死を招く少女6
基地攻防戦は、泥沼の様相をていしていた。 必死に守り抜こうとする帝国軍、そして攻め続ける共和国軍。 空中戦は一段落し、プテラス部隊は次の攻撃のために東へと去っていた。 しかし、帝国の空中部隊はほぼ壊滅状態で、飛んでいるのがやっとだった。 そんな中、ロックのジェノサイドとカルマのブレードライガーも一進一退の攻 防を続けていた。 対峙してから1時間が経とうとした頃、ブレードの押しが弱くなっていた。 明らかに疲れが見えていた。 対するジェノサイドは、その溢れんばかりの生命力を見せつけている。 「化け物め・・・。」 精神的も肉体的にも疲れた表情を見せるカルマ。 他のブレードのパイロットにも同様の疲れが見える。 なぜなら荷電粒子砲を撃たせないように、気を使いながらの戦闘を常に続けて いた為である。運動量も半端ではない。 唐突にジェノサイドは、動きの鈍くなったブレードライガー達に向けて走り出す。 ブレードのパイロットは、ジェノサイドの接近を見て慌てて回避しようとする が、間に合わない。 機敏な動きで懐へともぐりこむと、一気にブレードを地面に叩き伏せ、頭部を 踏み潰す。 「・・・きさま!!」 目の前の無残な光景に思わず声を荒げるカルマ。 「何が貴様だ。ここは戦場だって事忘れてんじゃねぇのか!?」 そう叫ぶとロックは、さらに間合いを詰めてもう1機のブレードに近づく。 「させるか!!」 その間にカルマ機が割って入る。 「ここは俺に任せてお前は後方に下がって次の準備だ。」 「了解。」 もう1機のブレードはその場を去る。 「この命をかけてでも荷電粒子砲は撃たせん!!」 そう叫ぶと、ジェノサイドとの間合いを詰める。 ストライクローをジェノサイドめがけて振り下ろすが、軽いフットワークでか わすジェノサイド。 そしてお返しとばかりにブレードに尾を振り下ろす。 「・・・・!!」 間一髪でかわすカルマ。 かわしたブレードを再び捕らえようとするジェノサイドを、ブレードに装備さ れているビーム砲で牽制する。 「何とかして発射できないようにしなくては・・・くっ!」 考えている暇もなく、ジェノサイドが再び接近戦を仕掛けてくる。 「・・・・・・一か八かやってみるか。」 そう言うと動きを止め、ビーム砲を連射する。 それを見てロックは、一気にブレードとの距離を詰める。 「とうとう息切れか!?もらった!!」 ロックの叫びを合図にするように、目の前に飛び込んできたジェノサイドの目 掛けてジャンプする。 「!!」 そしてあらかじめ展開されていたブレードをジェノサイドの口へといざなう。 がっ・・・!! 鈍い音と共に何かが折れる音がした。 その場に倒れ込むブレード。 ジェノサイドの口には、レーザーブレードがくわえられていた。 とっさに口を閉めたロックの運が彼の命を救った。 そして強化されたキラーバイトファングが、ブレードを根元から折ったのだ。 「もうこれで何もできそうにないな。それじゃ、止めでも・・・・。」 優位にたったロックは、余裕を見せてブレードに近づく。 その時。 急に起き上がったブレードは、ジェノサイドの首元に噛みつく。 「なに!?まだうごくのか!!」 「こ、このチャンスを待ってたんだよ・・・・!!」 カルマは額に血を流し、苦しそうな表情でつぶやく。 その勢いに倒れ込むジェノサイドを、すぐさま押さえつけるブレード。 もがくジェノサイドを必死に押さえ込む。 「な、なんて力だ・・・!!早く済ませんと・・・・。」 歯ぎしりしながら必死に押さえつけるカルマ。 機体は今にも、ジェノサイドの力で吹き飛びそうだった。 「くっ!!アルフレッドもこいつも俺をこけにしやがって・・・!!!!」 もがくロック。 そこに大きく振りかぶられた右前足が、ジェノサイドの口内にある拡散荷電 粒子砲を踏み潰す。 「よし!!これで撃てない!!」 「・・・て、てめぇ!!」 怒りに任せてジェノサイドを動かす。 その動きで足を踏み外したブレードは、その場に転げる。 「し、しまった・・・!!」 「これでも喰らいやがれ!!」 起き上がったジェノサイドは、怒涛(どとう)の勢いでブレードに迫ると、 一気にブレードの腹部に噛みつく。 逃れようともがくブレード。 「残念だが逃れられないぜ!!」 そう言うと一気に首を振り、ブレードの腹部の部分を引きちぎる。 その勢いでブレードは投げ飛ばされる。 間髪をいれず、ブレードに向けて背中の火器を集中させる。 「はっはっはっはっ!!死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死死ね!!!!」 狂気に満ちたロックの叫びがあたり一帯に響き渡る。 「くっ!!シールドを・・・・・。」 薄れゆく意識の中で、Eシールドを張るカルマ。 堅固なシールドもジェノサイドの猛烈な攻撃に徐々に弱まる。
そして数分後、シールドをはれなくなったブレードが、ジェノサイドの猛攻撃 をじかに受けて大爆発を起こす。 が、ロックの気は晴れないようで、爆発が収まってもブレードがあった場所に 向けてビームを放つ。 「はぁはぁはぁはぁ・・・・・・。」 息を切らすロック。 ふとあたりを見回すと、敵味方共にほとんどの機体が、無残な姿をさらしていた。 「ロック!!お前何やってんだ!敵が基地に入り込んできているんだぞ!!」 ようやくコーエルの通信に気がついたロックは、気のない返事をすると基地に 向かった。 基地内に入り込んだ共和国軍は、一気に建物の占拠にまわる。 「仕方たない。敵に占拠されたビルは爆破して破棄!!ここも放棄する。」 そう言うとコーエルは、部下を率いて地下倉庫に向かう。 地下倉庫内には、ガイロス帝国仕様のブラック・コングがたたずんでいた。 「まさかこれにのる羽目になるたぁ・・・。」 そういう手袋をはめ、機体に向かう。 攻勢に立った共和国軍は、支援部隊も前進させる。 その先頭に立つ機体は、ゴジュスラスMK―Uが2機。その後を数機のゴルド ス砲撃仕様が続く。 「こちらZGMK−U、203支援砲撃隊および突撃部隊、これから基地制圧に 向かいます。」 ラーマの下に報告が入る。 「・・・・・と、いうことですコクン大佐。我々も前線へ赴きます。」 目の前のスクリーンに表示された、年老いた男性に向けて話し掛ける。 「よし、MK−U部隊の名の意地にかけて殲滅せよ。健闘を祈る。」 そう言うと通信が途絶え、スクリーンには砂嵐が現われる。 現在、バルハナ基地を攻めているのは、旧大戦からの伝統あるMK−2部隊の 一部である。 ラーマ達は、MK−U部隊内にある特殊部隊として配備されていた。 「さ、行くとするか。キシェルド、ヤコーニ。」 『了解。』 各機から返答が帰ってくる。 通信にあわせるようにゴジュラスが咆哮(ほうこう)を上げて、基地へと向かう。 その後ろを、ラーマ達がゆっくりとついていった。 一方、ジャミング機を片付けたアルフレッドは、急いで基地に戻ると、基地内 に残存する味方機とともに、防衛に当たっていた。 しかし、善戦むなしく基地の3分の1を占拠されている。 「さすがにここまで攻められては、手のうちようがないか・・・・。」 愚痴をこぼすアルフレッド。そこに通信が入る。 「アルフレッド、これから攻勢をかける。お前は基地防衛部隊の指揮をとれ。 ロックは自由にさせて置く。あれは邪魔だ。」 「了解。まさか大佐が出る事になるとは・・・・。」 そうつぶやきながら向かってくるコマンドウルフを叩き伏せる。 そこにディバイソン3機が現われる。 「また厄介な・・・・・。」 17門突撃砲が火を噴く。 砲撃を避けるために、帝国軍は陣形を乱して逃げ回る。 ゴッ・・・・!! 鈍い音と共にディバイソンが吹き飛ぶ。宙を舞うディバイソン。 そこに現われたのは、コーエルの乗るブラック・コングだ。 その後方には、レッドホーンやブラックライモスがいる。 コーエルは、状況を把握できずにいるもう1機のディバイソンを持ち上げると、 はがいじめにする。 もがき苦しむディバイソン。 味方機を助けようと、残りのディバイソンがコング目掛けて突進する。 それに気づいたコーエルは、羽交い絞めにしていたディバイソンを突撃してく るディバイソン目掛けて投げつける。 それを見て慌てて避けるディバイソン。 そこを狙ってレッドホーンが、ディバイソンの不意をついてクラッシャーホー ンにて仕留める。
投げられたディバイソンもブラックライモスの餌食となる。 突如として現われたコング達に、前線の共和国軍の指揮系統が乱れ始めた。 基地に潜入した共和国軍は、混乱の中次々と破壊されていく。 果敢にも抵抗を見せる部隊もあったが、機敏な動きを見せるブラック・コング の前では敵ではなかった。 その状況を見て潜入部隊の隊長機が、一度外に出るように指示をする。 体勢を立て直そうというわけだ。 何とか外に逃げた部隊は、安堵(あんど)の表情を浮かべる前に、目の前に現 われたジェノサイドに驚愕する。 「残念でした。」 不気味な笑みをこぼしながらそう言うと、共和国部隊を血祭りに上げていく。 一通り暴れるとゆっくりと基地内に入るジェノサイド。 しかし、目の前でいきなり爆発が無数に起きる。 「な、何だ!?」 ふいに起きた爆風に巻き込まれ、吹き飛ぶジェノサイド。 近くまで進撃してきた支援部隊が状況を見て、新たに砲撃を開始したのだ。 ゆっくりと近づいてくるゴジュラスとゴルドス。 その周りには、見慣れない3機の機体と20機のディバイソン、そして多数の 小型ゾイドが取り囲んでいた。 「我々は内部かく乱に入る。そちらは大佐に指示を仰いでくれ。以上。」 ラーマの短い通信に続き、シャドーフォックス3機が光学迷彩を使って、基地 内へと赴(おもむ)く。 「こ、これはやばいな・・・・・・。」 つぶやいたのはコーエルだった。 「勇んで出てきたはいいがこれは北へ撤退だな・・・・。」 冷や汗が額を流れる。 「仕方がありません。ここまで周到にされていては、撤退するしか方法はない でしょう。」 「だろうな・・・。」 「私がここを抑えます。コーエル大佐は、部隊を率いてニクシーに向かってください。」 そう進言するアルフレッド。 「お前が死ぬ事はない。俺がここに残る。おまえは部隊を率いて脱出しろ。」 「しかし・・・!!」 「お前のような奴がここで死んで何の得なるんだ。分かったら行け。」 そう言うと基地の外にいる共和国部隊に向けて走り始める。 共和国部隊は基地の入り口付近まで来ていた。 「全部隊はニクシー、もしくはプルドマへ撤退。遺憾ながらバルハナを放棄す る。以上だ、各員速やかに退去せよ。」 その通信に兵士達は驚き、自分達の敗北を知った。 そしてわれ先に基地を離れる。 「大佐!!セイロン。お前が部隊を率いてニクシーへ行け。こんな役をさせて すまないな。」 そう言うと、アルフレッドも基地に侵入してきた共和国部隊へ向けて突撃する。 「・・・・了解。」 そう言うとセイロンはそれを見送るとその場を離れた。 ディバイソン20機が横一列に並び、いっせいに17門突撃砲を基地に向けて 放つ。 基地のいたる所で、爆発が起き、基地全体が黒煙を吹く。 その下では、ゾイドや兵士が逃げ場を求めて走り回る。 さながら地獄絵図のようであった。 「大佐!お供します!!」 そう言って現われたのは、セイバータイガーを中心とした機動部隊だ。 「・・・・悪いが地獄まで付き合ってくれ・・・。」 そう言うと機体を共和国部隊へ向ける。 十数機がコーエルに付き添って、共和国部隊へ攻撃の先陣を切った。 コーエルのブラック・コングも、傷つきながら共和国部隊に入り込むと、近く にいたディバイソンを血祭りに上げる。 続いて、すばやい動きでゴルドス1機を片付けると、ゴジュラスに組みかかる。 ゴジュラスも咆哮を上げてコングと組み合う。 巨大ゾイド同士の格闘戦。 手の長いコングのパンチがゴジュラスを捕らえようとする。 しかし、ゴジュラスも負けじと機敏な動きを見せて、パンチをかわす。 そして機体を回転させて尾の一撃をコングに見舞う。 コングはそれを両手で受け止めて攻撃をかわす。 かわされたゴジュラスは、一度間合いを取ろうとする。 それをチャンスとばかりにゴジュラスに突っ込むコング。 その行動に不意をつかれたゴジュラスはコングの強烈なパンチを喰らい、その 場によろける。 そして止めをさそうと飛び掛る。 「まず1機!!」 しかし、ゴジュラスの咆哮と共にコングを砲弾が襲う。 「なに!?」 衝撃を受けて後方スクリーンへと目をやるコーエル。 もう1機のゴジュラスがコングを背後から撃ったのだ。 「・・・・・ち、接近に気づかなかったとは・・・!!」 そう言葉をはき捨てると、慌ててその場を離れて間合いを取る。 そこに2機のディバイソンが突撃をかける。 1機は即座に叩き伏せたが、その隙にもう1機がコングの懐に入り、コングの 腰部を突き刺す。 「かはっ!!・・・・こなくそ!!」 衝撃で吐血しながらも、懐に入ったディバイソンを強引に超硬角を引き抜くと、 持ち上げようとする。 「やむえん突撃しろ!!」 ディバイソン部隊の隊長の命令で5機のディバイソンが味方機もろとも自慢の 超硬角でコングを串刺していく。 「やったか??」 「ちっ、ここまでか・・・・・・。」 コーエルの言葉が途切れると共に、コングが爆発を起こす。
突撃したコーエル部隊を一掃した共和国部隊は、基地へと侵入し始める。 烏合(うごう)の衆と成り果てた帝国軍は、何の抵抗もできずに撃破されていく。 「ここまでなってしまってはどうしようもないか・・・・。」 そう言うと、敵を尻目にアルフレッドはある場所へと向かう。 基地郊外に設けられた捕虜収容所。 そこでセイバーをとめると建物の中へと入る。 戦場と化した基地とは違い、収容所周辺はまだ穏やかだった。 足音を響かせながらゆっくりと進む。 収容所内にはどこにも帝国兵はいなかった。 そしてある場所で足をとめるとドアを開く。 彼女はそこにいた。 「アルフレッドさん・・・・。」 彼の姿を見て安堵の表情を浮かべるミラルダ。 「君に来てもらいたいところがある。来てもらえるか?」 ミラルダは、その言葉にだまってうなずくと、アルフレッドの後に続く。 アルフレッドは、ミラルダをセイバーに乗せると、とある格納庫へと向かう。 そのまま格納庫に入ると、彼らの目の前にはある機体が、無傷のまま置かれて いた。 「・・・・・あれは私のサーベルシュミット・・・。」 驚きを隠せないミラルダ。 ほぼもとの状態に直した上に整備もされていた。 「右のブレードは間に合わなかったが・・・・あれでここを脱出してもらう。」 「で、でもそんな事をしたらあなたが罪に問われてしまいます。そんな事、私 にはできません・・・。」 悲しみの表情を見せるミラルダ。 「・・・・心配しなくていい、ここはもう放棄が決まった。君一人が逃げても 問題はない。」 そう言うとコックピットハッチを開き、彼女をサーベルシュミットへと導く。 「でも・・・・私・・・・その・・・。」 彼に対して言いたい言葉があるのに言葉が詰まっていえない。 「・・・・・いい。なにも言わなくていい。はやく君は、あるべき場所へ行く んだ。」 「・・・・わ、わたしは・・・・・。」 まだ迷いの表情を見せるミラルダ。 その時、倉庫を銃弾が襲う。 「!!もうここまで来たのか!?ミラルダ!!早く行くんだ!!いいな!!」 そう叫ぶとセイバーの機体を起こす。 機体を起こすと同時にセイバーに衝撃が襲う。 いつの間にかシャドーフォックスが、足を噛みついていた。 「何!!いつの間に!?」 レーダーに映らない3機のシャドーフォックスが、セイバーを襲ってくる。 「レーダーには反応がない・・・・新型か!?」 見慣れぬ機体を見て、焦りの色を隠せないアルフレッド。 「ここは守りきって見せる・・・。」 足に噛みついたシャドーフォックスを振りほどくと3機のシャドーフォックス と対峙する。 「こりゃ面白い機体だぜ。さっさと捕獲なり片付けるなりしようぜ!!」 はしゃぐキシェルド。 「慌てるなキシェルド。慎重に事を運ばないと後で痛い目にあうぞ。」 「どんなに気をつけたってセイバーATごときにやられはしませんぜ。」 そう言うと背中の衝撃砲を放つ。 しかしそれを難なくかわすセイバー。 逆に接近して、右前足を振りおろしてキシェルド機の腹部を傷つける。 「な、何だこいつは!?」 予測を超えた動きに焦りの色が見えるキシェルド。 「相手をなめてかかるのは、お前のよくない癖だぞ。ヤコーニ。このまま2機 で押し込むぞ。」 「了解。」 2機が平行してセイバーを襲い掛かる。 両機が同時にジャンプすると同時に背中のビーム砲、レーザーバルカンで砲撃 する。 ビームとレーザーの嵐を必死に避けると、1機のフォックスを仕留めかかる。 追い詰められたフォックスが煙幕を張る。 「スモークディスチャージァーだと!?うっ!?」 驚愕している暇もなく、敵の攻撃で機体に衝撃が走る。 「レーダーがつかえないのでは話にならんな・・・・。」 諦めにも似た言葉がアルフレッドの口からこぼれる。 「だが・・・!!」 センサーを切り替えると、煙幕を突っ切って敵が襲い掛かるのを待つ。 その頃、負傷したキシェルド機は、光学迷彩を使用して姿を隠していた。 2機も姿を消してチャンスをうかがう。 「・・・!!そこか!!」 8連ミサイルを放つ。爆発の中で、シャドーフォックスがその場にうずくまる のが見て取れた。 「ヤコーニ!!なかなかやるなこのパイロット。」 光学迷彩が役に立たないことを知ったラーマは、煙幕を張りつつ相手に悟られ ないように近づくとレーザーバルカンを放つ。 しかし難なく避けられる。 「さすがに姿を消しての戦いは通じないか。」 そういう光学迷彩とスモークディスチャージャーのスイッチを切る。 ビームで弾幕を張るセイバーめがけて走る。 そして一気に距離を詰めるとセイバーの懐にはいろうとする。 「あまいな。」 フォックスの動きに感づいたアルフレッドは、そういういと前足で叩き伏せる。 「ちっ!!」 舌打ちするラーマ。 「これで何とか・・・!?」 またアルフレッドの機体に衝撃が走る。 「・・・あいつ、まだ動けたのか!?」 衝撃の中、アルフレッドの振り向いた先にヤコーニ機が見える。 ヤコーニの機体が、2連ビームをセイバーに向けてはなったのだ。 不意をつかれて体勢を崩すセイバー。 そこに体勢を立て直したラーマのフォックスがレーザーバルカンを放つ。 ことごとくセイバーの装甲を貫通するレーザー。 そして追い討ちをかけるようにヤコーニ機が、タックルをかける。 「ぐっ・・・・・!!」 まともにタックルを受けて、その場に倒れるセイバー。 あちらこちらでスパークが起こり、瀕死の状態が伺える。 セイバーのコクピット内には、警告音が鳴り響き、モニターにはシステムフリ ーズと表示されている。パイロットの意識はもはやなかった。
「アルフレッド!!」 格納庫でその一部始終を見ていたミラルダが叫ぶ。 アルフレッドの名を叫びながらセイバーの元へと走る。 セイバーにゆっくりと迫るフォックスなどお構いなしに、必死にコックピッ トへと向かう。 「隊長、格納庫から人が現われました。真っ直ぐセイバーに向かっています。」 「何!?・・・・・やむえん、セイバーにのられては厄介だ。」 「了解。」 銃口がミラルダに向けられる。 しかし、それと同時にヤコーニ機が無数の銃弾を受ける。 煙を噴くフォックス。 「ヤコーニ!!まだ敵がいたのか!?」 砲撃のあった方向を見る。 そこにはその場に倒れているセイバーと同じ機体が見える。 アタック・セイバーだ。 「あっちは中距離用の武器もちか・・・・・ヤコーニ、キシェルド!!動ける か!!」 モニターで敵を確認しがなら通信するラーマ。 「・・・・・・何とか動けそうです。」 「こっちも大丈夫です。」 「了解。それでは煙幕を張りつつ撤退する。実践テストのデータはもう十分だ。 ディバ隊と合流するぞ。」 そう言うとスモークディスチャージャーで煙幕を張りながら後退していく。 『了解。』 二人の返答が同時にコクピット内にこだまする。 撤退していく3機のフォックスを尻目に、格納庫へと向かうセイロン。 ミラルダは、コクピットハッチを開けると中へと入ろうとしていた。 「アルフレッド!!しっかりして!!」 気を失っているアルフレッドを抱き起こすと、必死に声をかける。 「・・・・・早く隊長を奥の機体に乗せてこの場を離れろ。私も護衛で行く。」 マイクロフォン越しに言うセイロン。 「・・・・・・は、はい。」 その言葉に従って、アルフレッドを必死に抱えてサーベルに乗せ、アタックセ イバーと共にその場を離れた。
後書き16 バトストMENUに戻る 前の話へ行く 次の話へ行く