死を招く少女5
「時間だ。」 モニター脇に表示されている時刻を見てパイロットは告げる。 「こちらラーマ。これより基地攻略を開始する。各自最善を尽くせ。以上だ。」 そう言うとラーマは通信機を切る。 それに呼応して前衛で待機していた部隊があわただしく迷彩シートを振り ほどいてその場を離れる。 1機のブレードライガーから通信が入り、ラーマの機体のモニターに一人の 男の顔が映る。 「それでは大尉、行ってまいります。」 「ああ、カルマ。無事を祈っているよ。」 「ありがとうございます。期待していてください。」 モニター越しに敬礼をするとカルマは通信をきる。 「大尉、俺はどうも待つのが苦手なんですがねぇ。」 またラーマの通信機に通信が入る。 「キシェルド、ぼやくな。我々はあくまで切り札なんだ。」 そう言っていさめるラーマ。 「そういわれてもせっかくのシャドーフォックスが泣きますぜ。なぁヤコーニ。」 「私は与えられた事のみ実行します。あなたのように勇み足で死ぬのはごめん こうむります。」 冷静な声がキシェルドのコクピットないに響く。 「ちっ、相変わらず生真面目な奴だな。そんなんじゃ女にもてないぜ。」 キシェルドのにやけた顔と、浮ついた声がヤコーニのコクピットに響きわたる。 それを見てけげんそうな顔をするヤコーニ。 「やめろ。我々のこの機体はまだ極秘だ。ようやく本国で正式採用の認証が 下りたばかりだ。下手に壊すわけにはいかん。」 「了解。いいかげん、表立って戦いたいもんだぜ。カルマは前線でいい気な もんさ。」 彼らはここ数ヶ月、機体のテストのために前線での戦闘ができなかった。 それをぼやいているのだ。 そんな彼らの上をプテラスの大編隊が通り過ぎていった。 「元気に行ってくれや〜。」 キシェルドが気のない言葉を空に向けて言い放つ。 その時、シャドーフォックスの後方から接近する機体が接触寸前で上昇する。 「おめーらの出番はないからあぐらかいて寝てやがれ。はははは!!」 ラーマ達の通信機に音声だけが入る。 「ち、プロムナードの奴、はしゃぎやがって・・・!!」 不機嫌そうに言うキシェルドだった。
その頃、帝国軍のレーダー班は飛行ゾイドの大編隊をレーダーが捕らえていた。 軽く70機を超えている。 「飛行に問題のない損傷機も出させろ!!いくらなんでも上空待機している 機体だけでははが立ちそうにない!!偵察用のシュトルヒも出せ!! 出し惜しみをするなよ!!」 「はい!!各員に連絡!!こちら・・・・・。」 オペレータがあわただしく連絡する。 「敵地上軍の動きは見えるか!?」 「いえ、現在のところレーダー監視下にはまだ現われていません。」 「そうか。脅しでもでてくると思ったが・・・・とにかく厳重に警戒するんだ。」 そう言うとレーダーを見据えるコーエル。 「了解。」 目の前の飛行場では、損傷の軽微だったレドラー5機が飛び立っていく。 その後を追うようにシュトルヒ8機も飛び立つ。 これで航空戦力は28機となった。 相手の数を考えればたいした数ではないが、対空砲火も交えれば何とかなるか もしれない数だ。 地上のゾイドの半分以上は共和国の地上軍を警戒するために、基地脇を固める ように警戒する。残りは対空警戒である。 そうこうしている間にプテラスの大編隊がやって来た。 空を埋め尽くすような数である。 敵大編隊を捕らえたレドラー、シュトルヒ部隊は、敵大編隊に対して突撃を かける。 「!!あれは・・・・。」 戦闘爆撃機のプテラスを守るようにレドラー隊の前にエメラルドグリーンの 機体が現われる。 「レ、レイノス!!ば、ばかな!!」 驚愕し、レイノスに気をとられているパイロットに衝撃が走る。 「な、なんだ!?レイノスだけじゃないのか!?」 彼の機体は2つに分かれて落下していく。 踊り出るように銀色の機体、ストームソーダが姿をあらわす。 「いーっやっほう〜!!」 陽気な叫びがストームソーダのコクピット内に響く。 「くそ!」 帝国軍のパイロットたちに焦りの色が見え始める。 「そんなにビビってたらこの俺様を倒せないぜ!!」 バルカンを連打しながら徐々にレドラーを追い詰めていく。 「プロムナード曹長!!1機だけで突出しないでください!」 制止する部下の言葉を無視して追い詰めたレドラーを切り裂く。 10分も立たない間に15機のレイノス、3機のストームソーダがことごとく 彼らの攻撃をかわし、レドラーを次々と落としていく。 そんな中でも必死にビームとビームの間をくぐりぬけて数機が、プテラスを 切り裂いていく。 「!?・・・させるかよ!!」 それに気づいたプロムナードは、一気に反転するとレドラーに近づき、次々と 血祭りに上げる。 あまりにも一方的な戦いになりつつある空中戦に、地上部隊全機で迎撃に奔走 する。 しかし善戦むなしく十数機が基地内を爆撃していく。 プテラスとはいえどもなかなか対空火器は当たらない。 第2波の攻撃が開始して20分が経過しようとしていた。 みな空にいる敵に集中している。 そこを付け入るように突然、前衛の地上部隊に砲弾の雨が降ってきた。 「なに!?」 降り注ぐ砲弾に慌てる帝国軍地上部隊。 「レーダー監視!!なにやってんだ!!」 レーダ班を怒鳴り散らす。 「すいません!!レーダーの反応が・・・。」 「・・・・・!!まさかあいつらの本当の目的はジャミングか!!」 そう言って空を見上げる。 よく見ると数機が遠巻きに何かをしているように見えた。 「あいつらか・・・。」 そう言うとおもぐろに通信機をとる。 「アル、聞こえるか。」 「何でしょう。」 雑音交じりにアルフレッドの声がこだまする。 「そこにはなれて飛び回っている奴らがいると思うんだが見えるか?」 「・・・・・発見しました。あれは・・・・まさか。」 何かに気づいた様子のアルフレッド。 「お察しのとおりだ。とりあえず奴らを何とかしてくれ。これのままでは敵の 正確な数がわからん。」 「了解。」 アルフレッドの往信を聞くとマイクをほり出す。 「あいつなら何とかしてくれるだろ。」 楽観主義とも取れる言葉ではあるが、それだけアルフレッドを信頼している ことが分かる。 「セイロン、ちょっと来てくれ。うるさい鳥を数羽落とさなければならなくなった。」 「・・・・了解。」 セイロンの言葉を聞くとアルフレッドは、その場を他のものに任せてセイロン と共にその場を離れる。 「前衛はお前に任せる。とにかく一発でも打てるんなら牽制でもいい。撃て。 そこまで損傷は激しくないはずだ。」 ジェノサイドの機体をモニターで確認しながら言うコーエル。 「あたりまえだ。俺としてもここをまもらにゃあ直接の上司がうるさくてかな わねえからな。」 そう言うとロックは拡散荷電粒子砲の発射体制に入る。 「周りはとにかく発射を気づかれないようにしろ。なぁにちゃんと決めてやるさ。」 おどけて言うロック。 そこに共和国の地上部隊が現われる。 それにあわせて全部隊が、牽制のためにビーム砲を放つ。 しかし、ジャミングと敵の支援砲撃のために正確に当てる事ができない。 さらに相手の接近するスピードが帝国軍のパイロットたちを慌てさせる。 「ロック二尉!敵の足が速すぎます!敵は高速部隊のようです!」 悲鳴にもにた通信が入る。 「そんな事は関係ねぇさ!!」 そう言いかえすと拡散荷電粒子砲を発射する。 共和国軍の高速部隊は、それに気づき回避運動に入ろうとするが、拡散された 荷電粒子は前衛の部隊のほとんどを捕らえて傷をつけた。 「ざまーみやがれ!!アルフレッドなんか目じゃないぜ!!」 中指を立てて、たけび狂うロック。 しかしそんな中をかいくぐってくるものがいた。 3機のブレードライガーと4機のシールドライガーである。 被害を受けた味方機を尻目に基地に向けてひた走る。 「敵前衛に改造ジェノザウラーがいる。あれをまた撃たせるな。他の奴は 後続部隊に任せる。空は心配しなくていい。」 その通信を聞いて4機のシールドは、ブレード部隊から離れる。 後続部隊もそれに続く。
そして2機のブレードライガーを率いてジェノサイドに突っ込むのはカルマだ。 対峙するジェノサイドと3機のブレードライガー。 「おお、こりゃ楽しい戦いになってきたじゃねえか。」 笑みを見せながら3機のブレードライガーを見回す。 「いくぞ!!」 カルマのその言葉に合わせて3機のブレードライガーがジェノサイドへと襲い 掛かる。 その頃目標の近くまで来ていたアルフレッド達は、物陰に隠れて敵の隙を伺っ ていた。 「敵の空爆隊は基地に集中しているみたいだな。支援部隊も同様のようだ。 敵さんが仕掛けたジャミングのおかげで、我々も見つからずここまで来れたと いうのは皮肉だな。」 笑って見せるアルフレッド。 「セイロン。お前は空中の敵に集中しろ。おそらく現われる地上部隊は私が やる。」 「・・・・・了解。」 「では行くぞ。」 そう言うと物陰から飛び出す。 するとセイバーの動きを見て、案の定ガンスナイパー8機とディバイソンがその場に現われる。 「これは大物だな・・・。」 共和国部隊を見てそうつぶやくアルフレッド。 一気に駆け寄るとガンスナイパー4機をもろともせずに戦闘不能にする。 ディバイソンは、同士討ちを恐れて自慢の17門突撃砲が撃てない。 そうこうしている間に、さらに2機のガンスナイパーを血祭りに上げる。 その状態を見て慌ててジャミング機を護衛しているプテラス数機が降下して くる。 完全にアルフレッドに気がいっている隙をついてセイロンが踊りでる。 「!!」 それを見たプテラスは慌ててその場に立ち往生してしまう。 「・・・・未熟な。」 そうつぶやくとプテラスに向けて背中のハイブリットバルカンを放つ。 降下していたプテラスは次々と墜落していく。 そしてジャミング機に照準を合わせて攻撃態勢に入ろうとする。 「・・・・!!」 急激に迫る殺気にあたりを見回す。 すると地面すれすれを1機のストームソーダが、セイロンの乗るアタックセイ バーめがけて突撃してくる。 それを見たセイロンは慌ててその場を離れる。 数秒送れてストームソーダが、アタックセイバーがいた場所を通過する。 「早々おとさせはしねえよ!!」 そう言って機体を反転させたプロムナードは、またアタックセイバーめがけて 突進する。
セイロンは真正面から来る敵に向けて、ハイブリットバルカンを放つがストー ムソーダは、お構いなしに向かってくる。 そして衝突寸前に上にジャンプしてやり過ごす。 「ちっ、なかなかしぶといなあの黒いセイバー。」 「ナック。お前も俺の後に続け!!」 「了解!」 プロムナードの言葉を聞いてもう1機、ストームソーダが現われる。 そしてプロムナード機の後方数メートルにつけると同じように降下する。 「次は避けられんぞ!!」 2機のストームソーダが音速で、地上すれすれを滑走する。 「・・・・・。」 セイロンはただそれを見ている。 「観念したかい!!」 近づくストームソーダ。すると急にストームソーダに向けて走り出す。 「体当たりするきか!?」 しかしそんな事はお構いなしに突進するプロムナード。 そしてジャンプするアタックセイバー。 「なっ!?しかしなぁ!!」 その下をプロムナードがすり抜ける。 それと同時に後方で鈍い音がし、大きな音がこだまする。 「な、なにぃ!?」 勝利を確信して地上を見ると、そこには土に埋もれ四散したストームソーダの 姿があったのだ。 「そんなばかな・・・!!」 驚きを隠せないプロムナード。 その一瞬の隙を見てセイロンが、ハイブリットバルカンを浴びせる。 隙をつかれたストームソーダは、避けることなく弾を喰らってしまい、煙を 引いて地上に落下していく。 「非常脱出装置が作動しない!?くそぉぉぉ!!」 地上に激突したストームソーダは大爆発を起こす。 セイロンは2機目が通過するタイミングを図ってジャンプし、ハイブリットバ ルカンを放ったのだ。 2機目は先頭の1機目の後ろにつくために、前が見えないことを瞬時に察し、 まず2機目を仕留めたのだ。 そして戸惑いを見せた1機目を撃墜した。 こんな芸当は彼ならではである。 2機を撃墜したセイロンは、ジャミング機撃墜に向かう。 その脇では、ガンスナイパーを一掃したアルフレッドのグレイト・セイバーが、 ディバイソンと対峙していた。 お互い撃ち合っても当たらず、戦闘は格闘戦へと持ち込まれていた。 地鳴りを響かせディバイソンが突撃を開始する。 突撃するディバイソンをじっと待ち続けるアルフレッド。 そして一瞬のチャンスを見分け、懐に入り込むとしたから突き上げるように ディバイソンの喉笛に噛みつく。 その場に倒れ込むディバイソン。
もはや戦闘不能状態に陥っていた。 それを確認するとセイロンのほうへと向かうアルフレッド。 その場にはジャミング機を撃墜したアタックセイバーの姿があった。 「・・・・任務完了。」 「ごくろうだったな。それではまた基地の防衛に戻るぞ。」 「・・・・・了解。」 2機はまた戦場へと身を投じていく。
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