外伝
サイレンがけたたましく鳴り響く。 それと同時に基地内から1機のゾイドが飛び出ていく。 サーチライトが所在を突き止めるために当たり一体を照らすが見つからない。 そうこうしている間に施設の数ヶ所で爆発が起こる。 「追え!!逃がすな!!」 「はっ!!」 指揮官の命令でパイロットが、次々と自分のゾイドへと登場する。 そして何台ものゾイドが咆哮を上げて起動していく。 しかし、起動した機体はパイロットの意思とは関係なく、施設内を動き回ったあげく、 同士討ちを始めたのだ。 「消火だ!!ゾイドの動きを止めろ!!拘束用ワイヤーをもってこい!!」 基地内に動揺が走り、逃亡者を追うどころの騒ぎではなくなっていた。 南に下るグスタフがあった。 特に貨車をつないでいるわけでもない。 「決意してグスタフで行くと言ってみたものの、やっぱり遠いわね・・・。」 グスタフを運転しながら一人の女性がつぶやく。 年は16,7歳に見える。 グォングォン・・・・・。 グスタフが急に異音を鳴らせて速度を落としていく。 「?」 不思議に思いながらアクセルを踏むがスピードは落ちるばかりである。 最後には停車してしまった。 「な、なんて所で・・・!!」 愕然とする女性。 周りを見回すとあたりに人の気配を感じさせるものはない。 ただ、荒涼とした大地と山が見えるだけだ。 「どうしよう・・・・。」 彼女は機械いじりがまったくできない。今はその事をただ呪うだけだった。 「ミラルダに乗せてもらえればこんな苦労はなかったんだけどなぁ・・・。 まったくあの子はどこに消えたんだか。」 サラ・ミランは、そうぼやきならコンソールを叩くが、状況は変わらなかった。 しばらくすると眠気が襲う。 クォォォォン!! 「な、何!?」 突然聞こえた咆哮に飛び起きる。 キャノピー越しに小型のゾイドがじっとこちらを見つめている。 ドラゴン型の特徴ともいえる背中から生えた翼が印象的だ。 それを見て驚くが声にならない。 「ラルターク、誰かいた?」 遠くから聞こえる少女の声を聞いて小型のゾイドは、声のする方へ咆哮すると グスタフから飛び降りる。 「だいじょーぶですか?」 陽気な彼女の言葉にただただうなずく。 そして現われた少女の言われるまま、ついていく。 案内された先には小屋があった。 少女は勢いよく小屋のドアを開けると、大きな声を張り上げている。 小型のゾイドもそれに習うかのように勢いよくは入っていった。 「何じゃと?どらどら・・・。」 奥から老人の声が聞こえたかと思うと、小屋からその老人が出てきた。 「ほーう、嬢ちゃんのような年の子が、どうしてグスタフで一人旅なんぞ を・・・・・・・ご両親とはぐれたのか?。」 「・・・・・・私はこれでも22なんですけど・・・・・。」 怒りを抑えながらそういうサラ。 「・・・・・・・うそじゃろ。てっきりあのこと同い年ぐらいかと・・・。」 目を丸くして言う老人。 「おおまじだって。」 かなり怒りが込み上げているのが見て取れた。 「とにかく中に入ってくれ、グスタフはわしが動かせるようにしやるよ。」 そう言うと老人は、グスタフの方向へと歩き出す。 「おねーちゃんお茶を入れたから入ってよー。」 「あ、ありがとう。」 「この小型のゾイドは何?」 「ラルターク?ラルタークはラルタークだよ。」 何でそんな事を聞くのという顔をして答える。 「でもこのサイズの野性ゾイドって見たことないし・・・。」 「ふーんそうなんだ。ラルタークはこの先の遺跡にいたんだよ。最初は私を見 てびっくりしておびえていたけど、すぐに仲良くなれたんだよ。」 「遺跡?こんな所にまだそんなものが・・・・。」 この西エウロペ大陸には、いくつもあるがたいていはすでに盗掘されているも のばかりである。 「それにしてもあなたそのラルタークと話せるの?」 「うんはなせるよ。」 「すごいね。」 彼女の言葉を聞き、彼女の頭には一人の人物が浮かぶ。 「興味あるんだったら見に行ってみる?遺跡に。」 「いいの?」 「別にかまわないと思うよ。おねーちゃんいい人みたいだし。」 そう言うとにこっと笑う。 「こんなところじゃあ見つからないわよね・・・。」 その遺跡は足場の悪い場所をいくつも越えたところにあった。 しかも洞窟の中にである。 遺跡の真ん中に一機のゾイドが飾られている。 「何このゾイド、化石化している?」 大きく開かれた翼、そして頭部から突き出た角、側面には2機の大型砲が見え た。 「おじいちゃんは、この子の事をエビルペガサスって言ってたよ。」 クォォォォン ラルタークの咆哮が、エビルペガサスを見入っていたサラを現実に引き戻す。 「エルミア、他人をこんな所に連れて来てはいかん。」 「やっぱり。」 サラはそうつぶやく。 「おぬし、ディーベルトの人間なんだな。悪いが、早くここから出て行ってく れんか。」 「直してもらえるの?」 「もう直してある。」 そう言うと二人を連れて遺跡を出る。 「あの遺跡のペガサス型ゾイドは一体何なんです?」 歩きながら老人に尋ねるサラ。 「あれは見てのとおりの化石化したゾイドだよ。もう動くことはないだろう。」 「じゃあエルミアがつれているあの小型ゾイドは?」 「わしには何なのかは分からん。ただのゾイドでないこと確かだろう。」 後ろをついてくるラルタークを見ながら言う老人。 「後おじいさん、あなたか学者か何かでしょ。何でこんなところに。」 「まぁな。あの子を連れて世捨て人になっただけじゃよ。」 「あの子を?」 「ちとしゃべりすぎたな・・・・。」 笑いながら言う老人。どうやらサラのことに関しては信用しているようだった。 「ほんとに。」 そう言うと老人の言葉を聞いて苦笑するサラ。 「一つ言っておくが子この事とわしらのことは・・・。」 「誰にもしゃべらないわよ。命の恩人だものね。」 そう言うとふふっと笑う。 そしてサラ達が小屋に入ろうとしたとき、あたり一体の雰囲気が変わる。 「・・・・博士、まさかこんな所に済んでいたとは。ずいぶん探しましたよ。」 小屋の中には数人の男たちがいた。 「あなた何者!?」 サラが老人とエルミアをかばうように前に出る。 「お前にはなすことは何もない。」 そう言うとサラ達に銃を向ける。 それを見て、手を上げるサラたち。 「戻っていただけますね。」 そう言うと不敵な笑みを浮かべる男。 「にげろ!!」 突然そう叫ぶと老人は、一気に男たちに飛びかかる。 「おじいちゃん!!」 「エルミア!!こっちよ!!」 そう言ってエルミアの手を引っ張って小屋を出るサラ。 その後小屋から銃声が響く。 「待て!!止まらんと撃つぞ!!」 そう言いながらサラ達に向けて発砲する男達。 「もう撃ってるじゃない・・・!!」 そうつぶやきなら走る。 「おっとここまでだ。」 唐突に現われた男がサラ達の行く手をふさぐ。 「もう逃げられないぞ・・・うん?何だそのゾイドは?」 クォォォォン 咆哮を上げるとラルタークは、男に向けて体当たりをする。 「ぐあぁ!!」 男も発砲して対抗したが、銃が通じるはずもなく吹き飛ばされる。 「あのゾイドをおとなしくさせろ!!捕獲ネットを!!ゾイドも出せ!!ロフ テークNo.23は殺すな!!もう一人はどうとでもしていい!!」 「私はどうでもいいての!!これでも政務官なのに!!」 サラは無意識に遺跡のほうへと向かって逃げる。 その後方をガイサックやイグアンが追いかけてくる。 「わっ!」 足をとられて転ぶエルミア。 「エルミア!!」 助け起こすサラ。 「おとなしくしてもらおうか!!」 銃口を向けるゾイド達。 「何だ!?このちびは!!」 機体の振動に気づくパイロット。 ラルタークが必死に体当たりをしていた。 「ちびのくせに!!」 そう言うとパイロットはラルタークを弾き飛ばす。 岩にたたきつけたられるが、必死にゾイドを止めにかかる。 何度も投げ飛ばされ、次第に動きが取れなくなるラルターク。 最後地面に叩きつけられて動かなくなる。 「ラルターク!!」 エルミアの叫びがあたり一帯に響く。 クォォォォォォォォン!! とうぼえと共にラルタークは光の弾となって遺跡のほうへと向かう。 「何だ!?」 そのまばゆい光に誰もが気を取られる。 そして遺跡のほうで光の柱が天に上ったかと思うと、そこから一機のゾイドが 現われる。 「あれはさっきのゾイド・・・。」 自分達の上空を過ぎ去るゾイドを見上げるサラ。 「見慣れないゾイドが現われたぞ!!応援を出せ!!敵は大型ゾイドだ!!」 パイロットの言葉に合わせてセイバーやアイアンコングが後方から踊り出る。 天をかける黒いペガサス型ゾイドは、一気に急降下すると瞬時に小型ゾイド群 を粉砕した。 「なんて起動力だ!!近づいた時を狙え!!」 サイド接近をかける黒いペガサス。 それを狙って一気に集中砲火をかける。 しかし信じられない機動力で避けていく。 そして両脇のバスター砲が火を噴く。 「何!?」 パイロットたちがその光に気づいた時には、自分達は機体と共に蒸発していた。 バスター砲の攻撃で、一気に4機を血祭りに上げると地上へと降りる。 「飛行ゾイドが、地上で地上型ゾイドに勝てると思うな!!」 地上に降りたゾイドに向けて襲い掛かる。 自慢の豪腕がペガサス型ゾイドに襲い掛かる。 しかしそれを難なくかわして胸にある衝撃砲で仕留める。 間をおくことなく一気にセイバーとライトニングサイクスに向けて走り出す。 「あれ、ほんとうに飛行ゾイドかよ!!300km以上で走ってやがるぞ!!」 「に、にげ・・・・・・。」 パイロットの言葉が終わる前に部隊はバスター砲と頭部に装備されているサン ダーブレードが唸りを上げていた。 戦いが終わり、ペガサス型ゾイドがゆっくりとサラ達のところへ来る。 サラは、近づいてくるゾイドに警戒する。 「ラルターク!!」 うれしそうな声を上げてゾイドに向け走るエルミア。 「あれがラルターク?どういう・・・。」 「ラルタークそのものじゃよ。あの化石化したゾイドと合体したんじゃろ。」 「お、おじいさん!!い、生きてたの??」 「備えあれば何とやらという奴じゃよ。」 そう言うと防弾チョッキを見せる。 「むちゃくちゃ用意がいいのね。そのあたりあとでゆっくり聞かせてもらいま しょうか。」 むっとした顔で言うサラ。 翌日、テーブルを囲んでサラと老人が話をしていた。 エルミアは、ラルタークと無邪気に遊んでいる。 「奴らはとある研究機関の奴らでな。人とゾイドをおもちゃにするやつらじゃ よ。あの子もその犠牲者じゃ。まああの子の場合は、それをうまく生かして生 きているみたいだが。」 そう言うと老人はやさしい瞳を見せてエルミアを見る。 「もうここにはいられないわね。」 「何、ラルタークとあのゾイドがいる限り何とかなるじゃろ。」 「そうね。」 そう言うと黒きペガサスを瞳にうつす。 「それじゃあ騒動もおさまったみたいだし、私はこれで。」 そう言うと小屋を出ようとする。 「ああお前さんもしっかりと自分の役目を果たせよ。」 にっと笑う老人。 「あ、おねーちゃんもう帰るの?」 去ろうとするサラを見てサラのところまで走って来る。 「私にもやることがいっぱいあるからね。」 「ふーん、そうなんだ。またあおうね。」 笑みを見せて大きく手を振る。 「ええ。」 笑みをこぼして手を振るサラ。 そしてまた旅に出るのだったシビーリに向けて。 外伝後書き1 バトストMENUに戻る 次の話へ行く