絶望と奇跡
「第2陣爆撃を開始!!降下部隊は速やかに降下しろ!!」 その命令に合わせて両脇に爆弾を抱えたシュトルヒが、次々と都市や基地にばらまいていく。 特に通信基地は徹底的に叩かれた。 それと同時にベッツハルドは低空飛行を行い、後部ハッチを開く。 「第一次降下部隊、降下を開始せよ。」 待機中の降下部隊に降下命令が下る。 「了解。パーティーに行ってくるぜ。」 第一陣のパイロットが冗談めかして言う。 「田舎ゾイドになんかやられんなよ。」 「当たり前だ。コング部隊降下開始!!」 その言葉と同時に第一陣のアイアンコングが次々と後部ハッチら放たれる。 「アイアンコング部隊放出完了!!次、小型ゾイド部隊の放出準備!!」 背中に降下用ブースターをつけたアイアンコングやイグアン、レブラプター、 大型ゾイドを降下させる為の専用装置に乗ったレッドホーンやダーク・ホーンも放たれる。 巨大な輸送船ホエールカイザーが、低空で凄まじい爆音を立てながら移動しつつ、的確に 部隊を降下させていく。 「敵の落下傘部隊だ!!対空砲火を集中させろ!!」 「はい!!」 ダダダダダダダダダダダダ………。
降下部隊に向けて対空砲火の火が集中する。 初期段階に投下した部隊は無事降下に成功し、体勢を整えるまもなくフィルバンドルに 向けて進撃を開始する。 だが、第2陣は対空砲火にはばまれていた。 「誰だ!?田舎町だと言った奴は!!こんな対空砲火があるなんて聞いてねぇぞ!!」 落下しながらぼやくレブラプターのパイロット。 次の瞬間彼の乗るレブラプターは対空砲火を受け、爆発を起こす。 フィルバンドルの基地で待機していた部隊は、慌てて正面門へと急ぐ。 その頃には部隊の降下を完了したベッツハルドの巨体は、あたりから消えていた。 帝国軍は川づたいに岸側から進撃を開始する。 進撃する部隊の前に巨大なウルトラの姿が現れる。 「う、ウルトラザウルス!!」 一機のウルトラを見つけ慌てて攻撃する部隊。 しかし何の反応もない。 「何だ、脅かしやがってただの飾りか。全機都市に集中しろ。あれは飾りだ。」 そう言うと機体を都市へと向ける。 先行部隊の前に、フィルバンドル防衛隊のガイサックやバリゲーターが立ちはだかる。 先行部隊は目の前の敵に集中しているその時、大口径のキャノンが放たれる音がこだまする。 クラウザンドジークのバスターキャノンが、帝国軍に向けて放たれる。2機のクラウザンドジークを 中心に周りを3機のサーベルタイガーが進軍してくる。 「敵セイバー、ビガザウロを発見!!こちらに向かってきます。全部隊を集中させてください。」 「よし、ベッツハルドを降下させる。」 前衛からの通信を聞いたロドリゲスは、ベッツハルドを降下させる。 巨大な輸送船は、戦闘が行われている北と反対の南に現れ、巨大な砂煙とともに着陸する。 そして全てのハッチを開放すると、そこから温存されていたダーク・ホーンやセイバータイガー、 レブラプターなどが次々と姿をあらわす。モルガにいたっては50機もの大軍が姿をあらわした。 『全機突撃せよ。』 温存部隊は敵の砲撃も少ない中、悠々と進んでいく。 フィルバンドル自衛団は、両側からの敵の進撃にお手上げの状態だった。 川側は何とかクランザンドジーク2機とサーベル3機、サーペント6機、バリゲータ13機、 ガイサック10機で何とか防げる所まで来ていたが、ホエールカイザーが降り立った砂漠側には ガイサックを中心とした部隊しかいなかった。 最初の爆撃でサーペントを7機、バリゲータ10機、ガイサック17機と損害が大きく、 損傷したゾイド達も多数いた。 奇跡的にS・ディールが無事の上、まだ川側への移動をしていなかった事から、砂漠側にまわるよう に命令を下す。 現在、砂漠側に配備されている25機のガイサックはスナイパータイプ(無人ゾイド)である。 所詮は時間稼ぎにしかならない戦力だった。 そうしている間に敵部隊は前進を続け、都市へと近づいてくる。 司令部では、新たな敵にやきもきさせられながら必死の指揮をとっていた。 「ピーリング議長。ここはいつ爆撃されるか分かりません。シェルターへ避難してください。」 「……うむ、分かった。サラ、無事でな。」 「叔父様こそ………。」 二人は別れを惜しむように抱き合う。 そして数分の後ピーリングはお供を連れてその場を去る。 「しかしこんなに早く帝国がこちらを攻めるとは予想外だったな。 共和国を追いつめているから、こちらは後回しかと思っていたが………。」 そうつぶやきながら議事堂を後にするピーリング。 さしもののピーリングも、これがただの私闘とは夢にも思わなかった。 そこへ改造サーベルタイガーのサーベルシュミットが現れると、ピーリングに 寄り添うように足を止める。 『お父様、護衛します。』 ミラルダだった。彼女の部隊は万が一の場合を考えて都市内に残っていたのだ。 「ミラルダ。私の事よりフィリアはどうした?」 「そう言えばあの子シェルターにちゃんと行ったのかしら……。」 そう言うと通信機でシェルターとの回線を開く。 「…ええ!?来てない!?そんな………。」 3つあるシェルターからはフィリアが来ていないとの通信が入る。 それを聞くと慌ててサーベルシュミットから降り立つ。 「どうしたんだ?」 サーベルから降り立つ我が子を見て慌てて駆け寄る。 「あの子がいないって………探さなきゃ!!」 「待つんだミラルダ!!何処にいるか分からんのだぞ!!」 「私には分かります。あの子の事を一番よく知っているから……。」 「しかし!!ん!?あぶない!」 いくつかの流れ弾がミラルダ達のいる方向へと向かってくる。 それを見たピーリングは慌ててミラルダをかばう。 数基のミサイルは、サーベルがミラルダ達をかばうかのように体で受け止め、 その場に倒れる。 しかし最後に残った1基のミサイルがミラルダ達の近くで爆発する。 そばにいた側近4名が爆発に巻き込まれる。 ピーリングは、ミラルダを抱きかかえたまま爆発によって吹き飛ばされる。 「……うん…うう……。」 爆発から数分の後、気を失っていたミラルダは目を覚ます。 「何が…お、お父様!!」 自分を抱きかかえて瀕死の父が目の前にあった。 「み……ミラルダ……無事のようだな……よかった………。」 今にも死にそうな顔で無理に笑顔を見せてミラルダに話し掛ける。 「…・お、お父様……。」 天に召されようとしている父を抱きかかえ涙を流すミラルダ。 「ミラルダ………私はもうすぐ母さんのもへといく……フィリアを守ってやれ……… それが私の最後の………。」 言葉の途中で生き絶えるピーリング。 「おとうさま………………。」 おえつを繰り返すミラルダ。 涙を流しながらピーリングの亡骸の煤(すす)をとると、その場に寝かせる。 「フィリアは私が必ず………。」 そう言うと湖のほうへと向かう。 一方戦況は次第に悪化の一途をたどっていた。 砂漠側、川側の両方とも混戦模様を呈しており、砂漠側では2機のダーク・ホーンを中心に 戦いが繰り広げられていた。 そのうちの一機はセイロンの乗るダーク・ホーンである。 彼はあまり動く事はせずにハイブリットバルカンを撃ち続け、何機ものゾイド達を 血祭りにあげていく。 「なんだあのダーク・ホーンは!?うかつに近づくと全滅するだけだぞ。」 セイロンの強さに畏怖するフィルバンドルのパイロット達。 彼らはセイロンに対して威嚇射撃のみ行い、ほかのゾイドに攻撃を仕掛けるのだった。 川側は徐々に混戦模様から優勢側、劣勢側と別れていく。 帝国の優勢は確固としたものとなった。 砲身が焼けるまでバスターキャノンを撃ち続けたクラウザンドジークは、 バスターキャノンを強制排除すると、ワイルドヴィーゼルユニットを起動させ、接近して くるヘルキャット部隊に対して撃ち放つ。 キャノンをはずした事により敏捷に動くクラウザンドジーク。 レーダーとの連動により正確な射撃がヘルキャット達を捕らえていく。 通常のビガザウロとは違いかなり性能アップされていた。 「なんだこのでか物、旧大戦時でのデータが役に立たんぞ!」 ヘルキャット隊の隊長は、のろまな砲台と思って軽く見ていた敵に味方部隊が 苦戦させられているのを見て驚愕する。
「このロートルが!!」 隊長機は高くジャンプするとクラウザンドジークの背に乗り、背中に装備された近接戦闘用 武器を破壊していく。 一通り破壊すると、彼は頭にあるコックピットめがけてビームを連打した。 ビームは吸い込まれるように頭部に命中する。 粉々に砕かれる頭部。 頭部を破壊されたクラウザンドジークは、その場に倒れ込んだ。 この事をきっかけに更に後退を余儀なくされるフィルバンドル隊。 徐々に後退をさせられるうちに町にも砲撃が飛び火していた。 それを見て彼らは必死になって帝国の進撃を止めようとする。 彼らの努力もむなしく、劣勢をひっくり返す事は出来なかった。 もう一機のクラウザンドジークは、2機のアイアンコングにふところにはいられて巨大な 鉄の墓を作る。 もはや勝敗は決しつつあった。 父の言葉を胸に必死に走りつづけるミラルダ。 ようやくウルトラの前に到着する。 「ハァ…ハァ………フィ、フィリア何処?」 ウルトラのいる付近は、最初の砲撃や流れ弾で荒れ地と化していた。 あたりを見回すと、寄り添うように座っているフィリアを見つける。 「フィリアー!!だめじゃない…………。」 フィリアに駆け寄ったミラルダは言葉を失う。 フィリアはウルトラに寄り添ったまま息を引き取っていたのだ。 たいした外傷もなく彼女はそこにいた。 「いやぁ……死んじゃだめ……フィリア!!」 そう叫ぶと彼女をその場に寝かせ心臓マッサージをする。無駄と分かっていても 今の彼女にはそれしか方法がなかった。 「生きて…お願い生き返って………!!」 必死に心臓マッサージと酸素吸入を行う。そして奇跡は起きた。 「ゴフッ………。」 フィリアは口から少し血を吐く。息を吹き替えしたのだ。 「フィリア!!」 それを見て抱きつくミラルダ。 「お、…お姉ちゃん…………ごめんね……。」 「謝らなくていいから………。」 「お姉ちゃんの言いつけ守らなくてごめんね……。」 「フィリアどうしたの?フィリア!!」 様子のおかしいフィリアに必死に話しかける。 「お姉ちゃん…何言っているか分からないけど…………でも今までありがとう………。」 どうやら爆発のショックなどで耳をやられてしまったらしい。 「ありがとうだなんて何言っているの!!今すぐ病院へ!!」 「お姉ちゃんに謝る事が出来てよかった……。…………お姉ちゃん………私、お姉ちゃんの 事が大好きだよ………………。」 そう言うと目が虚ろ(うつろ)になり、静にまぶたが閉じていく。 「フィリア……………いやぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」 それは彼女にとって最も辛い出来事だった。 そして、一つの奇跡が起こる。フィリアの死と同時に各坐していたウルトラが動き始めたのだ。 ゆっくりと傾いた体を起こすウルトラ。 「ん!?た、隊長!!う、ウルトラが・・………!!」 町の外の敵をあらかた一掃して、残るは都市の制圧だけとなった部隊に向けて ウルトラザウルスに装備された3基のウルトラキャノンが唸りを上げる。 「なにぃ!?」 ウルトラキャノンの砲弾は、突然動き出したウルトラを見て戸惑う2機のアイアンコングに 命中し、粉々に吹き飛ばす。 次々と帝国軍を血祭りにあげていくウルトラ。 「なんだ!?あのウルトラは50年以上も放置されていた奴だぞ!!なんで今更動く!?」 動き始めたウルトラを見て驚いたのは帝国だけではなかった。 フィルバンドルの司令室でも突如として動き出したウルトラにどう対処して よいのか分からなかった。 「ウルトラのコクピットを映し出せ!!誰が乗っているのか確かめろ!!」 生き残っていた観測機器を使ってウルトラの頭部にあるコックピットの拡大ビジョンを映し出す。 「!?誰も・・…誰も乗っていないのに動き出すとは……一体、何があったんだ………。」 驚きの連続に開いた口がふさがらない司令。 「でもどうして急に…!?」 なぜ動き出しのか考えあぐねていたサラは、ウルトラのキャノピー付近に一瞬、寄り添うように 座る人影に驚く。それは見知った顔だったからだ。 だが、改めて画面を見てもそこに人はいない。 それよりも、普通ならそこは人が足をかける所さえない、そんな場所だったのだ。 「・・…どうしたサラ。何かあったのか?」 「えっ、いえなんでも……。」 考え込んでいた彼女はふいに声をかけられ慌てて返事をする。 (何であそこにフィリアが…………。) 「ウルトラは帝国軍を攻撃しています。どうやら我々の味方をしてくれているようです。」 考えつづけるサラをよそに、通信士からの報告は続く。 「た、大変です!!」 声と同時に急に司令室の扉が開き、一人の兵士が慌てて司令官のもとへとやってくる。 「どうした!?」 「ピーリング議長が戦死されました!!」 「!?」 その知らせを聞き、さすがのサラもうなだれてしまう。 この報告に司令室内の人々は動揺を隠せない。 「……そうか議長の無念を晴らす為にも我々はここを死守せねばならない!! 全員その事を心して自分の任務に就くんだ!!」 『はっ!!』 その言葉を聞き、その場にいたものすべては勇気づけられ、自分の任務にせいを出す。 そんな中ウルトラは次々と周りの帝国軍を撃退しながらゆっくりと歩く。 「各坐していたウルトラが動き始め現在交戦中!!至急指揮を乞います!!!」 混乱した前線部隊から悲鳴とも取れる通信がロドリゲスのもとに飛び込んでくる。 「川側で後方支援をしているダーク隊にウルトラを攻撃させろ!!」 指示に従いダーク・ホーンと2機の砲撃強化タイプのレッドホーンが部隊の先頭に踊り出ると ウルトラに向けて砲撃を開始した。 それに合わせてダーク隊を支援する体制をとる他の部隊。 この騒動で砂漠側のいくつかの戦闘部隊も川側へと移動し始める。 既にこの時砂漠側の戦闘はほとんど終了していた。 後はわずかな部隊の排除だけである。
ウルトラに砲火が集中する。何十年も放置されていた為、ウルトラの装甲は弱体化しており、 この砲火には耐え切れず、砲弾が装甲を貫通してあちらこちらから爆発を起こしていた。 「やらせてたまるか!!」 そんなウルトラを見て救世主と考えているフィルバンドルのパイロット達は、ウルトラを 必死に守ろうとする。 しかし、帝国軍は彼らを相手にせず、ウルトラに集中砲火を浴びせて追いつめていく。 「とどめだ!!」 ダーク隊の隊長が舌なめずりしながら叫ぶ。 一斉射撃された最後の砲弾は見事ウルトラの胴体にあるゾイドコアを貫く。 コアを貫かれてウルトラはその場に倒れ込む。 「やったぞ。これで安心して制圧が出来る。全機フィルバンドルに侵攻するぞ!!」 ウルトラをしとめた事により意気揚々とフィルバンドルへと向かう川側の帝国軍。 しかし、その時湖底にも動く影があった。
それは静かに岸近くまで来ると突然と姿を現した。 それと同時に目の前にいた帝国の小型ゾイドを踏み潰す。 「なっ!!?」 彼らの眼前に白いウルトラがあらわす。 「ウルトラ……まだいたのか……。」 その言葉を最後に、ダーク隊はウルトラのキャノン砲をまともに受けてちりと化す。 湖底にいたウルトラは完全な姿をしており、上空制圧をしていたシュトルヒ達に も対空砲火を浴びせ、次々と打ち落としていく。 「ウルトラがもう一機現れました!!シュトルヒ隊はほぼ壊滅状態。 第1侵攻大隊もこのウルトラの攻撃でダーク隊を失い、うつべき手段を失っています!!」 「目障りな!!全ゾイドをウルトラに集中させろ!!」 フィルバンドルの都市を蹂躪しながら、砂漠側の部隊は急ぎ川側へと向かう。 通常の一般兵は、そのままシェルターなどの制圧を開始する。 3基あるシェルターのうち2基はあっという間に占領されてしまう。 「一部シェルターを占拠。他のシェルターおよび敵司令部本部探索中。 今後の指示を待たれたし。」 「さっさと見つけて殺してしまえ!!そんな事でいちいち私の指示を仰ぐな!!」 予想だにしなかった出来事が次々と起こり、ストレスが溜まる一方のロドリゲス。 命令を出す声にもそれが聞き取れるほどであった。 自分達も殺されるのではないかと思い、必至に探索と制圧を行う一般兵。 一方、ウルトラの奇襲で完全に陣形を乱された川側の部隊は、なすすべもなく壊滅してしまった。 ウルトラはそれを見届けると、今度は都市を突き進みながら向かってくる砂漠側の 部隊へ砲撃を開始する。
爆発音にも似た砲撃が、次々と帝国軍に降り注ぐ。 必死に反撃を試みるがすべて無駄に終わる。 そこへ一機のアイアンコングが、果敢にウルトラの懐まで近寄る。 だが狙い澄まされた4門のウルトラキャノンをまともにくらい、消滅してしまった。 シェルターを制圧していた部隊も、この状況を聞いて慌ててその場から離れ始める。 そんな中、必至にウルトラと交戦をするダーク・ホーンがいた。 セイロン機である。 彼はウルトラキャノン砲を巧みな技術を持って何とかかわしていた。 しかし、さすがにウルトラキャノン砲の威力はすさまじく、直撃はせずともダーク・ホーンに 確実にダメージを与えつづけていた。 「………潮時か。」 そうつぶやくと一歩二歩と後退をはじめるセイロン。 彼が後退をはじめた頃には、他の部隊は全滅に近い状況となっていた。 あらかた一掃したウルトラは、キャノン砲の照準をベッツハルドに向ける。 「早く上昇しろ!!あいつにやられてしまうぞ!!」 激怒しながら浮上の指示を出すロドリゲス。 「完全に着陸してしまった為に浮上には時間がかかります!!」 「こ、こんな所で・………こんな所で私は死ぬのか………。」 つぶやくロドリゲスに向けて何発ものウルトラキャノン砲が放たれる。 そして最後に放たれた砲弾は、ブリッジへと吸い込まれる。 「くそったれぇーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!」 彼が怒りをぶちまけたと同時にブリッジは跡形もなく消え去り、それをきっかけに あたりの砂を四方八方へ撒き散らし、大爆発を起こすベッツハルド。 しばらくして偵察から急遽戻ってきたマーダの大軍が、残存するフィルバンドルの自衛団に 合流し、帝国軍残存部隊を都市から追い出す事に成功する。 敗走していく帝国軍。 「遠距離用通信機の復旧次第、近隣都市国家に敵敗残兵の掃討を通知せよ。」 この一言によりフィルバンドルの戦闘はすべて終了した。 ようやくこの町に安息が訪れたのを確認するとウルトラは海のほうへとゆっくりと向かう。 それを一般市民、軍人を問わず心の中で感謝しながら見送る。 ウルトラは、静にそしてゆっくりと海のかなたへと去っていった。
それから数時間後、形だけではあるがこの戦いによる犠牲者を追悼する追悼式が行われた。 その中にミラルダの姿を見つけたサラは彼女に近づく。 「ミラル…………。」 二人の棺の前でただ佇む彼女を見て何も言えなくなってしまうサラ。 彼女の目には、枯れ果ててしまったのか、もう涙は流れていない。 「………ミラルダ、私シビーリに行く。こんな戦争は早く終わらせる為に………。」 そう言うと彼女はその場を去る。 ミラルダは何の返答もしないままその場でじっと二人の亡骸を見続けていた………。 死者達の前に焚かれた巨大なたいまつから起こる火の粉が空へと舞いあがっていく。 死者の魂をいざなうかのように………。
後書き6
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