外伝2 ニクス2
2001年7月にニクス大陸に上陸したヘリック共和国軍は、徐々にではあるが、 確実に勢力圏を広げつつあった。 東の最前線では、レイフォース師団が破竹の勢いでガイロス帝国首都、ヴァルハラ へと迫っていた。 西の拠点であるチェピンは、ガイロス帝国の旧首都ということで西部に点在してい た海岸守備隊が集結しつつあった。 そしてその防衛のためにしかれた最前線防衛陣より数キロ後方に第2防衛陣がある。 前線が少し遠いという事もあって宿舎では談笑が行われていた。 仮宿舎で同僚と話す兵士たち。 体を動かすたびにパイプベッドがきしむ。 「イヤー今日も共和国の連中しつこかったぜ。」 「この間なんか穴を掘って攻撃してきたらしいな。」 「ああ、びっくりしたぜ、あんな手を使ってくるとはな。それにしてもここはのん びりしてていいよな。」 「最前線じゃなく、あくまで野戦病院兼補給基地でしかないからな。」 口々に言う彼らの表情には戦争に対する恐怖など見えない。 「今のところこっちに来ている共和国軍は、戦略爆撃機のサラマンダーが配備され てない事もあって、ここまで攻撃するほどの余力がないのさ。」 しかし、その言葉を覆すかのように宿舎を振動が襲う。 「なんだ!?」 「敵襲か!?」 「数少ない空軍戦力を使って、ここを攻撃してくるなんて無謀な事ありえるはず が・・・・・。」 慌てふためく兵士達。 基地司令部室では突如として行われた攻撃で混乱していた。 「レーダー班は何をしていた!!」 司令官の怒号が響く。 「それが攻撃が行われる直前からレーダーが使えなくなりまして、その報告が来る 前に攻撃が・・・・・。」 悲痛な顔を見せながら報告する通信兵。 「くっ!!共和国の連中め・・・・・。」 苛立ちの隠せない司令官。 「敵機発見、機種は・・・・・恐竜タイプのもようです。」
「恐竜??ゴジュラスか!?」 「いえ、大きさが違います、我が軍のジェノザウラークラスのようです。新型のよ うに思われます。」 「共和国の開発能力は底なしか・・・・。」 言葉と共に深いため息を吐く。 この暗黒大陸戦争が始まって数週間のうちに共和国軍は、新型ゾイドを続々と投入 していた。 エウロペ戦争時では、エウロペの野生ゾイドが豊富に手に入ったために多くの新型 ゾイドを投入できたが、現在ではエウロペ大陸の野性ゾイドの入手が困難状態に陥 ったために、開発速度が極端に遅れている。 そして何より、プロイツェンの命で極秘に結成されたアイゼンドラグーン師団に、 新型ゾイドを優先的に配備させていたため、ガイロス帝国軍が公式に開発を進めて いたのはライガーゼロ・イクスのみという状態だった。 「敵機、モニターに出します。」 オペレータの声と共にメインモニターに敵の姿が映し出される。 「あれが敵か・・・・・あの機体マークは・・・・・!!」 薄紫の装甲に刻まれたマークを見て驚きを隠せない司令。 「あ、あの赤いドラゴンのマーク・・・・・・間違いない、あの機体はアイゼ・・ ・・・・。」 その言葉終わる前にオペレータ叫び声多響き渡る。 「敵から高出力荷電粒子砲が・・・・・・。」 「何ぃ!?」 数秒もたたないうちに司令室が光に包まれ、次の瞬間には司令室が吹き飛ぶ。 その後、通信手段をたたれた基地は、1時間も経たないうちに壊滅した。 「第2防衛陣が壊滅したとはどういことですか??」 最前線基地である第1防衛陣にいたルーン・スレイブは、基地司令から第2防衛陣 壊滅の知らせを聞いて驚愕した。 「言ったとおりだ、音信不通となったために偵察機を飛ばしたのだが、暗闇に浮か ぶ炎だけがが見えたそうだ。」 「しかし、あそこも1個大隊なみの戦力が配置されていたはずでは・・・・。」 「そのとおりだ、だが基地施設も含めて壊滅した。生存者はいないそうだ。」 「・・・・・・わかりまた。前方だけでなく、後方警戒も厳重に行ってきます。」 「もうすでに命令を出している、君をここに呼んだのはチェピンに戻れとチェピン 司令部から言ってきた。」 「この時期に戻れとは・・・・。」 「例の機体の再調整とテストのためだそうだ。こんな事態になっているだけにすぐ さま使えるようにしたいのだろう。」 「分かりました、それはすぐに発つ準備をいたします。」 そう言うと敬礼を行って司令官室を出る。 同じ頃、彼らと対峙して陣取る共和国郡の作戦会議室は、昨夜の出来事に頭を悩ま せていた。 「昨日の件ですが、上空より偵察部隊が撮影した航空写真が出来ましたので、ご欄く ださい。」 その言葉とともにスクリーンには、昨日の帝国軍の悲惨な姿が映し出されている。 「一体誰がこのような事を・・・・我々の感知しない特殊部隊が突入したのか?」 「いやそんなはずはない。特殊部隊が行う作戦にしては少し派手すぎる。」 士官達の議論は絶えない。
「そう言えばウルトラがトライアングルダラスを抜けるのを、手伝った帝国の部隊が いるとか言ううわさを耳にした事がある・・・・上陸する際も帝国軍守備隊が壊滅 していたという話だ。ひょっとすると彼らなのかもしれない。」 「そのような話しはやめたまえ、あくまでうわさはうわさだ。それにガイロス内での 反政府組織があってもおかしくはない。我々にだって抱え込んだ問題は山のように あるからな。」 いさめるように言うナトゥ少将。 「はっ。」 「とにかく、後方支援基地を失って後ろ盾が無くなったのは確かだ。好機が訪れた といってもいい。攻めるなら今だろう。」 「それでは当初予定の爆撃隊到着を待っての総攻撃は・・・・。」 「状況が変わった以上、いつ来るかわからん爆撃隊より今目の前に現れたチャンスを いかに上手く利用するかだ。いや多分待っている間に、敵は体制を整えて攻撃の機 会を失ってしまうだろう。今しかないのだよ。今晩夜戦を仕掛ける。」 「今晩ですか!?いくらなんでも早すぎます。」 「そうです、いくらチャンスとはいえそうあからさまに行動しては敵に気づかれてし まいます!!」 士官達が口々に意を唱え始める。 「今晩といっても夜が明けるか明けないかの時間だ。それまでにパイロット達には休 息を取らせろ。」 そう言うと席を立つナトゥ。 彼にはこのチャンスを今晩中に生かして、一気にチェピンに近づきたいという気持 ちが先行していた為、このような無茶な行動に走らせた。 反対意見を唱える部下を後にして作戦司令室をあとにした。 彼の部下達は、不満を持ちながらも作戦を練り始めた。 一度言い出したらてこでも動かない事を誰もが知っていたからだ。 そんな彼を止める事が出来るのは、副官のマローニ・ロッフェンだけなのだが、現 在彼は、エントランス基地で部隊への補給などの交渉に出かけていなかった。 一心不乱に練り上げられた作戦は僅か半日で出来あがり、各部隊ともに準備にはい る。 「なんだか急にばたばたしだしたよな。」 格納庫内をあわただしく動きまわる兵士を見ながらそうつぶやく。 「今が攻め時だと判断したんでしょう。それにしても危うい作戦です。前回の作戦で 使ったトンネルを使って、再度侵入するなんて・・・・・。」 今回の作戦に対して不満を漏らすジェン。 「今回は総攻撃だ。トンネルからの侵入もダミーだしな。」 「二人とも私語は慎みなさい。移動するわ。」 二人の会話に割ってはいると、そう告げて通信を切る。 「へぃへぃ・・・・。」 そういうとベアファイターを起動させてあとに続く。 もう一度土臭いトンネルの中に入るとじっとタイミングを待つ。 トンネルの先は、撤退する際に仕掛けた爆弾によってほとんど埋まっており、敵基 地近くまでは新たにトンネルを掘ることとなった。 そして夜明け前にゴジュラスガナー4機が、ゆっくりとその姿を格納庫から現す。 敵基地と自陣との中間地点近くまで来ると、おもむろに発射体制に入る。 少し前方にはカンノントータスの支援砲撃部隊が、すでに攻撃準備に入っていた。 次の瞬間、4機のガナーから鈍い爆音とともにキャノン砲が放たれる。 それにあわせるようにカノントータス部隊も次々と砲撃を開始する。
砲弾は次々と基地内に吸い込まれていく。 しばらくして、敵基地のある方向からレドラーの編隊が現れる。 「敵編隊を確認。迎撃に入ります。」 その通信とともにレイノス隊がレドラー迎撃に向かう。 向かってくるレイノスを見るとすぐさま爆弾を捨てて、ドックファイトに入る体制 に入る。 その間にも基地に向けて砲弾が飛ぶ。 炎が舞い上がり、夜空を赤く染め上げていく。 「どんどん打ちまくれ。土の中にいるやつらの出番がないくらいにな。」 支援砲撃隊の隊長が浮ついた声で言う。 そこに自分達に向かって放たれるビームが無数に飛んできた。 「な、なんだ!?敵にしては方向が・・・・。」 正面から来ると思っていた砲撃が側面から飛んできたために、慌ててレーダーを見る。 数機の未確認ゾイドが映っている。 機種検索をしてもアンノンとしか答えが返ってこなかった。 「お前らは正面に集中してろ。62小隊、支援を頼む。」 そういうと、ゴジュラスの機体を向けると、地響きを立てながら走り出す。 そのうちの1機が、高速で、こちらに向かってくる。 「たった1機で向かってくるきか!?」 走るゴジュラスの脇をガンスナイパーやライガーなどが通り過ぎていく。 走りながらゴジュラスキャノンを放つが、敵機は難なくよける。 砲撃がやむのと同時に近づきつつあった第62小隊が交戦に入る。 「な、なんだこの機体は・・・・・ジェノザウラーじゃないぞ!?」 「なんてスピードだ・・・・うわぁ!!」 交戦から数分後、煙と炎が巻き起こる先にいるはずの第62小隊の通信が途絶える。 「や、やられたのか・・・・。たった数分で・・・・。」 驚きと恐怖に背筋が凍る気分になる。 暗闇に光々とたかれる炎の中から白い機体が飛び出すと、ゴジュラスガナーに向か ってくる。 「くっ!!」 近づいてくる機体につかみかかろうとする。 しかし、簡単にゴジュラスの手から逃れると、その場から姿を消して視界から消え る。 「ど、どこに消えた!?」 辺りを見回すが見えない。 しかし、コクピット内には警告を促すアラームが鳴り響いてやまない。 相手を見失っている間に白い機体は、いっきにゴジュラスの懐に入っていた。 「う、なんだこいつは・・・・!?」 次の瞬間、大きな衝撃とともに振動がゴジュラスのコクピット内を揺らす。 次々と鳴り響く警告音。 そして次々と爆発が起き、コクピット内を火と煙が覆う。
パイロットを失ったゴジュラスはどうっと倒れる。 それを見ると白いゾイドはおもむろに前かがみの体制になる。 その先には支援砲撃隊が見える。 光が集中したかと思うと、一気に放たれる。 その光は拡散して支援砲撃隊を襲う。 次々と煙と炎を上げる支援砲撃隊。 「何だ今の光は!?」 目の前で起きた出来事に驚きを隠せないナトゥ。 「接触してきた不明機からです。」 オペレータがせわしなく手を動かしながら答える。 「今の光は拡散タイプの荷電粒子砲のようです。支援砲撃部隊は、今の砲撃で70% と近くが行動不能に・・・・。」 悲痛な報告がナトゥのもとに次々と報じられる。 「拡散タイプの荷電粒子砲だと・・・・・。ライガー隊を向かわせろ!!作戦を失敗 させてはならん!!」 「・・・・ちょっと待ってください。敵未確認ゾイド、撤退していきます。」 「一体どういうことだ・・・・・。」 困惑するナトゥ。 「どうしますか追撃隊を出しますか?」 オペレータが考え込むナトゥに尋ねる。 「・・・・・・いや引いてくれたのであればほうっておけ。ただし監視だけは怠るな よ。」 「了解しました。」 しかし、支援砲撃隊のほとんどを失ったナトゥ師団は、苦しい戦いを強いられるの だった。
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