかる。 都市内部にいたディーベルト軍をあらかた片付けたようで、掃討作戦を行ってい るようだ。 あちらこちらにディーベルト側のゾイドの残骸と、遅れて到着して来た共和国軍 の主力部隊所属のゴドス等が見えた。 とにかく今は逃げる事だけを考えていた。 子連れで戦闘は出来ない、そう考えたからだ。 しかし、逃げれば逃げるほど、追撃してくる共和国軍の数は増えていく。 機体のダメージは予想外に蓄積しているようで、思った程のスピードがでない。 (この子の事を考えると、降伏と言う手もあるが・・・・・・・・。) その時、アルフレッドは約束を思い出しす。 頭の中で“あの子の為にも絶対帰ってきなさいよ!!”と言う言葉が響く。 (どうも俺はしがらみの中で生きるのが好きのようだ・・・・・・・・。) ふとそう思った。 そんなアルを女の子は不思議そうに見る。 「ん?」 「・・・・・・・・。」 彼の事に興味に見せるが、なにもはなそうとはしなかった。 ひょっとしたら話す事ができないのかもしれない。そう思った。 すると、手を上げると人差し指で空中に何かを描く。 「く・・・れ・・・せ・・・あ・・・・そうかクレセアと言うのか。いい名前だ。」 アルフレッドの言葉に笑みを見せるクレセア。 追手は街中を巧みに走り抜けて何とか振りきった。 「後もう少しの辛抱だ。ここを抜ければ・・・・・・。」 だが、町の外あるはずの自由はなかった。 外の外壁沿いを共和国軍が取り囲んでいたのだ。 「!?」 入り口の所で足を止めている間に後ろからも共和国軍が迫ってくる。 「ここまで来て・・・・・・・・。」 そこに上空から現れた数機のファルゲンとともに街中に息を潜めて隠れていたで あろうディーベルト軍が一気に突入を開始した。 「一機でも多く本隊と合流するんだ!!」 そんな通信が聞こえた。 「・・・・早々諦めるわけには行かなかったな。クレセア、しっかりつかまって いろ。」 うなずくクレセア。 「いい子だ。」 そういうと機体を共和国軍の中へと向けた。 機体のきしみもお構いなしに、まず目の前にいたカノントータスを踏み台に高く ジャンプすると、共和国軍の中へ突っ込んで行った。
あちらこちら装甲が剥がれ傷ついていたが、その戦い振りはまさに鬼神のようだ った。 だが自分も傷ついているはずなのに、味方を助けながら戦いを切りぬけて行く様 子は、太陽のようにまぶしく希望の光のようだった。 のちにこの戦いで、包囲網を破って本隊に合流したパイロットが語った言葉だっ た。 これ以後、アルフレッドの消息を知るものはいない。 共和国軍の戦果報告にもティガーの報告は書かれては入なかった。 そしてこの日を境にディーベルト連邦は崩壊。 数週間後、新たにヘリック共和国、西エウロペ大陸軍政府が発足した。 しかしこの軍政府の設立は、西エウロペ大陸に秩序をもたらすものではなかった。 初代監督府代表のコクン准将は、旧ディーベルト連邦の高官達への制裁と原住民 に対する抑圧、さらに軍需の拡大を図り始めた。 それらは全て中央大陸にある中央政府の意向を無視するものであり、代表のルイ ーズ大統領の再三にわたる忠告も無視しつづけている。 その後、占領を免れた都市国家によるエウロペ同盟の発足、それに伴う軍政府に 対する抵抗運動とその掃討戦が開始されるが、それはまた別の話である。
後書き33 バトストMENUに戻る 前の話へ行く    次の話へ行く